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空戦活劇 スカイスライサーズ  作者: 楽土 毅
第3章 赤き夜
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第38話 笑顔に満ちた場所

 クイナも苦笑して、サーヤたちのもとへ近づく。


「ここの二階に被服室がある。ここの女はそこで縫い物や小物を作って街で売って金を作るのが役目だ。できるな?」


「はい!」


「よし」


 クイナは周りを見回し、「ルナ、こいつらに色々教えてやってくれ」と指示を出した。ルナは笑顔で「りょ!」と敬礼交えて返事する。了解、の意味だ。彼女のマイブームらしい。


 ルナはサーヤとミミを連れて二階へ上がっていく。それを見送った後、クイナがこちらを振り返った。


「まったく、ああいうやり方は卑怯だぞ」


「あ? 何が?」


「とぼけるなよ」


 クイナは一転、少し怒った表情でジャスミンに詰め寄り、自分のポケットから取り出したビスケットを、ジャスミンのポケットにねじ込んだ。


 今日のここでの配給は一人ビスケット二枚。ジャスミンはサーヤとミミに一枚ずつあげてしまったので、今日は何も食べれない状況だった。クイナはそれを理解して、自分の一枚をジャスミンにあげたのだ。


「今回だけだからな」


「そういうの前も聞いた気がする」


「お前なぁ……」


 そこで室内に指笛が鳴り始めた。周りの団員たちが囃し立てているのだ。


「相変わらずクイナはジャスミンに甘ぇなぁ!」「まったくだ! 俺には容赦なく蹴りいれてくるくせによう!」「それはお前がしょっちゅう盗み食いしてるからだろ!」


室内がどっと沸く。ウォルターはいつも賑やかだ。このクソみたいな街で多分一番笑顔に満ちた場所だと思う。


だが、ガノンは少しだけ笑顔を曇らせてしまう。


「まあ、お前のそういうとこ嫌いじゃねぇけどな」


 少しだけ照れくさそうに、ジャスミンがクイナに言う。クイナもまた照れくさそうに顔を赤らめつつ、周囲からの囃し立てに応戦していた。


 きっと、多分だけど、ジャスミンはクイナのことが好きだ。そしてクイナも同じ気持ちだろう。自分ではクイナには敵わない。ガノンはそのことをわかっているつもりだが、日に日に積もるジャスミンへの気持ちに嘘をつくのが辛くなり始めていた。


 それから一週間後のこと。


 ウォルターは消滅した。


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