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旅立ちは唐突に

下記で新規に投稿を開始いたしました。

『この世界のガチャ運は俺にだけ厳しい~ハズレとポンコツと【☆☆☆☆☆☆☆】(レジェンドレア)な冒険者生活~』

(https://ncode.syosetu.com/n5439fl/)

「は? 世界がガチャで回ってる? あんた、アホなんじゃないの?」


 というのが、現代知識を教えてやろうとしたオレたちに対する、アルバコアのお礼の言葉であった。

 はは。超ぶん殴りたい。



 ――人類抹殺指令は先ほど焼き捨てられた外部メモリに保存されていたらしく、先程までの物騒さはどこへやら、上機嫌でウェンズディを抱きかかえ、オレたちにポンポンと質問を投げかけてきていた。


 そのうちのひとつが商業活動に対するものだったのだが……


「ええ!? アルバコアさんの時代にはガチャがなかったのですか!?」


 ウェンズディが驚きに目を丸くする。

 アルバコアが基本的な信用通貨だとか法律の話をするが、駄妖精(ウェンズディ)にはちんぷんかんぷんだ!


「ひえぇ……。その……簿記というのですか?

 古代文明の人間さんはとんでもなく高度なことをされていたのですねぇ……」


 オレらからしてみたらガチャ文明のほうがやばいと思うんだけど。


 だってガチャアイテムときたら、インベントリとかいうのに置いとく間は腐らないし、量にだって制限がない。

 ダンジョン内で遭難したとしても即死しなかったらなんとかなるくらい便利なのだ。


(ほんとにどーなってなだろうな。この世界の歴史って)


 アルバコアがこう言うってことは、こいつが生産されて活動していた時期にはまだガチャがなかったのか?

 もしかすると、萌芽(ほうが)となるような技術が開発されていたのかもしれないけど、兵器であるアルバコアにはそのあたりは専門外だろうし、外部メモリも焼き捨てられちゃったしなぁ。


「この世界においてガチャとは――」


 ともあれ、ウェンズディが大きな身振り手振りを交えながら、この世界の商業活動――モンスター退治やダンジョン攻略といった冒険でカキンを得て、ガチャを回すサイクルを説明し始める。

 やがて、


「というわけで、今は人間さんはみんな冒険者なのですよ!」


 ウェンズディが「えっへん」と言いながら説明しめくくったとき、


「冒険!? なにそれすごく楽しそう!! ……ごほん。ふっ、なかなか興味深い単語ね」


 アルバコアが目をくわっと見開いてウェンズディに食いついた。


 なにが琴線に触れたのやら。

 クールに髪をかきあげてごまかしているが興味津々なのはバレバレである。


 人間イコール冒険者ということが当たり前であるウェンズディは『何言ってんだこいつ』みたいな表情を浮かべるが、異世界転生者であるオレにはアルバコアの気持ちがよくわかる。


 初めて『冒険者』っていう言葉を聞いたときの、心の奥底がほんのりわくわくする気持ち。

 男の子だったら誰でもわかると思うんだけど、知的好奇心および目立ちたい願望を満たしてくれそうなキーワードだもんね。仕方ないね。


 人類抹殺指令が出されるような殺伐とした時代に生産されたアルバコアにとって、その言葉がどのように響いたか。それを思うと微笑ましい気すらする。


 だからオレは彼女に手を差し伸べた。


「アルバコア。君さえよければオレたちについてこないか?」


 このツンデレアンドロイドは自分からそれを言い出せないだろうから。


「……イヤよ」


 アルバコアは一度だけぷいっと顔を横にそむけた。

 でも、ちらちらとこちらの手を見る感じはまるで放置された猫のようにも見える。名前はビンナガマグロ(アルバコア)なのにね。不思議だね。

 

