第七話
「こんなところで会えるとはな。会いたかったぜ、ヤマト。」
音崎が煙草に火を点けながらに言うと、相手は首を傾げながら。
「ヤマト?・・・誰ですか。」
「おいおい、戦い過ぎて自分の名前すら忘れちまったのかよ。お前は風門ヤマト、元SET養成の訓練生だった男で人を追いかけて国を出た男、そうだろ。」
「どうやらあなたは、僕をお知り合いと間違えてるようですね。」
「人違いだって言いてえのか?まぁいい。それは後で、ゆっくりと話すとして、何ならこれを機に俺たちの仲間にならないか、歓迎するぜ。」
すると、相手は歓迎するという言葉に聞き覚えがある気がしたが、
「残念だが、僕は『あの方』に忠誠を尽くし、戦う為に生きている。それを邪魔するのなら誰であろうと・・・」
一瞬武器に手をかけながらも、それを解くと、
「それにしてもいいんですか?こんな所にいて。」
「んっ?」
「早く戻らないと門が開いてしまいますよ。」
すると、音崎は煙草を床に捨てて足で消しながら、、
「俺が何の準備をもせずにここに来ると思うのか?」
「そうですね。しかし、簡単に戻ってもらっても楽しくありません。」
相手がスッと左手を上げると、音崎の周りを獣人たちが取り囲む。
「そっちも準備が良いじゃねえか。けどな・・・」
音崎がそう言うと、次々と獣人たちが倒れ始めた。
「こんな連中じゃ、俺はとめられねーぜ?」
それを見ていた相手は目を閉じて、左目を手で覆いながら、
「さすがですね。では、今度は僕が本気で相手をしたらどうなってしまんですかね?」
「お前の本気だと?」
音崎の問いに相手は頷いてから手を離して目を開けると、彼の左目が金色に光り始めた。
「左目に能力だと!」
音崎がもう一度銃を構えながら空いた手でポケットに入れていた警告を知らせる為のボタンを押すのと同時に相手は宣告する。
「ゲドルネ第一支部副支部長、ウインドゲート。戦闘を開始する。」
高いアラーム音が響くのと同じ音量で冷の指示が飛ぶ。
「栞。訓練生たちに必要最低限の装備を整えさせて避難開始。」
「は、はい。」
「ナイトは車両の周りを固めてきて。」
「了解した。」
凍子の耳につけたインカムに門方向も観に行ったナイトから報告が入る。
「ゲドルネとの門が、開き始めたぞ。」
音崎はそれを阻止することが出来なかったのかと内心舌打ちするも納得して、SETの全メンバーに対して、
「SETの皆さん。これより我々はゲドルネとの戦闘状態になると思います。全メンバーに告げます。所持している武器の安全装置を解除し、相手より先に発砲することを・・・・許可します!」
廊下中に急げー、早くしろーという声が飛び、焦燥感を隠せずにいる訓練生たちが車に乗り込んでいく。
人数を確認し終えた栞からケントと凍子に、
「塩原さんと輝木君が来ないの。どうしよう。」
「あの二人か・・・。」
栞の心配そうな声にケントが凍子を見ると、彼女は判断を任せると言わんばかりの視線を送ってきた、
「二人は俺たちが連れて行くから、お前は訓練生たちと共に今すぐ出るんだ。」
「わ、分かった。」
イヤホンの向こうでの車の発信音、それを聞いてから凍子はもう一度ケントと視線を交わしてから、
「ここをお願いします。ケント、行きましょう。」
「おう。」
二人を探すために作戦本部を出てすぐにケントは目を閉じて意識を集中させる。頭の中に浮かぶ光の粒は能力者を表し、記憶した建物の形を重ねる。すると突如、激しく輝く光の粒が出現した。目を開けて、
「まずは海月から迎えに行くが、それよりも緊急事態だ。」
「どうしたの?」
「今、新しい能力者の反応があった。これは、向こうのリーダー級のやつだ。」
「噓でしょ、いきなり?それなら、早く行きましょう」
ケントも頷き、二人は走るスピードを上げた。
海月は瞼に涙を浮かべながら部屋の隅で蹲っていた。そんな彼女の肩に誰かが触れた。
