騎士は白い世界を完成させる
最初は小さな焔だった。
アスワドも気づかぬほど。しかし、それは徐々にアスワド自身を支配するようになる。
最初のきっかけは、マーディの言葉だった。
いつもようにカロリーナから彼女から織ったあたたかい膝掛けを何枚か受け取った後、塔を出た。
それを王に渡す。良くできた織物を王はなんの感情もなくそれを受け取り、すぐアスワドへ彼が一人娘と言って憚らないキャロラインの騎士にならないかと勧誘した。それを毎度、「私は白いドラゴンの騎士ですから」と断っていた。
ふぅと息を吐き、塔に戻る最中、マーディに出くわした。なにやら王宮の世話人と揉めているようだ。
「貴様、仮にも王女殿下に対して用意する食事がこれか!」
マーディが抱えていたのは、サツマイモのみだ。しかもなんの料理もされていない生のサツマイモだ。
「はっ。何をおっしゃってますの? 王女殿下はキャロライン様ただ一人です。国中、いえ、世界中が知っていることですよ」
「貴様……!」
マーディが怒りでダガーを出そうとしたのをアスワドが制した。
「アスワド……」
「侍女が振り回すものではありませんよ」
その言葉にマーディは悔しそうに唇を噛み締めた。彼女の憤りはアスワドには分かっていた。同じ憤りを自分も感じているからだ。
「失礼しました。メイド長のリラルカさんでしたね」
アスワドが一歩前に出る。口元は穏やかな笑みなのに、目はちっとも笑っていない。その異様な迫力にメイド長はひっと喉を鳴らす。
「私の名前をご存じですよね? あまり低俗なことをなさらないほうが身のためですよ。私が仕える主は、あなたが存じ上げない方なのですから」
メイド長は青ざめ腰を抜かす。その顔を一瞥して、マーディに行くように促した。
誰も居なくなった後、マーディはサツマイモを抱え、悔しそうに呟いた。
「カロリーナ様は正式な姫様なのに……どいつもこいつも……」
マーディの呟きにアスワドは改めて尋ねる。
「なぜ、王はこんなにカロリーナ様を不遇な目に合わせるのですか?」
そう言うと、マーディは「知らない」と短く答えた。それにアスワドは瞳を広げる。
「なぜかこの国の王族はドラゴンの容姿を持つ娘を冷遇する。いや、冷遇なんて可愛いものではないな。疎み、嫌悪して、無かったものにしている。外に出せないから監禁拘束しているんだ」
「それでは……」
―――あまり理不尽だ。
アスワドが最も嫌う行為が目の前で行われている。平和ボケしていた自分を殴りたくなった。
そして、炎は燃え盛っていく。
油を注いだのは、カロリーナの涙だった。
カロリーナは家族が恋しくて泣いていた。あんなものに涙する必要はないと思ったが、まだ幼さが残る彼女には無理な話だ。
だから、決意する。
この国から彼女を悲しませるものを一切排除しよう。
彼女に相応しい白い国にしよう。
雪を踏み荒らす害悪は消えてしまえばいい。跡形もなく。
アスワドの心には黒い焔が燃え盛っていた。
◇◇◇
アスワドは兄ダハブを頼った。密かに連絡をして、カロリーナの輿入れという名の保護を求めた。
カロリーナの目の前で家族を殺すようなことはしたくない。カロリーナの白を絶望の赤で染める必要はない。赤を纏うのは全てを黒く塗り潰す自分でいい。
だから、殺すのは彼女のしらぬ所で。遠く異国なら噂が届くのも遅いだろう。
国王に悟られぬように輿入れという形をとりたかった。
それを話した時、ダハブは盛大なため息を付いた。
「お前の話は分かった。協力してやってもいい。しかし、お前、彼女が俺を愛してしまったら、どうする気だ?」
理解不能な言葉を聞いて、アスワドが目を丸くする。
「これでも容姿は悪くないからな。彼女が心奪われないとは言えないだろ」