「そんなこと言わずにさ。きっと楽しいぜ? ウェンズディもそう思うだろ?」


「そーですよ! わたしもアルバコアさんとご一緒したいです!」


「ふ、ふん。そこまで頼まれちゃ断れないわね。ウェンズディも可愛いし」


 ぎゅっと握り返されたその手は、アンドロイドなのにとても熱かった。


 どこからともなくパーティ参加のアナウンスが聞こえて、ウェンズディの顔がぱーっと明るくなる。


「おお。ナバルさん! すごいです! 戦力大幅アップですよ!」


 そういやこのアナウンスも割と謎技術だよね。

 だが、オレはそんな疑問をおくびにも出さず、「ふっ」とカッコよく笑った。


「ああ。計画通りだな」


「カッコつけてるところ悪いんですが、おしっこチビりながら言われてもダサいです」


「しょうがないじゃん! こわかったんだもん!」


 ちょっと考えていただきたい。自分を即死させるビームが何度もこちらに向けられていたのだ。

 膀胱がほんの少し(ゆる)くなったからと言って誰が責めることができようか!?


 だがしかーし! こうしてアルバコアを仲間にすることが出来たので、その苦労も報われたと言ってよいだろう。


「よーし。じゃあアルバコア。オレの最初のお願いだ」


 オレはビシィッとアルバコアに向かって指をさした。

 そう! ついにダンジョンを攻略した本意を遂げるときがきたのだ!


「アルバコア、お前はこのオレの奴隷となるのだ! 具体的に言うとオレのカキタレになれぇっ!!」


「ぶー!? なに最低なこと言い出してんですか!?」


「イヤよ。去勢するわよ。人間」


 批難轟々(ひなんごうごう)、即答である。

 

 あれ、おかしいな……。


「こういうのって普通「イエス・マスター」とか「承知しました。ご主人様」言って、なんでも言うこと聞いてくれるパターンなんじゃないの?」


「ところがどっこい! そんな都合のいい展開はありません! 現実をみてください! 現実を!

 って、アルバコアさん。いきなりパーティメンバーをビームで蒸発させようとしないでください!」


「この男、いまのうちに蒸発させたほうが世の中のためだと思うのだけど……」


「それはそうかもですけど!

 ダメです! わたしが飢え死にしちゃいます!」


「うっせえ!! アルバコアはオレがよみがえらせたんだぞ! オレが所有者でパーティリーダーだぞ! 偉いんだぞぉっ!?」


「オーケー、どうやら本気で抹殺されたいようね? ――って、あら?」


 と、腕から銃身を出して凄んでいたアルバコアの動きがいきなりぎこちなくなった。

 ぎぎ、と軋む音がオレの耳にも聞こえる。


「あ、アルバコアさん? どうしたんですか」


 ウェンズディが問うが、理由は簡単だ。

 オレは勝ち誇りながらインベントリから修復スプレー(N)を取り出した。


「お前につかったこの修復スプレーはしょせんレア度Nのアイテム! 効果は微小なのさ!

 ふはは。お前が完全復活するためにはオレに従わざるを得ないのだ!」


「ぐぬぬぬ!」


「これが欲しければ、貴様はオレのカキタレになるのだーっ!!」


 日用品ガチャを5000回も回しただけあって、修復スプレーのストックはそこそこあるぞぉっ!

 が、勝ち誇るオレに対し、アルバコアは「ふっ」と冷たい笑みを浮かべた。


「あたしの高性能っぷりを舐めないことね。――フォームチェンジ!」


 アルバコアの全身からぷしゅーっと蒸気が上がる。


「うわっぷ。なんだこれ。自爆!?」


 やがて、蒸気が晴れたとき、


「誰が自爆なんてするもんですか。見なさい、この完璧なるボディ!」


 ちんまり。


 そこに立っていたのはちんまりとした幼女であった。


 なんということでしょう。

 さきほどまで15歳のオレよりも頭ひとつ高かったモデル体型の美女はどこかに消えうせて、そこにいたのはオレの胸ほどの身長のちんまいロリ幼女!


