表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空き地のパティスリー  作者: 佐々木春臣
4/4

空き地のパティスリー【番外編】

智也は二階建ての我が家を見上げた。

生まれてこれまでずっと暮らしてきたこの家を今智也は巣立つ。3月の風はまだ冷たく、智也の新しい髪型を嘲笑うようだった。髪の毛が多く、根暗な印象を変えようと思いきってツーブロにしてみたがなかなかどうして似合わない。

たくさんの思い出が目の奥に甦ってくるが、その中心はすべてあの夏の昼下がりの出来事だった。

あの不思議なパティスリーで不思議なパティシエと例のホットケーキに出会ってから、親をなんとか納得させ製菓学校へ進学を決め、今日の引っ越しに至るまで半年以上も経つのに智也にとっては昨日の事のように鮮やかな記憶だった。


「また行きたいな。」

手を変え品を変え試しても自分にはあの味は出せなかった。

あれから何度も空き地を通るがやはり店は無い。あのパティシエに一言お礼を言いたいのに、進学が決まったと伝えたいのに。かえしの付いた釣り針が心に引っ掛かるような感覚を智也は抱えて車に乗り込む。


いつかまた店に行ける気がする、

漠然とだが同時に何となくそう考えるようになっていた。本当に何となく。


車が発車し交差点で信号待ちをしていたところで前の車が沢山の荷物を積んでいるのが目に入ってきた。後部座席には中学生くらいの女の子が座っている。

「前の車も引っ越しかな?」

と母が言う。

窓を開ければ、やはり冷たいが、もう冬の匂いではない風が両親と智也の髪を撫でていった。




引っ越しの季節ですね。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