そう言うと、はっとアスワドは乾いた笑いを出す。その笑顔は一見、穏やかそうだが、歪んでいた。
「そうですね。兄上は綺麗な顔をしていますから。カロリーナ様が惹かれたとしても無理はないです。でも……それがなんだと言うのです?」
アスワドは黒い焔を隠すことなく顔に出す。
「そんなことになったら、兄上を殺して、彼女を殺して、私も死ぬまでです」
さも簡単な答えのように、アスワドは言った。それにダハブはため息を吐き出す。
「では、逆に俺が彼女を愛したらどうするんだ? 側室ともなれば、無理やり純潔を奪うことも可能なんだぞ」
そう言うと、アスワドはにこりと笑う。
「そしたら兄上を殺して奪い取るまでです」
「純潔を奪われてもいいというのか」
「反吐が出るほど嫌ですが、そうですね……」
アスワドはカロリーナを思い出して、瞳を揺らす。
「あの方は清らかすぎるので、むしろ汚れてくれた方が手に入れやすいのかもしれません」
そう言うと、ダハブは今までで一番、深いため息をついた。
「お前……それが本当の目的なんじゃないか?」
ダハブに指摘されて、アスワドは瞬きを数回した。
「彼女に惨劇を見せたくないのではなく、むしろ穢れを纏って欲しいと思っているな。自分と同じ暗い底まで墜すために」
そう指摘されて、アスワドは笑った。それは暗い笑みではなく自嘲じみた笑みだった。
「愛しているのなら、お前の色に染めることを恐れるな」
的確な言葉にアスワドは息を吐き出した。
「そうですね。私は自分の色で彼女を染めたくはありません」
顔を上げたアスワドは晴れやかな顔をしていた。
「私はあの方の色に染まりたいのですから」
どこまでも白い色に体も心も魂さえ染まりたい。
それは叶わぬことだし、矛盾しているとアスワドも分かっている。しかし、渇望してやまない。あの清らかな白に。
ダハブはまた深いため息を吐いた。この病んだ弟を止めるのは不可能だと感じていた。
「分かった。お前に協力する。輿入れという形で彼女を迎え入れよう」
「ありがとうございます」
ダハブの顔が兄から王に変わる。
「あの国は制裁が必要だと思っていた頃だ。お前を外に出してよかったよ」
ニヤリと笑ったダハブにアスワドは喰えない兄だと改めて感じた。
「もしかして全て計算ずくで、私を旅立たせたんですか?」
「まさか……結果的に俺の思惑通りに進んだというだけだ」
どこまで本当か不明なダハブの顔を見て、今度はアスワドがため息を吐いた。
◇◇◇
アスワドはマーディを味方に引き込んだ。マーディは姫様を外に出すなんて!と最初こそ反対していたが、王家の瓦解を望んでいると伝えると、長年、燻らせていた激情が彼女の牙となった。
マーディはアスワドと似たところがある。彼女を突き動かす原動力は知らないが盲目的にカロリーナを崇拝している。溺愛という名の狂気だ。そして、一度牙を剥けば、それは誰を喰い殺すのも厭わない。
二人が求めるのはカロリーナただ一人の安寧のみ。
それ以外は、どうなろうと知ったことではない。それはお互いの存在さえそうだった。
そして、同時にアスワドは誓う。
全てが終わるまで彼女に触れないでおこう。今、触れたらきっと自制心が効かない。胸に宿る狂気はきっと、彼女さえも殺しかねない。それぐらい自分の中で鬼神が暴れていた。
――――それなのに。
「キスして」
わざと距離を置いた。カロリーナを自分から守るために。しかし、結局、彼女の存在を気にして足が動く。そして、眠り姫となってしまったカロリーナは今のアスワドには酷なお願いをした。
触れたくない。
触れたい。
幾度かの葛藤の後、アスワドは触れるか触れないかの口づけをカロリーナにした。それが理性を保つギリギリのラインだった。