「アルバコアさんが……縮んだ!?」


 ウェンズディが驚きに目を見開くのを見て、アルバコアが「ふっ」と勝ち誇ったように髪をかきあげる。


「説明してあげましょう!

 あたし、アルバコアはこの形態――セーフモードになることでメンテナンス性が上がり、エネルギーの消費を抑えることができるようになるのよ!

 この形態になったあたしは日常生活を光エネルギー発電だけで賄うことができるようになり、まさに半永久機関! この形態こそ、まさに高性能機であることの証明!」


 アルバコアが手を腰に当てて勝ち誇ったように笑う。

 なんてこったい!


「バカっ!」


 オレは地面を叩いた。叩いて血の涙を流した。

 なぜならば!


「おっぱいまで縮んでるじゃん! そんなロリな見た目でおっぱい揉もうとしたら犯罪じゃん!?

 なにがセーフモードだよ!? 倫理的にデッドリー(致命的)だっつーの!! ――ぐえーっ。け、蹴りやがったな!?」


「蹴るわよ! 何が倫理的にデッドリーよ!? くらえ、古代兵器アッパー!」


「やったな、この野郎! 未来人キーック!」


「はぁ、未来!? 原人みたいな文明しか持ってない連中の分際で未来人を名乗るわけ!? ならば……超科学ヒップアターック!!」


「てめえこそガチャ文明舐めんな! 廃カキンエルボー!」


 ぼこすかぼこすか。ぎゃーぎゃーわーわー。


 戦いはどちらかが死ぬまで続くかと思われた。が、


「お二人ともストォォォップ! なのです」


 オレたちの間に割って入ったのはウェンズディだった。

 

「どうしたんだ、ウェンズディ」と顔をぼこぼこにされて死にかけてるのがオレ。

 

「どうしたの? ウェンズディ」とシュッシュとシャドーボクシングをするように挑発するのは余裕しゃくしゃくのアルバコア。


 こいつ、(ちぢ)んだっつーのにめっちゃ強いんでやんの。

 オレ、まだプロテインの効果が持続中なんだけど。


 セーフモードとはなんだったのか。

 

 ウェンズディのほうは必死になって、


「あの! あの! 上! 上を見てください!」


 と言いながら、アルバコアがダンジョンに開けた穴を指さす。


「上?」


 ピシ。

 

 見上げると、ちょうどアルバコアが開けた穴の(ふち)が冷えて固まって、重さに耐え切れずビシリと割れるところが見えた。

 

 ドスン。

 

 直後、でっかい岩がオレの目の前に落ちてきた。もちろん、こんなん当たったら死ぬ。


「……」


 ごごごご……

 ひび割れはさらに大きくなり、ダンジョンの階層が抜けるかのような地響きを立てはじめる。


「早く逃げた方がいいのでは? このダンジョン、完全に破壊されてますけど」


 言うまでもないが、ダンジョンと言うのは冒険者たちを呼び寄せるための村の重要な施設でもある。

 壊すといったいどうなるか。


「どうなるの?」


 アルバコアの問いに、ウェンズディは「管理している妖精にもよりますが……」と前置して、


「死刑です。ダンジョンを管理してる大妖精に首ちょんぱにされます」


 オレは大妖精――ツルヤティオの村の村長かつ、自分の育ての親でもある大妖精が、にっこり笑いながら首を掻き切るように「キル・ユー」と言っている姿を想像した。


(やばい。殺される……)


 あの大妖精は言ったら実行するタイプの人だ。

 オレは色んな意味で背中に冷や汗が流れるのを感じた。


「よし。逃げよう」


「異議なしなのです!」


 オレたちは地響きを立てて崩壊するダンジョンからすたこらさっさと脱出した。


 こうしてオレたちの冒険の旅は始まったのであった

※いったん一作、習作を書いてから改めて投稿します。

詳細は活動報告をご参照ください

よろしければ↓のリンクからお読みください。

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