「・・・ケントさん。凍子さん。」
「間に合って良かったぜ。・・・立てるか?」
申し訳なさそうに海月が首を横に振るのでケントは背中を向けながらしゃがみ、
「分かった、乗れ。」
海月は震える手を何とか伸ばして体を預ける。
「しっかり、掴まってろよ。」
「う、うん。」
だが、廊下に出た瞬間に目の前を一本の投げナイフが通過した。
「目標はっけ~ん。」
ケントと凍子はナイフを投げた少女と向かい合う形をとる。
「ケントが言ってたリーダー級。やはり、あなただったのね。サツキ。」
すると少女は少しダルそうな口調で、
「なぁんだ、バレてたんだぁ。あ~あ、これだから『能力者感知能力』は、ヤダヤダ。」
海月もケントの背中に隠れるようにしながら少女を見る。薄い茶褐色色の肌に金より黄色に近い髪、へそ出しシャツにジーンズ生地の短パン。右手には刃が細い剣を持ち・・・まで見た時、相手も海月に気づく。
「まさか、そのお荷物を抱えたまんまでアタシとやる気?」
「私が相手をするわ。」
二人の前に出ながら、凍子も腰から剣を抜いた。
「戦う前に一つ聞かせて。サツキ、アナタ達は何度協定を破れば気が済むの?」
「さぁね。アタシ達は与えられた命令を全うするだけだもの。そこに理由があろうが、ルールを破ろうが、難しい事はどうでもいいの。」
「そんないい加減なことが通用すると思ってるの?」
サツキは腰に手を当てながら、
「通用してるじゃない。所詮、人間はいい加減で自己チューな生き物なんだから。」
「あなたって人はっ!!」
「落ち着け、熱くなるな。」
ケントの言葉が耳に入ったかどうかは分からないが、凍子は腰を低くしてから地面を蹴る。
「はぁぁぁぁぁー!」
ギィンという激しい音を立てながら二つの剣がぶつかり合う。
鍔迫り合いをしては晴れを何度も繰り返し、汗を飛ばしながらサツキと凍子は剣を打ち鳴らす。
「ホンット、戦いって楽しいわ。」
「ふざけないで!!」
「ふざけてないわよ。アタシはいつだって本気。だから止められないの、よ。」
キィンという音を奏でて距離を取る。
「それにしても、相変わらず能力を使わないのね。」
「っ・・・・。」
「あら、そう。じゃあ、使いたくなるようにしてあげる。」
サツキは左手の甲を凍子達に見せながら黄色い紋章を輝かせ、腰を低くして地面を蹴って距離を縮めてくる。しかし、先ほどとはスピードが倍近く速い。
「!?」
構える凍子だがパワーも上がっているのか受ける剣が重く、ジリジリと後ろへ押されていく。そして、一瞬の隙をついてサツキの蹴りがヒットしてケント達よりも後ろにふっと飛ばされた。
「くっ・・・。」
「さぁ、アンタも早く能力を使いなさいよ。さもないと、アンタの大切な仲間がケガしちゃうわよ。」
剣先をケント達の方へ向けるのを見て、現状を打破するためには自分も能力を使うしか方法は無い。だが使う事に抵抗を感じるのは、忘れることが出来たはずの悲劇を思い出していまうかもしれないと思ったから。その気持ちを察したかのように、
「そうやって過去に縛られてるから、アンタは強くなれないのよ。」
凍子は返す言葉が無く、無言で拳を作る。
「どうせ、誰もアンタの事を期待してないし、信じていないんだから。さっさと使いなさいよ。」
「!?」
凍子の心に電気が走り、二つの言葉が過ぎる。
『俺はお前の事、信じてるからな。』
そして真逆とも言える、
『こんな思いをするくらいなら、あなたたちの事なんて・・・信じるんじゃなかった!』
凍子は左手にある水色の紋章を見つめる。 私の能力は何の為にあるの?しかし、答えを出す前にサツキが走り出す姿が目に入り、
「やめろぉぉぉー!」
柄にもなく大きな声で叫びながら紋章を輝かせ、その手を地面に叩きつける。すると、物凄い速さでサツキ達に向かって氷の道が出来上がっていった。




