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魔法少女は男の娘  作者: ぴえ~る
第二章 ライバル出現
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2-5 案内された部屋

 クリスが案内された雑居ビルの三階は、八畳間ほどの広さの部屋が二つ連なっており、さらにシャワー室が付属しているという一室だった。

 基本的にどちらの部屋もがらんとしていて何もないという印象が強かったが、それでも玄関から入って手前側にある部屋には無造作に布団が敷かれており、その隅のほうには冷蔵庫が置かれていた。

 ちなみに奥の方は本当に何もなく、フローリングの床が広がっているだけだった。

「結局、あの人たちは僕の素性について、いっさい聞いてこなかったな……」

 その二人組も今は店を閉めて、自分たちの家へと帰ってしまったためこの場にはいない。

「それにしても、この世界じゃ、食料を確保するのがこんなにも難しいとは……」

 廃ビルから出た後、クリスは食料を目指して街を彷徨っていたのだが、思いのほか食料探索は難航した。どうにか地面に落ちていた百円玉を拾って、それでおにぎりを買ったのはいいのだが、近くの公園で買ったおにぎりを食べよいとしている最中に、野良犬に追いかけられて、おにぎりを地面に落としてしまった。

 食い物の恨みを晴らそうと、野良犬を追いかけたクリスだったが、追いかけているうちに空腹でふらついてしまい、ちょうどそば屋「麹」の前で、身体の制御が効かなくなり、路地裏に入って意識を失ったのである。

 その流れにおいて、とてもシャール家の名に相応しい行いをしているとは思えないが、クリスも必死だったのだ。そのへんは理解してもらいたい。

「店の手伝いも、多少ならば仕方あるまい。どうせ昼間なんかは、人目が尽きやすくて大した行動もできないしな……」

 ユリアたちがなるべく人目を避けて行動しているのと同じように、クリスもまたできるだけ人目を避けて行動しようと心がけているのだ。

 そこは魔法と魔導と、二人の派閥が違えど、志は変わらない。

「それにしても、あの男はどうして僕が男だと見抜いたんだ?」

 全身を確認してみるが、やはり綻びはなく、自分は男として完璧に擬態しているはずだった。

「現に、さっき戦った二人組も店長も、僕が女であることには気づいていないようだったしな……」

 だとすれば、純太にしか感じ取れなかったなにかがあったのだろうか。

 そんなことを考えながら、クリスは一晩を過ごしたのであった。

 結果として、その夜のクリスは自分の男装を見抜いた純太のことばかりを考えていたということになる。

 つまりはクリスも純太もお互いのことを考えて眠りについたのだった。

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