3-7 これからのこと
ドタバタとした夕食時も過ぎ、ようやく落ち着いた二人は、翔斗が夕方に出会ったクリスの話をしつつ、今後のことを話し合おうということになった。
翔斗の両親は出張だということで月曜日まで家を空けることになっているため、現在この家には翔斗とユリアしかいない。
「それじゃあ、ボク達が労せずとも、クリスさんが残りの五つ、いや今日のを入れれば後四つかな。それを探してくれるってことでいいんだよね」
「いや、まあそういうことなんだろうけどさ。それでいいのか?」
「別にいいんじゃないのかな。ボク達はすでに半分の五個を集めているわけだし、クリスさんが残りの半分を掛けて勝負するっていうのも悪くないと思うんだよね。それにさ、昨日、魔石のカケラの暴走を止めたでしょ。それで結構、魔力を使っちゃって、後遺症ってわけじゃないんだろうけど、しばらく全力で魔法を使えなさそうなんだよね。そういうわけだから、むしろクリスさんの提案は渡りに船っていう感じだね」
「俺のせい……だよな?」
「ん、なんのこと?」
ユリアは心底不思議そうな顔で、キョトンと首を傾げた。
「だからさ、魔石のカケラが暴走した理由だよ。あれって、俺がなんかしくじったから、ああなったんだろ?」
「ああ、あのときの話ね。あのね、ああいった『過去の遺失物』ってのは、基本的にきまぐれだから、封印直前に暴走することがたまにあるんだよ。けれど、そんなのは運が良いか運が悪いかっていうだけなの。そういうわけで、昨日はたまたま運が悪かったってだけなんだよ。だから別に翔斗クンのせいなんてことはないよ。むしろ、一人であそこまでやれた翔斗クンを褒めることはあっても、責めることなんて何もないよ」
「いや、それでも……」
「翔斗クン、ボクが翔斗クンのせいじゃないって言ってるんだから、翔斗クンのせいじゃないんだよ。それとも、翔斗クンはボクよりも魔石について詳しく知っていて、あの暴走の原因が自分にあるってことを理解しているの? そういうわけじゃないんでしょ。それなのに、自分が原因だなんておかしな話じゃない?」
「まあ、そうだけどさ」
「だったら、あれは翔斗クンのせいじゃない。たまたま魔石のカケラが暴走して、そしてボクはベストを尽くしたけれど、結果としてちょっと魔力を使い過ぎちゃっただけ。それに身体の状態なんてそのうち元に戻るだろうから、なんの心配もいらないよ」
たとえ、本当に翔斗が原因であったとしても、ユリアは絶対にそのことを口にしないだろう。そういうわけだから、これも翔斗を気遣った上での嘘の言葉なのかもしれないが、それでも翔斗はユリアを信頼してユリアの言葉を信じることにした。
「これでも翔斗クンが自分のせいって言い張るのなら、ボクはまだ説得を続けるけど、どうする?」
「いや、俺の降参だ。ありゃあ、ただの事故だったってことで納得だよ」
「うんうん、わかってくれて何よりだよ」
「なんていうか、ユリアは大人だな……」
「う~ん……、魔法少女であるボクにとって、それはあんまり褒め言葉じゃないかも……。なんか複雑な気持ち」
「ははっ、そいつは違いねえな」
そうして休日の夜は更けていった。




