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空き地のパティスリー  作者: 佐々木春臣
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空き地のパティスリー 前編

智也はうんざりした気分で夏期講習の帰り道を歩いていた。真夏だというのに灰色の空が頭の上を覆っている。

ひと雨きそうだ。


「ちきしょう……。」

降るならいっそ派手にザーザー降っちまえ。

それで参考書もノートも全部台無しになればいい。


塾は智也が行きたいと言って通っているわけではない。両親が勝手に申し込み通わされている。

うんざりもその両親などが原因だった。今日も朝から激しく喧嘩をしてきて家を出てきた。嫌なのに塾に行ってしまうのも家で顔を会わせたくないからなのかもしれない。


パティシエになっていつか自分の店を持つのが智也の夢 。


銀行員をしている両親は智也の夢を聞くや唾を飛ばしながら反対した。何度も何度もその話題になるとその度に二人とも嫌な顔をする。

智也だって漠然とパティシエになりたいと言っているわけではない。男がお菓子作りなんて恥ずかしいとは思わないし、そんな奴等は放っておけばいい。行きたい製菓学校3校ほどに目星をつけ、春休みにはオープンキャンパスにだって行ってきた。


担任にもうんざりしている。進路は自分が納得する道を選べと言っておきながら、進路希望書には親のサインが必要じゃないか。



もうすぐ見える空き地を過ぎればもう家に着いてしまう。

下半身に何トンもの重りがついているみたいに脚が動かなくなった。それと同時に鼻の奥がつーんとしてきて視界がぼやける。

高校生にもなって泣くなんて。

本当に智也がうんざりしていたのは自分自身だった。本当に塾が嫌ならサボれば良い、親に嫌な顔をされたら舌打ちでもすれば良い、反対されたら大声で言い返せば良い。なのに何もしてこなかった自分が悔しくて、切なくなってきた。

腕で目をこすり、目を閉じて深呼吸をする。

空き地はもうすぐ、家ももうすぐ。


少し落ち着いた智也は空き地に着いたとたんに再び目をこすってしまった。



目の前には昨日まで見たことのない小さなパティスリーがぽつんと建っていたのだから。







次は後編です。

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