side:girl-05
ポタポタと膝の上に雫が落ちた感覚で、自分が泣いて居ることに気づいた。
人前で泣くなんて、何年ぶりだろう。
「ごめん」
彼に頭を下げられたところで、傷ついた心や冷えてしまった思いが戻ることはない。
言い訳を聞いたところで、やっぱり何も変わらなかった。
「聞くのはもういいかな。やっぱり、私の気持ちは変わらない。もう、続けていけない。」
「…ごめん、でも別れたくないんだ。
俺が好きなのは君だけだし、今まで散々酷いことしてきたけど、これからは心を入れ替えるから」
「もう、聞かない。最初に約束したわ。」
「そう、だったね。」
「じゃあ…もう帰ってもらえる?」
見送ることもせずに机を睨みつける。
涙をギリギリで塞きとめるだけで精一杯だ。
「俺は、まだ好きだから。いや、ずっと。それだけは頭の片隅でいいから、忘れないで。」
閉められた扉の音を聞いてしばらく、テーブルに突っ伏した。
思い通りに別れたというのに思い通りにならない自分の感情が情けなくて、信じられなくて、どうしようもない。
このまま、付き合い続けることはできない。
それは本音だ。
だけど、嫌いにもなれない。
グズグズとくすぶる気持ちの底にあるのは、まだ好きだという気持ち。
「もうやだ、きもちわるい…」
虚しくこだました声は、自分の声だというのに聞いたこともない音をしていた。