表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空戦活劇 スカイスライサーズ  作者: 楽土 毅
第2章 犇めく海
18/57

第18話 騎士団の使命

「僕らが国王から仰せつかったのは、ある海賊たちの撲滅だ」


 甲板の中央に備え付けられているテーブルをジャスミン、ガノン、キースの三人で囲った。ユールはキースの後ろに静かに立っている。


 話を切り出したのはキースだ。


「今のところ確認できてるのは『レオング』『アルデリック』『ヨークシャン』『キルコ』『トールリ』の五つの海賊団。他の小規模な海賊団も合われれば敵戦力の総数は三千を超えてる」


「一つの海賊団じゃなく、それがいくつも寄り集まってんのか」


「そういうことだね」


 プライドだけは一級品のやつらがそう上手く統率を取れているのかは甚だ疑問だが、確かに三千という規模は脅威かもしれない。


「それを五十二人で解体しようってのか。無茶だろ」


「きついのは確かだよ。でもやるしかないんだ」


 キースは柔らかな物腰で話しているが、覚悟のほどは感じ取れた。


「彼らはウォルガナ侵攻への準備を着々と進めている。ガルダ乗りを二百人は集めているという情報も入った」


「そりゃあすげぇが、そもそも海賊たちがウォルガナを狙うのはなぜだ。あまり海賊たちに分のある戦いには思えないが」


 ウォルガナはここら一帯の国々では強国として知られる軍事国家だ。陸・海の戦力も豊富にある。海賊たちがわざわざそこを狙う意味がジャスミンにはよくわからない。


「それはウォルガナのケント国王が、キリニア海の海賊を全掃討する宣言を出したからだ。血の気の多い海賊たちはそれに怒って結束し始めた。さすがに彼らにウォルガナを陥落させることは不可能だろうけど、なめてかかれば被害は大きくなるかもしれない。そこで僕らに今回の命令が来た」


「奴らがウォルガナに到達するまでに、たった五十人で三千人を無力化しろと」


 騎士団団長も大変だな、とそんなことを思った、どんなに絶望的な状況でも逃げることは許されないのだろう。


「まあいい。ド三流の海賊を狩るのも飽き飽きしてたところだしな。面白そうだ。力貸してやるよ」


 ウォルガナに思い入れなど微塵もないが、キースたちのその生き様には好感が持てた。自分の命を捧げてやる、とまでは思わないが、少しくらい力になってやってもいいかなと思えた。


「それにここにいれば、毎日メシは食えるんだろ? それだけでもありがたい」


 グラナダにいた今までは、時期によっては食べ物が食べれないこともあった。生きるためには窃盗まがいのこともしなければならなかった。でもこれからは、そうじゃない。


 そう思ったのだが、


「え? ああ、うん。まあ、それはそうなんだけど」


 キースの返答はあいまいなものだった。ジャスミンは抜け目なく問いただす。


「おい、そこ大事だぞ。まさか海のど真ん中で自給自足しろなんて言わねぇよな?」


「いやいや、そうじゃないよ。食事は朝昼晩と三回出る。ただ、それを調理してるのがただの船乗りで、その味があまり評判がよくなくて」


「評判がよくない? まずいってことか?」


「なんか、隠し味としてとにかくバナナを入れたがるという悪癖が……」


「あのサル顔のしわざか!」


 バナナと聞いてあの空気の読めないサル顔の船乗りがすぐに浮かんだ。


「そういえばあいつを殺すの忘れてたわ。てかあいつ名前なんていうんだ?」


「ルサだよ」


「サルじゃねぇか!」


「確かフルネームはルサ・サーリガンドだったかな」


「無駄にかっこいいなおい。てか問題はそこじゃなくて、おいガノン」


「はい」


 ジャスミンは隣に座るガノンのほうを向く。


「これは由々しき事態だ。やるべきことはわかってるな?」


「はい」


 ガノンは全てをわかった顔ですっくと立ち上がり、三角笛を鳴らしながら甲板を駆けていく。そして降下してきた真紅の体色を持つガルダ、ナナの背に乗り、グラナダ島目掛けて飛んでいった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