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空戦活劇 スカイスライサーズ  作者: 楽土 毅
第3章 赤き夜
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第50話 信頼と心配

  *


 目を開けると木組みの天井が見える。見覚えはあった。ジャスミンはゆっくりと体を起こそうとして、上手く力が入れられない事実に驚かされる。そしてその理由を考えたところで、昨日のことを思い出した。


 ――いや、昨日なのか? 私はどれだけ寝ていた?


 ベッドに横になった状態で首をひねり、視線をめぐらせると椅子に座ったまま寝ているティータの姿があった。ジャスミンが面倒を任された見習いのガルダ乗りだ。


「おい」

「う……ふぁ……あ、ジャスミンさん! 目覚めたんですね!」


 ティータは目に涙を浮かべている。それはジャスミンの身を案じてのものなのか、はたまたただのあくびか。いずれにせよティータはジャスミンの目覚めを喜んでいた。


「ちょっと待っててくださいね、キースさんたち呼びます。すぅ……キースさぁあああん、ジャスミンさん目ぇ覚ましましたよおおおおお!」


 ジャスミンは、その場でかよ、と顔をしかめて毒づく。


「おい、怪我に響くっつの……」

「あ、すいません、うっかりしてました、てへ」

「お前怪我治ったらマジ覚えてろよ」


 そう凄むが、ジャスミンのその感じには慣れてしまったのか、ティータはけろっとしていた。


「でも心配しましたよ、丸二日も目を覚まさないんですもん」

「丸二日? そんなに経ってんのか?」


 ジャスミンは驚きに目を丸くするが、すぐにその目をほっとしたように細める。「でも、私がこうしているってことは、無事あの包囲網を突破したんだな。みんな無事なのか?」


 全員が全員無事、とは思っていない。戦いはそんな甘いものではない。


「それは……」ティータは困ったように視線をそらす。そのときである。


 部屋のドアが開いた。入ってきたのはキースと、ドリアーナとノックだ。キースとドリアーナはジャスミンの姿を見るなりほっとしたように息をつき、ノックは目に涙を浮かべている。彼とそんなに親しくなった覚えはないのだが。


 だが、この場に足りない人間がいる。ユールとガノンだ。


「あれ、ガノンは?」


 ジャスミンが尋ねると、またも皆が口を噤む。嫌な予感がした。

 その場を代表してか、とうとうキースが口を開いた。


「ガノン君とユールは、今別行動中だ」


 その曖昧な言い方をそのままに受け止めるほど、ジャスミンは鈍感ではなかった。


「気遣いはいい。経緯を教えてくれ。私が寝ている間に何があった?」


 ジャスミンは努めて気を静めながら、キースに問いかけた。彼は一瞬迷ったような表情を見せたが、やがてジャスミンの傍まで近づいて、正直に話してくれた。


 ジャスミンたちが戦っていた海域にアムール号が到達した頃には、ガノンの相手にしていた「左の船」はすでに全焼していて、ユールの相手にしていた「真ん中の船」はすでに影もなかったらしい。そして唯一残っていた「右の船」の甲板に、ジャスミンは倒れていた。


 その後ガノンとユールを含む行方不明になった団員たちを必死に捜索したが、ついにその二人を見つけることはできなかったらしい。


「でも二人に関しては、目的の相手は排除していた。少なくとも負けたわけではないらしいから、まだ生きている可能性は十分にあるよ」


 キースのその言葉は、まるで自分自身に言い聞かせているようでもあった。キースにとってユールは、部下の一人という以上に大切な存在であったように思える。気丈に振舞っているが、キースの声は少し震えていた。


「わかってるよ、ガノンはそんなにヤワじゃねぇ。アイツが一緒なら、ユールもきっと無事だ」


 信頼はしている。その言葉に嘘はない。でもガノンが今傍にいないことが、ひどく心細い。


「それで、これから私たちはどうするんだ?」


 別の質問をしてジャスミンはその事実から意識をそらす。キースもそれに乗ることにしたらしく、表情を引き締めた。


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