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魔界遠征軍第三部隊 半滅

 振り上げられたステラの手から放たれた火炎流は、あっという間にテントを火の海にしてしまった。

 それを見た兵士達のほとんどが、たちまちパニックに陥り、逃げ惑い、最後には炎の波に飲み込まれた。


 地面に倒れていた大餓が、ヨロヨロと起き上がる。


 つい先ほど、爆風で派手に吹っ飛ばされていたが、見た目ほどのダメージはないらしい。

 ちゃんと二本の足で立っている。


 そんな大餓が、大餓をテントに案内したあの兵士に歩み寄る。

 兵士は、爆風で大きなダメージを負ったらしく、地面の上に倒れている。

 兵士がだけを上げて大餓を睨みつけた。


「貴様、なぜ…」

「そんなこと聞くなよ。俺は元々ここを壊滅させるためにここに来たのだから」

「俺を騙したのか?」

「騙してなんかいない。俺はここに来てから、一度も嘘を言ってないぜ。勝手に変に解釈して勘違いしていたのはお前だろ?」

「な!?」


 こいつは『真実の宝玉があるから大丈夫』とでも思っていたのだろう。

 真実の宝玉を過信するあまり、自分で考えることを放棄した結果だ。

 自業自得だ。


「じゃ、じゃあ、あれは何なのだ?お前は確かに、俺達と共に戦いたいと言ったはずだぞ!」

「そう言えばそんなこと言ったなぁ。

 だが俺は『()()()()()()()()()()()()()』と言っただけで、お前達にとって敵か味方かは言ってないぞ」

「な!?………………。そ、それなら、お前は俺に危害を加えないと言ったはずだ!それはどうなんだ?」

「はい。()()あなたに危害を加えていませんよ。危害を加えているのは、そこにいる魔族のステラだ」


 兵士がステラを睨みつけた。

 兵士と目が合ってしまったステラは、思いっ切り兵士を睨み返す。


「な、なぜ魔族に味方する?」

「お前らは魔族を虐殺しただろ?」

「それがどうした…」

「魔族にも生活はあるんだ。愛する者や、守るべきものが。お前らはそれを奪った。魔族には何の非も無いのに!」

「だから何だ?それの何が悪い!」

「はぁ。もういいよ。何もしゃべるな。ステラ、こいつを好きなようにしていいぜ。」

「……はい」


 ステラは兵士をじっと見つめたまま、ゆっくりと兵士の方へと歩み寄る。


「く、来るな!」


 恐怖に負けた兵士が叫び出し、倒れたまま数歩分だけ後退る。


「逃げ惑う可哀そうな魔族達を、下賤で愚かなあなた達は殺したのです。

 一度、殺された人達と同じ気持ちを味わってみたらどうです?」

「すまなかった。謝る。だから殺さないでくれ!」


 ステラは何も言わない。

 ただ、静かに怒りの表情を浮かべて、兵士を見つめている。


「う……魔族を殺して何が悪い!魔族は人間ではない!だから死んでもいい。なぜお前達は我々に歯向かうのだ?」


 恐怖に支配されたのか、言っていることが滅茶苦茶だ。

 もっとも、これがこいつの本心なのかもしれないが…


「お前らなんかに、私の母は殺されたのです」


 濃厚な殺気と共に放たれたステラの言葉が、兵士に更なる恐怖を与えた。


「ひぃ!」


 兵士が変な悲鳴をあげて立ち上がる。

 そして、今まで立ち上がれなかったのが嘘のように、こちらとは逆方向に走り出す。


 それを追おうとするステラを大餓の手が制した。

 不服そうな顔で大餓を見るステラだったが、次の瞬間、逃げ出した兵士は轟音と共に倒れて来た燃え盛るテントの柱に押しつぶされた。


 愚かだな。魔族を悪と決めつけて魔界に来なかったら、死ぬことは無かっただろうに…。


「行くぞステラ。ここにいる兵力はある程度減らすことが出来た。もうここに留まる理由はない」


 大餓はポケットに入れていた、(ゲート)を使うための魔石を取り出した。

 そして、(ゲート)を開こうとして、ステラに呼び止められた。


「待って下さい。私はあなたとは違って魔法が使えます。だから、私には分かるのです。ここの兵士はまだ半数ほど残っています。

 このままでは、近くの町がここの兵士達に襲われてしまいます。

 だから、ここの兵を共に滅ぼしましょう!」

「その必要はない。」

「愚かで下等で残酷な人間であるあなたにとって、私達魔族が生きようが死のうが関係ない事だという事は、理解できなくはないです。

 ですが!私にとって魔族は皆、大切な存在なのです。

 だから、ここの兵を根絶やしにしましょう!」

「だぁ、かぁ、らぁ、必要ないって言ってんだろ!」


 大餓が面倒くさそうに言う。


…どうして…どうして大餓はこんなこと言うの?…

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