side:girl-04
牛乳をマグカップに注いで、レンジで温める。
古い型のレンジは目を話すとすぐに吹きこぼれてしまうから、オレンジの光中で回るカップを見つめる。
電源が落ちていたスマホは部屋の充電器に繋いだがまだ起動しない。
なんで、今ここに居るの。
かわいい女の子はどうしたの?
そんな拗ねた言葉すら出てこない可愛くない自分にため息しか出ない。
それでも、冷え切った彼を放り出すこともできないのはまだ気持ちがあるのか、それすらもわからない。どこか麻痺してしまったように何も感じない。
乾いた電子音に扉を開け、程よく湯気の上がったカップを取り出した。
「ありがとう」
彼の言葉には無言を貫いた。何かをいう余裕は、まだない。ぐるぐると頭の中を写真が巡る。
可愛くない、本当に私は可愛くない。
深い深いため息を吐いて、テーブルに肘をつく。
視線をさ迷わせながら、ミルクを飲んで居る姿に、麻痺していた心が動き出す。
だいたい、あんなことしといて家まで押しかけるだなんて厚かましいにもほどがある。
「飲んだら、帰ってくれる?」
「話がしたいんだ、誤解だってちゃんと説明させて」
タイミングよく、スマホの充電が最低限溜まったらしい。
起動画面にお知らせ表示される短いメッセージ。
指で弾いて全文を見る。薄っぺらな言葉にしか見えずに鼻で笑ってしまった。
「誤解?説明?…悪いけど、論より証拠。あの写真が全部でしょ。もう私は終わりにしたい。」
「イヤだ、俺は別れたくない。」
「話にならない。」
「だから、あの写真は誤解なんだよ。話くらい聞いてくれてもいいだろ。」
「…とーっても不本意だけど、話を聞いた上で、それでも無理だと私が判断したら、別れて。それなら、聞いてあげる。」
「いや、それは…」
「約束できないなら聞かない。今すぐに兄さんに連絡して来てもらうし、二度と関わらない。しばらく実家にでも行って、住む場所を変えて携帯も変える。」
「…、くそ、わかった。」
「今の、全部録音しているから、取り消せないからね。」
「お前のそういうとこ本当に…」
「可愛くないとでも言いたい? だったらすぐにでも写真の彼女とお付き合いしてください。」