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深鋭のエクスタリアス  作者: 高城連乃助
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第二話

指定された部屋つくと、先ほど渡されたファイルの束を置きながら、

「副隊長なのに、相変わらず雑用みたいなことさせられてるんだな。」

「別に好きでしてるわけじゃないわ。私がやった方が早いからやってるだけ。」

 ツンと顔を逸らす凍子に、

「あんまり抱えすぎるなよ? ところで・・・・俺に何の用だ?」

 ポケットに手を突っ込みながらケントが問うと、

「用って?」

とまさかの答えが返ってきたのでケントは肩をすくめながら、

「ただ荷物持ちをさせるだけならナイトでも良かったはずなのに、わざわざ俺を指定したってことは、そういう事だろ?」

「あら、相変わらず察しが良いわね。」

「どーも。っで、改めて聞くけど俺に何の用だ?」

 凍子はファイルの束の一番上をなでながら、

「あの卒業式から数か月が経って、あなたは何を思ってるのか聞きたかったの。」

 凍子の言う卒業式とは、ケント達の訓練学校の卒業式の事だ。

 ケントが座った卒業生の席は本来別の生徒が座る予定だった。しかし、卒業を迎える一か月前、その訓練生が謎の失踪を遂げた。時を同じくしてSETに所属していた少女もまた謎の失踪を遂げていた。

 彼らの姿が見えなくなってからというもの、事情を知っているはずの教官以上の階級がある人たちは口を揃えて、訳があって除隊を申し出たと言うに留まっていたのだが、

「何か裏があるのは、確かなのよね。」

「だろうな。けど、話したくないって事は聞かないでくれってことだろ。」

「そ、それはそうかもしれかもしれないけど。私だって、ずっと気になっているんだからケントだって気になっているんでしょ?」

「とにかくだ。そういう事は深く関わらないほうが良いことが多いぞ。」

 そう言いながらケントは部屋を出て行った。だが、ケントは扉に背中をくっつけながらに心の中に呟く。

(そりゃそうだよ・・・・あいつらの事が気にならない訳ないだろ。)

 ケント自身もできる範囲での情報を必死に集めているつもりだが、思うような情報は未だ得られずにいた。



 レクリエーション施設があるところまでは車で行くのだが、訓練生たちが乗る車列の前後をSETが護衛するように走るのだが、後ろから見守るように走る車にケント達が乗っていた。とっさにナイトが問いかけてくる。

「なぁ、ケント。今年はかわいい子、何人いると思う?」

「さぁな。けど、四人は合格って音崎(おとさき)隊長が言ってたな。」

「相変わらず、あの人は凄いのか凄くないのか分からないな。」

「・・・・同感。」

 SETは三つの部隊に分けられる。近接戦闘を得意とする第三部隊、後方支援を得意とする第二部隊、そして他の部隊では対応しきれない程な高難度な任務などに出動する第一部隊。

 その第一部隊で隊長を務めるのが、物語の最初から度々名前が挙がっている、音崎(おとさき)(じん)である。

 戦闘能力に長けており、また人柄の良さから人気が高いのだが可愛い女の子が大好きだという事でも知られている。

 ケント達が音崎隊長の話で盛り上がっている時、当の本人はというと、

「ハックションッ!!」

と大きなくしゃみをした。助手席に乗る隊員がミラー越しに彼に問う。

「隊長大丈夫ですか?エアコン切りましょうか?」

「いや、大丈夫だ。」

 音崎は愛用する火の点いた煙草の灰を窓から捨てながら外を見ていると、車が徐々に減速をしはじめて、もう一度咥える頃に停車した。

「到着です、隊長。」

「あいよ。ふ~、着いた着いた。」

 シートベルトを外し、車外へと出た音崎は足元に煙草を捨てると足でもみ消す。

 肩章の入った上着を羽織り、気持ちと共に上着の前をキッチリと締める。

 そして、Suvival ELITE Teamとロゴと隊長の印である葉っぱのエンブレム入った、サイズが合わせてあるキャップを被りレクリエーションが行われる建物を眺めた。