カロリーナの前で被っていた優しく穏やかな仮面が剥がれ出す。それはアスワドにとって、喜びでもあり、同時に恐怖でもあった。
カロリーナの輿入れを終え、アスワドは動き出した。この国の雪をカロリーナが踏むときは国民の意識も変わっていなければいけない。だから、今の国王への猜疑心を国民に植え付けた。
材料は揃っていた。
カロリーナの存在と輿入れだ。
この地では王家とは真逆に白いドラゴンへの信仰が深い。お伽噺として、子供にも根付かせている。そして、白いドラゴンをモチーフにしたものが多く存在する。
王が白いドラゴンの色を濃く受け継ぐ第一王女を大国からの献金欲しさに売ってしまった。しかも、高貴な血が流れるにも関わらず彼女は忌み子とされ、幽閉されていた。
そんな噂を流した。
知らない第一王女の存在に最初は信じない者と、信じる者が半数ぐらいと国民の間でも意見が分かれた。
だが、一度付いた疑惑の火は簡単には消えない。異国からの訪問者に尋ねる者。異国へ商売に出掛けたついでに真偽を確かめようとする者が出始めた。
元々、華美な生活を好む王家に対して、快く思う者は少ない。決して豊かとは言えない国民が不満を膨らませるのに、この噂は効果的だった。
さらにアスワドは噂を広める。
カロリーナが織った膝掛けは、なぜかキャロライン名義で贈られていた。それはドラゴンの第一王女がしたもの。第二王女はただ王宮で騎士を侍らせているだけだ。
キャロラインは王宮に引きこもって出てこないが、慈善事業をしている慈悲深い王女だというイメージがあった。
そのイメージはカロリーナが得るべき称賛だ。アスワドは奪いたかった。カロリーナが得るべきものは全て、奪ってやりたかった。
国民からの不満を募らせると同時に、王宮内にも争いの火種をまく。
全てをアスワドの手で殺してもよかったのだが、彼らには死よりも先に屈辱を味わわせたかった。
カロリーナを踏みにじった奴らだ。
簡単に黄泉の道へは行かせない。
カロリーナが嫁いだことにより、王家は厄介事からの解放感からか、その顔はずっと醜く笑っていた。
カロリーナが輿入れをした日などは酷いものだった。朝方まで続いた晩餐に、アスワドも参加した。
「酒が旨い! 味がするな! もっとだ。もっと! ははっ! はははははははは!」
「ほら、あなたたち。私にキスをしなさい。今夜は特別に、この唇にしてもよいわよ」
浴びるほど酒を飲む王に、付き合う王妃。騎士を囲い次々と口づけを交わす王女。それを嬉々として受け入れる騎士。
何もかもが狂っていた。
アスワドは吐き気を催しながらも張り付いた笑顔でずっと居た。彼らの滑稽な劇を側で見続けていた。
最初の標的はキャロラインだった。
キャロラインはアスワドを含め六人の騎士を囲っていた。彼らはいかにキャロラインに取り入り、ゆくゆくは王の座に就くかということしか考えていない。
キャロラインに愛を囁きながら、彼女を喰い物にすることしか考えていなかった。
キャロラインはそれを知ってか、ハーレムのような状況をただ楽しんでいるだけなのか分からないが、お互いに牽制し合い、嫉妬と欲を募らせる彼らを見ては、にんまり笑っていた。
アスワドはキャロラインに気に入られていたが、その立場も利用した。利用して騎士たちに囁いた。
「私は主を失ったただの騎士です。お情けで王宮に置いてもらっているだけですよ。あなた様の方がよほど、王女殿下に相応しい。そして、王の冠も……」
そんなしおらしい言葉を毒のように騎士たちの耳に注ぐ。アスワドが鬼神であり、そんな生易しい男ではないことなど、よくよく考えれば分かりそうなものだが、主が愚かだと従者の目も曇るらしい。
彼らはアスワドの言葉を信じて動き出した。
男女のいざこざというものは、時に戦よりも悲惨な末路を生む。
