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空戦活劇 スカイスライサーズ  作者: 楽土 毅
第1章 光と影の邂逅
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第10話 消えた団長様

「キース様がいないだと⁉ いつからだ!」


 着港、もうまもなくというところである。

 グラナダ島の住人を肉眼で確認できるほどの距離に来たところで、例のサル顔の部下からユールはその報告を受けた。


「わかんねっス。気づいたらいなかったって感じで。トイズもいません」


 トイズとは、キースの相棒である黒きガルダである。


「ということは、キース様はトイズに乗って、一人先に島に行ってしまわれたということか」

「そうなりますなぁ」


 緊張感のないサル顔の返答に苛立ちを覚える。キース様の身に何かあったらとは考えないのか。


「バカ者! なぜしっかり見張っておかなった!」

「いや、俺ただの雇われ船乗りですし。つーか団長の直属の護衛ってユール様スよね?」

「え」

「ユール様こそ何してたんスか。なんでそばにいなかったんスか?」

「そ、それは」


 ぐうの音もでない。護衛の自分がキースの傍にいなかったのがいけないのだ。トイレなど我慢していればよかった。


「悪いの俺じゃないスよね? ユール様スよね」

「う、うるさい! とにかくお前は他の船員にも呼びかけて船内を捜索しろ! いいな!」

「よくないスよ。ちゃんと謝ってくださいよ。今ので俺けっこう傷つ――」

「悪かったから! 後で詫びはするから今は従ってくれ!」

「イエスマム!」


 侘びをする、という言葉を聴くなり急に素直になってサル顔は駆け出していく。詫びと称して、いったい自分に何をさせる気なのか。などと考えるのはすべてが済んでからだ。


 ユールは団長室を出て、そばの階段を二段飛ばしで駆け上がる。三階まで上がると、廊下を一気に突き進んで、奥から二番目の部屋に扉をぶち破るようにして駆け込む。


 中にいたのは濃紺色のガルダだ。

 ユールの相棒、名はコーデリア。


 トイズや、他のガルダの平均体長に比べるとかなり小柄で、トップスピードも控えめだが、細かい機動の得意な優秀なガルダだ。


 言葉はいらなかった。


 ガルダは言葉を話すことはできないが、ある程度の人語を解す。なのでガルダへの命令は基本的に言葉で行う。


 しかしそれでも、今は言葉は無用だった。

 事態を察した様子のコーデリアは、体を斜めに向けて、すでにユールを待ち受けていた。その背に向けて飛び乗ると、コーデリアは軽く羽ばたいて移動する。


 その先には一本の丸太があった。

 それに飛び乗ると同時に、さらにその先にあった木製の扉が自動で大きく口を開け、キリニアの海を見せる。


 ユールはベルトを慣れた手つきで締めると、上から垂れ下がっているロープを引いた。するとコーデリアが乗っかっていた丸太が駆動して、開いた扉のほうへ――キリニア海の洋上へと引っ張り飛ばしてくれる。


 バネの力を利用したガルダ乗り専用簡易カタパルトだ。ほんの十数メートル分の助走だが、このアドバンテージがぎりぎりの戦いの中では勝敗を分ける。船から射出される瞬間に、コーデリアはすでにトップスピードに達していた。


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