「さぁ、行こうかね。」

 入口の前には数名の男性が音崎を待っていて、そのうちの一人がお互い敬礼を交わした後に一歩前に出て握手を求めてきた。



「久しぶりだな、迅。前会ったのは、お前の隊長就任式以来かな。」

 音崎は男性の肩章の線の数が増えていることに気づく。

「しばらく見ないうちに、あの頃より少しは偉くなったみたいだな。」

「おかげさまでな。猿飛(さるとび)来造(らいぞう)、今はここの副施設長だよ。」

「へえ、そいつはご立派。」

 音崎が驚きを見せた理由はレクリエーション施設の近くには国境があり、副施設長以上の階級の人はその国境の扉を開ける方法を知っており、総帥の許可が無くとも、それを開くことが出来る権限を得るのだ。

「ところで、施設長のオヤジはどうした?姿が見えねえみたいだが。」

 すると、猿飛達は肩をすくめながら、

「俺達が聞きたいくらいだよ。」

 音崎は新しい煙草に火を点けながら、

「んっ、どういう事だ?」

「一週間前になるかな、各施設関係者が集まる会議があったらしくて、それに参加しているんだが。

その会議が長引いているみたいでな。」

「それで、帰りが遅くなっていると。」

「ご名答。」

 音崎は猿飛達に煙が掛からないように横を向きながら煙を吐いて、

「じゃあ今回のレクリエーションの進行はどうするんだ?まとめ役は施設長がやることになっていたろ。」

 猿飛は頬を掻きながら、

「さっき最終日までには戻るって連絡が一応入ったんでな。それまで俺が代理ってことになりそうなんだよ。」

「じゃあ今は、ここに居る間は猿飛所長って呼んだ方がいいか?」

「よしてくれよ。だけど迅、それまで何かとサポートを頼むわ。」

「了解した。じゃあ早速で悪いけど他の連中の誘導頼むわ。俺は先に入ってるからよ。」

「あぁ、了解だ。」

 一人施設の中に入っていく音崎の後ろ姿を見ていた猿飛は彼に背中を向けてから上着のポケットに入っていた端末を取り出して、画面を確認すると新着のメッセージが届いてた。

『第一段階、完了。第二段階に移行する。』

という文字を見て船飛は思わずニヤリとした。



その一方で、ケント達とはというと

「なぁ、ケント。俺達ってサポートで来てるんだよな。」

「あぁ、そうだな。それがどうした?」

「なのに、何で俺たちまで授業を受けねぇといけないんだ?」

「受けたくないなら部屋に戻ってても良いんだぜ、あの先生が最終日に出す『テスト』で合格点とれる自信があるならの話だがな。」

 その言葉を聞いてナイトは大きなため息を吐いた。

 今回のレクリエーションにおいて、SETのメンバーは補助の役割を務めるので午前中に行われる授業に出る義務は無いのだが、一つ条件があった。

 それは、レクリエーションの最終日に行われる確認のテストを全員が必ず受けなければいけない。そして、授業に出ず、かつその状態で合格点を取れなかった訓練生は辛い補修を言い渡され、SETのメンバーはいくつかの権限を剥奪(はくだつ)されてしまうのだ。

「しかも、問題を出すのがマリー先生だものな。」

 名前の出たマリー先生というのは二人が訓練生と共に受ける授業の担当教師であり、滅多に怒ることがない優しい先生なのだが出題する問題は鬼畜で、難しい問題を数多く出すことでも有名なのだ。

「まぁ、お互い頑張ろうぜ。」

 二人で軽くこぶしをぶつけ合ってから、教室内へと入るとクラス内では和やかな雰囲気で談笑をする訓練生が数多く見られたが、後ろの扉から二人が入ってくるのを見て、ある者はノートを見直したり、ある者は声の音量を囁く程度まで下げて話し始めた。

「なんか、緊張するな。」

「まぁ、かつての俺達もそうだっだじゃねぇか。」

 その中で一人の少女が二人のところにやってきた。

「ケントさん、ナイトさん。お久しぶりです。」

 水色のボブカットな少女は後ろに手を組んで、笑顔で挨拶をする。

「おぉ、海月。入隊式以来だな。あの頃より少し大きくなったんじゃないか?」

「ナイトさん、何だかお父さんみたいですね。」

 ナイトの右隣りに座るケントが頬杖をつきながら、

「まぁ、こいつはときどき親父くさいところがあるな。」

「んだと、ケントぉ。」

 三人が非常に仲良さそうに話をしているのを見て、あいつ度胸あるな、スゲーなという囁く声が聞こえた気がしたが、ケント達が入ってくる前から他の訓練生と話などをせずに黙々と教科書を読んでいた少年が立ち上がり歩み寄ってきた。

「海月、そろそろ先生が来るから席につけ。」



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