side:boy
甘い香りがする、華奢な体。
家事には向かなそうなキラキラしたネイルに、ふわふわと綺麗に巻かれた髪。
彼女とは正反対の、女の子、だ。
長い睫毛の下から涙が溢れていて、かわいそう。
すがりつくには頼りなく、上着の裾を掴まれて手が伸びる。
なだめるために、後頭部を撫でる。
ポケットの携帯が2回、短く震えた。
「ごめん、なさい…取り乱して泣いたりなんか…」
「や、あぁいう時は仕方ないだろ。ストーカーっていうのか、これも。」
下駄箱の中詰め込まれた悪趣味な手紙の数々。
好意を伝える内容も、行き過ぎれば嫌がらせだ。
盗撮写真まで付いているというテンプレート。
「引き止めてすみません、もう大丈夫ですから。」
「ばか、家まで送るよ。」
「えっ、でも彼女さんに悪いですし…」
「あいつはもうバイト行ってるし、困ってる後輩ほっとけない。」
「ありがとう、優しいね」
へにゃりと眉を下げて笑う顔は可愛らしいと思う。
男ウケ良い性格と見た目。
本当に、同じ女でここまで違うものか。
かっこいい女を地でいく彼女のことがよぎって少しばかり後ろめたくなる。
いや、でも放置して何か起きでもしたらそっちの方が後味悪い。
送ったら、顔を見に行こう、そこでちゃんと説明すればいいはずだ。