事件の前夜
-とある刑務所-
カツン、金属同士が掠り合い、耳に響く嫌な音が出る。まだ新設したばかりで囚人の少ないここでは、喧噪もなくえらく大きく聞こえた。その音が吸い込まれるように小さくなり、聞こえなくなるとまた静寂が訪れる。その閑静な廊下を刑務官は一人で黙々と歩いていた。男が目指す目的地は一般の独房よりも強固にできており、独特の雰囲気を醸し出していた。一目で、ここの囚人はただものじゃないとわかる。男は平然を装うと、ドアを強くたたき、そこの囚人を呼んだ。
「なんだ。」
囚人は読んでいた本を手にしたまま、来た。その瞳を見ただけで、男は声を出しそうになる。
「ご両親からだそうだ。」
震えそうになる手を必死に抑え、なるべく自然に見えるように渡した。囚人は黙って受け取ると、奥へと姿を隠した。その場を早く立ち去りたかった男は、踵を返し足早に帰って行った。
刑務官がいなくなり、そこにはその囚人のみとなると、彼は渡された手紙の封を開いた。傍から見ればただの手紙である。しかし、手紙をある方法で読むと、まったく意味の違うものとなる。彼らのみに通じるその手紙には〔準備が整った。計画を実行に移す。刑務所を破壊し、集合せよ〕と書かれていた。用のなくなった手紙は彼の手によって引きちぎられ、床に散乱した。
「世界がやっと終焉の時を迎えたのか。138億年、次は何年続くのだろうか。」
囚人が読書を再開すると、刑務所はいつもの時を刻み始めた。
-プロローグ終了-
プロローグだし、読まなくてもいい話です。




