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空戦活劇 スカイスライサーズ  作者: 楽土 毅
第2章 犇めく海
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第29話 赤と青の交錯

 十騎が一線かなと思う。

 それを超える数のガルダ乗りがいれば同時に応戦してきたらさすがに厳しいかもしれない。これまでにそんな状況に追い込まれたことはないからなんとも言えないのだが。


 船まで三百メートルの距離まで近づいてきたときに、右の船の出撃塔らしきものからガルダ乗りが飛び出してきた。五騎、三秒おいてまた五騎。ぎりぎりのラインか、と思った矢先にまた五騎が出た。


 一対十五。さすがにジャスミンも驚いたが、それでもやはり恐れはなかった。


「これはさすがに手加減できねぇなぁ」


 背にかけていた小銃を手に取る。急所を外すような余裕はなさそうだ。


 一人目は若い男だった。ガルダに乗るのもやっとという体だ。二人目はベテランぽい男だったが、相手が少女とわかって撃つのをためらったのか、スキだらけであった。三人目も男。それ以後は顔もよく見ないで次々と撃ち墜とした。


 七人目を墜とした段階で、さすがにジャスミンに対して脅威を感じ取ったのか、男たちは編隊を組んで組織的な攻撃に切り替えてきた。だが今のところ彼らに脅威は感じない。


 一方こちらは、寝起きにしては頭はさえてるし、ラッキーの動きのキレもいい。だが編隊訓練でジャスミンもラッキーも知らず知らず体力を消耗しているはずである。長期戦は避けたい。


 相手もその思惑はわかっているようで、少し距離をとったところを旋回してこちらの様子を窺っている。姑息なやり手だが、逆に言えば、冷静に戦況を見て適切な戦法に切り替えられる者があの中にいるということだ。


「アイツかな」


 最初から気になっていた奴がいた。

 軽く緑がかったガルダに乗る青いバンダナを頭に巻いた男だ。


 強者特有のオーラは消してあるが、動きのキレが他のガルダ乗りたちとまるで違う。実はさきほどからそのバンダナ男に狙いを絞っているのだが、それを向こうも察知しているのか、それとなく射線を外されている。


「おっと」


 ジャスミンのすぐ横を銃弾が過ぎていく。残りの敵八人が四騎と四騎に分かれ、ジャスミンを挟んで攻撃してきているのだ。こうして体力を削る作戦か。


 埒があかない。

 仕掛けるなら早いうちにと思った。


 まずは青バンダナが居ないほうの四人組のほうへ攻撃を仕掛ける。四人はしばし隊形を崩さずジャスミンから逃げていたが、しつこく追いかけていると次第に隊形が崩れていった。


 統率が甘い。隊形から飛び出した一騎に狙いを絞り、一人ずつ墜としていく。ジャスミンは腹ばいになってラッキーの背中に密着しつつ敵を狙撃していった。銃の向けられる方向は限られるが、この態勢で撃つのが一番精度が高いし、空気抵抗も少なくて済む。


 そのときである。青バンダナが仲間に何らかの指示を送ったかと思うと、その青バンダナ一人を残して他のガルダ乗りたちは船へと退却していった。


「へぇ……」


 どうやら一騎打ちを挑んできているらしい。集団で囲ってちまちま攻撃されるよりよほど気持ちがいい。ジャスミンは知らず笑みを浮かべていた。


「お前、もしかして『スライサーズ』の片割れか?」


 青バンダナの声を聞いたのはそのときが初めてだった。唐突な問いだったが、ジャスミンは銃口を下げて答える。


「ああ」


「まじかよ、参ったな……どうりで強ぇはずだぜ」


 青バンダナはため息交じりに呟く。

 ジャスミン、ガノンの二人で暴れまわっているうちに、いつの間にか『スライサーズ』なんている物騒な呼び名で呼ばれるようになった。


「なんでお前が鳥竜騎士団にいるんだよ」


「私もよくわからん。まあ助っ人みてぇなもんだ」


 青バンダナの問いに適当にそう答えると、男は大きくため息ついた。


「まさかお前らがいたなんて、大誤算だよ、ったく。将来有望なうちの若い衆をばっさばっさ撃ち落としてくれやがってよう」


「奇襲かけたのはそっちだろ」


「はは、まあそりゃそうなんだが」


 青バンダナは軽く笑うが、すぐに別人のように表情を引き締めた。


「だからまあ、別にお前に恨み言をいうつもりはねぇよ。ただけじめはつけさせてもらう。お前が葬った俺の仲間全員の命の重みを知れ」


 敵ながら、いい男だなと思った。

 もし立場が違っていれば、いい仲間になれたかもしれない。


「お前が死ねば、残りの男たちも全員終わりだ。そのつもりで来いよ」


「ここで精神攻撃かよ。お前いい性格してんな」


「育ちが悪いもんでね」


「そんじゃ」


「またな」


 青いバンダナと燃えるような赤い髪が交錯する。

 勝敗は一撃で決まった。


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