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ゲスと魔界の食事

「あら、こんなところに覗き魔の生き残りが…殺します」


 タオルで体を隠したステラが言う。


「オ、オイ!ちょっと待て!いや、待って下さい。」

「よかろう。お前の最後の言葉を聞いてやろう。」

「最後の言葉って、俺は死ぬの?」

「当たり前だろ?」


 目が笑っていない。本気だ。


 心理戦が得意な大餓には分かる。彼女は本気だという事が。


「俺を殺していいのか?」

「いい」


 即答かよ!


「俺が死ねばこの町の奴らが死ぬことになるぜ」

「戯言を。お前は他の奴らに作戦を伝えたのだろ?ならお前は用済みだ」


 おいおい!王族とその従者の事を『奴ら』って言っていいのかよ!


「確かに作戦は説明した。だが、あの作戦を実行できるのは人間である俺だけだ。」


 ここで脅えを見せたら信用されない。

 堂々としろ!


 そう自分に言い聞かせる。


「虚言だな」


 それでも、

 ここが勝負どころだ!


 大餓は堂々とした態度で余裕を見せ、見下すような目で相手に向かってプレッシャーを放つ。


「………………………………………」


 ステラは何も言わない。


 迷っているぞ!


 ミッション1クリア!

 ステージ2に移行する。


「俺を殺せよ。」

「そうする」


 言って大餓に向かって手を伸ばす。

 その手は魔力を宿しているのか、怪しく輝いている。


「俺が死んだら、この町の奴らも死ぬぞ。」


 ピクっ


 大餓の言葉がステラに動揺を与えた。


「それでもいいなら俺を殺せ」

「いいわけ…ないじゃない。」


 ステラは手を下ろす。


 勝った。


 大餓は確信した。


 が、


「半殺しならいいな」

「ちょ…」


 大餓はステラを抑えるために手を伸ばすが、凶大なステラの怒りの前には無力だ。


 ボカ!ボコ!グチョ!


 大餓の体から人体から聞こえてはいけない音が聞こえた。


 それでもステラの暴行は続き、


 目の前が真っ暗になった。





 一時間後





回復(リカバリィ)!」


 朦朧とする意識の中、ステラの声が聞こえる。

 そんな事よりも、ひんやりと冷たい床が気持ちいい。


 ステラと思われる鳴き声がうるさいので目を開けると、霞がかかった視界の端で心配そうにこちらを見つめるステラを見つけることができた。


 無論、メイド服を着用している。


「良かった!目を覚ましてくれて!死んじゃったかと思ったよぉ」

「一応、心配してくれたんだな。」


 大餓に抱き着くステラの頭を優しくなでる。


 大餓を心配していたからか、いつもと口調が違う。




 ん?

 「心配してくれてありがとう」という場面になっている気がするが、元をたどれば、大餓をボコボコにしたのはステラだ。


 ステラが大餓を心配する理由は「自分がボコボコいした相手が死んじゃって自分が殺人犯にならないか心配」というものだろう。


「さっきはよくもボコボコにしてくれたな!一発殴らせろ!」


 大餓は立ち上がり、もの凄い気迫で叫ぶ。


「いやです!だって…私の裸を見ましたわよね!しかも無料で!」

「すまん。あれは事故だ。俺が悪かった。

 ん?金払えばよかったのか?」

「よくないわよ!」


 怒り出すステラ。(元々怒っていたという説もあるが…)

 口調も元に戻っている。


「でも、私も悪かったです。さっきは殴りすぎました。ごめんなさい」

「謝ってくれたし、許してやってもいいぜ。

 そうだ。仲直りの証に一発殴らせろ!」


 無理やり話題を変える大餓。


「いやです!第一、殴った分は回復魔法で治療しましたから、殴ったことは水に流してもいいはずです。」


 それもそうだし、許してやろうか。


「腹が減った。何か持ってきてくれ。」

「そう言うと思って料理を作っておきました。取ってきますね」


 ステラは料理を取りにいった。 


 以外と気がきくなぁ。


「どうぞ」


 と言って大餓の目の前に()()()()


 魔法があるこの世界では、魔法を使って食器を浮かべて食事をするらしい。


「感謝はし…と……く…ぜ?」


 ステラが持ってきてくれた皿を見て、大餓はドン引きする。


 直径二十センチほどの大きな鉄製の皿の上には、料理と呼ぶのもおぞましい物体が乗っていた。


 皿の上では、皿からはみ出しそうなくらい大きな緑の肉塊がゼリーの如くプルプルと揺れている。

 さらに、トッピングのつもりだろう。

 誤って色々な色の絵の具を混ぜてしまったかのような汚い虹色の芋虫が二匹、肉塊の上で蠢いていて、その上から紫色の粘液がかけられている。


 そして、この世の物とは思えないほどの悪臭を放っている。

 正直言ってこの悪臭は拷問器具だ。

 完全に鼻の機能を封じられた。


 ダメだ!これは食べ物ではない。毒物だ


 大餓の勘が告げている。


「これは何だ?」

「ポイズンワームの肉をこんがりと焼き、その上にスライムのソースをかけた料理です。

 貧弱な人間でも食べれるように人食い草の消化液をソース少しブレンドし、肉を柔らかくしています。

 あ、ちゃんと毒抜きもしましたよ」


 ステラは親切のつもりなのだろう。大餓に皿を近づける。


「うっ」


 また一段と匂いが強くなった。


 あの、臭いことで有名なシュールストレミングより臭い。


 例えることも出来ないくらい臭い。

 純粋に臭い。


 どう臭いとか説明できるほど生易しい臭さではない。

 ただひたすらに臭い。


「どうした?私の料理の気品のある香りに耐えきれなかったのか?下等な人間らしいなぁ。

 まあいい。早く食べてみてください」


 何が気品ある香りだ。この悪臭は拷問器具だぞ。


「やっぱり、俺は腹空いてない。」

「私の料理は至高の芸術作品だから見るだけで腹いっぱいってことか?なら私が食べますね」


 ステラは皿を自分に近づける。


 次に、肉塊に右手をかざし、呪文を呟く。 


切断荒嵐(スライスストーム)!」


 ステラの声と供に風の動きを感じた。


 そして次の瞬間には、肉塊が一口サイズの肉片へと変貌を遂げている。


 ステラが使った魔法は、魔力の刃の嵐を発生させ、目標をばらばらにする魔法らしい。


「でも、一口は食べてくださいね」

「いらないって言ってんだろ!」

「遠慮はいりませんよ。」

「だからっ……!?」


 にこやかに言ったステラに言い返そうとしたが、何故か口が動かない。

 声も出せない。


 これも魔法の力か?


「はい、あーん」


 声に反応したように、大餓の意に反して口が開く。


 …やめろ…やめてくれ…


 大餓の願いも虚しく、ステラは浮遊の魔法を使って肉片を一つ、大餓の口に放り込む。


「………………………………………」


 虚ろな焦点のあっていない目で虚空を見つめる大餓。


 この肉片は、見た目に反して不味くはなかった。

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