アスワドは母の死で、痛いほどそれがわかっていた。
ある騎士は焦れてキャロラインに襲いかかった。
それを見た別の騎士が嫉妬で襲った騎士を切り刻んだ。
ある騎士はキャロラインに選ばれなければ自害すると脅した。キャロラインは逃げ、彼は絶望して自らの生を終わらせた。
一人、また一人といなくなる異様な空気に耐えきれずにまた一人消える。
「なん、で……」
キャロラインが気がついた時には、彼女の周りにはアスワドしか残らなかった。
「お願い、お願いよ、アスワド……あなたまで消えないで」
すがりつくキャロラインにアスワドは悪魔のような微笑みで、彼女に囁く。
「お父様が影で騎士たちをそそのかしたのです。あなた様が騎士に色目を使うのが我慢できなかったようですよ」
「おとう、さまが……」
「ええ。お父様のご様子をよくご覧になって下さい。あなた様を見る目の異様さに気づくはずです」
王はキャロラインを溺愛していた。それはあくまで娘への愛に留まっていたが、異様な空気に呑まれたキャロラインに正常な判断ができるわけもなかった。
キャロラインは王に対して疑心暗鬼になり、罵倒し始めた。王は最愛の娘に誤解され、耐え難い傷を負う。
王妃までも王を汚いものを見る目で彼を見るようになり、王は孤立した。
次にアスワドはキャロラインと王妃に囁く。
「兄が治めている国へ亡命してはいかがでしょうか」
二人はアスワドがカロリーナの嫁いだ国の元王子で、現国王は彼の兄だということは知っていた。
「あんな女と同じ場所に行くなんて……!」
「そうですね。しかし、私は思うのです。キャロライン様は雪の国よりも輝くばかりの太陽の国がお似合いです。何より、あのお父様から逃げたいのでは?」
ずっと呼ばなかったキャロラインの名前をここぞとばかりにアスワドは強調して言った。
「アスワド……あなたも付いてきてくれるのですか?」
王妃が恐々と尋ねる。
「そうしたいのは山々ですが、国王陛下の奇行からお二人を守るのが第一優先です。無事に脱出できるよう食い止めます。信頼のおける者を従者に付けますので、ご安心ください」
そう微笑むと、二人は相談すると言うので、アスワドは部屋から出た。
相談と言っても、アスワドには分かっていた。彼女らがアスワドの言うとおりにすることを。
孤立した王に近づく者はいない。やつれた王にアスワドは近づいた。
「アスワド……君か」
「お気を確かに、国王陛下」
「何が悪かったんだ……いつから、こんな……」
頭を抱え嘆く王に寄り添い、アスワドは慰め続けた。
「お二人とも誤解なさっているだけです。話せばきっと分かってくださいます。王女殿下を誰よりも愛していたあなた様です。父の愛を子供は分かってくれますよ」
そう言って王に奇行を繰り返させた。キャロラインの部屋の扉の前で彼女の名を呼ばせた。何時間も。何時間も。
キャロラインはついに追い詰められ母にすがった。亡命を。
そして、王が眠る夜遅く、二人はアスワドが見送る中、夜道を足早に去っていった。
それを見届けるとマーディがアスワドに近づく。
「逃がさず、この手で殺してしまえばよいものを」
苦々しく吐き捨てるようにマーディが言うと、アスワドは歪んだ笑顔を作る。
「簡単に殺してはいけませんよ」
アスワドは彼女たちが去った夜道を見つめる。
「人の善意を貪るだけ貪った彼女たちにはせいぜい、これから人に尽くす仕事をしていただかないと」
アスワドが雇った従者は奴隷商人だった。これから彼女らの末路は悲惨だ。どこかの好色家に売られるか、娼館にでも送られるだろう。より劣悪な環境をと、お願いしてあるが、守られるかは不明だ。
どちらにせよ、二人の道に光はなかった。
