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深鋭のエクスタリアス  作者: 高城連乃助
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第一話

 起床予定時刻の一時間前に目を覚まし、肩の部分に階級章を付けた制服に袖を通した大神(おおかみ)ケントは愛用している二本の剣がしっかり磨かれているのを確認して、それらを背中に担ぐと後ろを振り向いてからため息を一つ吐いた。

 寮生活を始めた訓練生時代からずっと同居してきた少年がいびきをかきながらものすごく気持ちよさそうに眠っている。

 ケントが少年の額をペシッと軽く叩くと、彼は眉を寄せながら目を開けた。

「時間だぞ、ナイト。」

 ナイトと呼ばれる少年は時計を確認して不満そうに、

「おう・・・って、まだ一時間あるじゃねえか。」

「お前の場合、目が覚めてから準備する時間が必要だろうが。」

 ナイトは目元を擦りながら、

「あぁ、そうだな。それよりケント・・・いつものやつ、持ってきて。」

「ほらよ。」

 そう言って、ケントはナイトの膝元に録音機器を置くと、彼は再生ボタンを押して耳に当てた。

 しばらくしてから、ケントが問う。

「目、覚めたか?」

 すると、先ほどとは違い目をキリッとさせたナイトが答える。

「おう、バッチリだぜ。」

 聞くところによると録音機器にはナイトの大好きなアーティストの曲が録音されていて、それを聞くと目が覚めるのだという。

 その姿を見るたびに繰り上げだったとはいえ、本当に訓練生を次席で卒業した人物かと疑いたくなるほどだったが、実技試験や卒業試験での成績は教官たちからのお墨付きなので、認めざるをえない。

 ナイトの準備がすべて整った頃、一人の男性がノックをしてから扉を開けた。

「起きていたか、二人とも。」

 二人が男性に敬礼をしてから、ナイトが苦笑いで、

「ケントのおかげで起きれました。」

「仲が良いんだな。では行くぞ。」



 男性の後ろを歩く二人は疑問に思っていたことを質問する。

「音崎隊長、俺たちまだ訓練生を卒業してまだ二年ちょいなんですけど。」

「ナイトの言う通りです。着任して間もないの俺たちが、実戦に近い任務に就くには早すぎませんか?」

 音崎隊長は歩みを止めずに、

「まっ、お前たちがそれだけ期待されているという事だよ。」

「そ、そうなんですかね。」

 少し照れた表情を見せるナイトに対してケントは、

「今回の任務、俺たちは本当に手伝いだけなんですか?」

 音崎隊長がその質問に答える前に、三人は作戦本部が置かれている部屋へと着き、軽くノックをしてから開く。

「音崎、入ります。」

 敬礼をしながら名乗り入室する彼にケントたちも続く。

「大神、入ります。」

白銀(しろがね)、入ります。・・・あれ?」

 ナイトが疑問に感じたのは、先に部屋にいたのが年齢の近い若手隊員が数人いて、そのほとんどが顔なじみであったからである。

 だが、その緩んだ緊張感をあの男が一気に引き上げる。

 総帥、氷山更四朗が入室し、部屋の中にいる全員の背筋が息を合わせたように伸びて彼の方を見ながら敬礼する。

「全員、揃っているようだな。」

 事前に決められた席に着席して、いよいよ作戦が発表される。

「では、今回君たちに当たってもらう任務を伝える。」

 ゴクリと誰かが生唾を飲み込む音が聞こえてから、氷山更四朗は真剣な表情で、

「今回の君たちの任務は・・・・レクリエーションにて訓練生たちが行う鶏の捕獲作戦の援護だ。」

(・・・・え?)

 今なんて言った?と思わず聞き返したくなるかわりに、ナイトが質問する。

「あの、総帥。」

「何かな?白銀(しろがね)。」

「自分たちには今回、武装勧告が出てるのですが?」



 すると、氷山更四朗は背もたれに寄りかかりながら、

「君たちともなれば鶏を捕まえるのは容易な事かもしれないが、どうしても捕まえられない場合は使用を許可するためだ。」

「な、なるほど。」

 抜刀許可に嬉しそうな顔を見せる隊員たちに音崎隊長が水を差した。

「ただし今回の任務で使用し、武器を破損した場合は全て自腹だからな、無駄遣いするなよ。」

 一気に落胆に変わったところで会議の閉会を宣言されて順次、部屋を出ていく中で氷山更四朗の隣に音崎隊長が最後まで残っていた。

「武装させる理由、大神だけは気づいていたみたいですよ。」

 煙草を咥えて火を点けながら音崎隊長が言うと、氷山更四朗は机に組んだ手を置きながら、、

「流石だな。しかし現状を考えると、いつ何が起きるか分からない。」

 音崎隊長が白い煙をふーっと吐きながら、

「当然ながら、今回の任務は奴らにも筒抜けかと思われます。どこかのタイミングで動いてくるのでしょうかね?」

という問いに対して、氷山凍四朗は微かに笑みを浮かべながら、

「出来る事なら何かしらの行動を起こしつつ、我々のもとへと来てほしいものだな。」

「願望、ですか。」

「ふっ・・・・無論、彼らに実戦での経験を積ませたいと本気で思うならばの話だがな。何も起こらなければ、それはそれで気が楽だというものだ。」

「なるほど、そういう事ですか。」

 どれほど高度な訓練においても実際の戦闘に勝るものはないが、着任してから日の浅い隊員もいるため、その事態は極力避けたいと音崎隊長は考えていた。

「一応、第三部隊で手の空いているものを待機させます。」

「あぁ、頼む。」

 その会話を部屋の外で聞いている人物がいる事に二人は気づいていなかった。



 廊下を歩いている時、ナイトははぁっと大きなため息をついてから、

「斬っても良いけど、壊れたら自腹ってのは嫌だよな。」

「俺は鶏くらい普通に捕まえられるけどな。」

 どうだと言わんばかりの顔をするケントにナイトは苦笑いで、

「何だよ自慢か?・・・・それよりよ。」

 ケントの首元に腕を回しながら、

「さっきから表情硬いぞ、お前。」

「えっ。」

 ケントはパッと右手で額に触れると左右がくっ付いてしまいそうなほど眉が寄っていた。

 ナイトはフッと笑いながら、

「そんな難しい顔ばっかりしてると、女の子にモテないぞ。」

「ナイト、一つ良いか?」

「おっ、何だ?」

 今度はケントがため息をつきながら、

「いつも思うんだけど、お前に音崎隊長みたいな事言われると・・・・何でかわからないけど、腹が立つな。」

「ったく、人が折角心配してやってんのによ。」

 小突きあって笑いあっていると、近くの部屋から重そうなファイルの束を持った水色の長髪をちゃんとまとめた少女が出てきた。

「おっ、凍子(とうこ)。よっすー。」

 ナイトが手を振りながら明るく挨拶すると少女は無言で近づいてきて、

「ケント、丁度良かったわ、運ぶのを手伝ってくれる人を探してたの。」

と言いながら有無を言わせずにファイルの束の半分をナイトではなくケントに渡して、

「悪いけど整理を急ぐ書類なのよ。さぁ、行きましょうか。」

「あぁ、そうだな。」

「ってあれっ、俺はの分は?」

 置き去りにされたナイトをよそに、二人はスタスタと歩いて行ってしまった。

(あいつ、俺の知らないところで本当はモテたりするのか・・・・。)

 そう思いながらナイトは一人寮へと戻っていった。



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