アスワドがここまでスムーズに事を運べたのはマーディの力に寄る所が大きい。
彼女はアスワドが動くたびに影のように動き、人払いをした。さらに使用人たちには逃げるように言おうとする。が、それは必要なかった。異様な空気に呑まれた使用人たちは、マーディから言われるまでもなく散り散りになっていった。
それを見てマーディは思った。
なんて希薄な忠誠心だ。
それとも、この国は元から忠誠心など抱ける状況ではなかったのだろうか。
しかし、それも無理はない。
マーディが忠誠を誓う相手はここにはいない。一人はすでに亡くなり、一人は遠い異国の地だ。
マーディはカロリーナを思い、空を仰ぐ。同じように彼女が空を見ていることを願って。
残るは王だけだった。
マーディは自分の手で殺したいと言ったが、アスワドは彼に相応しい処刑台を用意した。
民衆によるクーデターだ。
そして、王は国民により撲殺された。
全てが終わった時には六年の歳月が経っていた。カロリーナを呼び寄せる一年で国内の治安を正していった。血で染まり誰もいなくなった王宮を一新した。華美な装飾をやめ、価値のある芸術品は売って国庫に充てた。職人には手当てを与え、より仕事をしやすくした。国内の生産が弱いこの国では技術を売るしかない。その技術力を高めるための足掛かりだった。
同時に寒さや雪に強い作物の研究も進められた。飢えやすい雪の時期をやりすごすための策だ。アスワドの知名度から、諸外国とも外交がしやすくなった。知識を得て自国に持ち帰る。
まだ種を蒔いただけだが、いつか芽吹くとアスワドは思っている。
一年経つ頃には、国内は動乱の爪痕が消え、カロリーナがいた頃の静けさが戻っていた。
七年。
アスワドは駆け続けた。
たった一人の為に。
◇◇◇
カロリーナが戻ってきて、アスワドは心から歓喜していた。心臓の音が再び聞こえだした。
婚礼の準備をしている最中、一度だけカロリーナはアスワドに家族だった人たちのことを聞いた。
丁度、雪が降りだし、バルコニーに出た時だった。
アスワドは詳細は省き、結果のみを端的に伝える。
「王はクーデターの最中に撲殺されました。王妃と妹君はその前に逃亡し、奴隷商人に捕まり、行方知れずです」
「そう……」
白い雪を仰ぎながら、カロリーナは短く答えた。
「泣かないんですね」
アスワドが微笑みながら尋ねると、カロリーナははぁと息を吐き出す。彼女の白い息は形を変えて灰色の空に溶ける。
「あの頃とは変わったもの。私は彼らの幸せをもう願うことはできない」
まだ少しだけあどけなさの残る横顔だった。だけど、七年の歳月は彼女を自立した一人の女性にしたらしい。
家族だった人を”彼ら”と赤の他人のように言うカロリーナにアスワドは心から安堵した。
カロリーナは慈悲深い気質を変えておらず、アスワドに導かれるまま、女王の仕事を懸命にこなした。彼女の見た目とその精神に触れ、国民も新しい女王の誕生を喜んだ。
◇◇◇
アスワドは傍らで眠るカロリーナを見つめ、今までのことを思い返してきた。
ようやく手に入れたカロリーナがすぐそばで眠っている。だけど、まだ彼女に触れる時は手が躊躇してしまう。自分の中に眠る狂気が彼女を悲しませないか、それが恐ろしかった。
ただ、カロリーナ様なら――――
この漆黒の炎も包み白く染めてしまうかもしれない。
そうなればよいとアスワドは思っていた。
窓の外では雪が降っている。
雪がこの国を白い世界に染める。
雪は踏み荒らされずに、降り積もるだろう。
アスワドが望んだ白い世界は今、完成した。
アスワド編は描写がキツいですが、次の侍女マーディ編は精神的にキツくなります。
カロリーナが織っていた織物がキャロライン名義でなっていたのは切ない理由があります。
次のマーディ視点で分かります。