φ(空)≠0(無)
それから俺の魔力測定や属性判定はこの世界に謎を残すだけで詳しい事はわからなかった。
属性判定は色が現れずにただリトマス紙のようなものに「数」と表されるだけだった。
この世界には漢字が存在しているらしい。二人ともそれを見た時には「かず?」と口にしていたからだ。
それにしてもここまでイレギュラーな存在にしなくても良いのに。
何だか転生させたのは俺を困らせたいが為にさせた神様のいじめなのでは無いだろうか。
まぁ、そんな事は無いとは思うが。
とにかく、今は俺の検査結果がどんなもので、俺は何ランクからのスタートなのかと言う事だ。
出来れば高位のランクからのスタートがどちらかといえば好ましい。
低ランクの場合は依頼内容は優しいものの、金の収入は低い。逆に高ランクは危険が伴うがその分報酬額は何倍にもなる。
一日で稼ぐ場合はなるべく高いランクの依頼を引受けなくてはいけない。
「えっと、ユズキ君?君の実力は水晶じゃ分からないんで……実戦という形でいいかな?それでランクを決めよう」
ギルドマスターはそんな事を言い出した。
まぁ、こればっかりは仕方が無いだろう、この世界で言う能力は実戦ならば1番データが取れるだろう。
なんせ、魔法という殺人手段を躊躇いも無く使って人や魔物との戦闘を好む戦闘種族なんだからな。
「まぁ、しょうがないですね」
渋々了解の返事をしてから少し項垂れる俺。まぁ、いざとなれば低ランクのクエストをコツコツこなして行くさ。
「と言うわけで、これからギルド内の練習場に行くぞ」
「ギルド内に練習場があるんですか?」
「まぁな、このギルドはアラドヘイム王国では1番大きく、ベアトリア全土では五本の指には入る大きさだからな」
意気揚々と自慢気に答えるギルドマスター。まぁ、自慢したくなるのも分かる気がするがドヤ顔はやめてくれ。
「あ、ユズキ君!どうだった?」
部屋から出て来ると、受付カウンターの近くにある酒場でパーティーのメンバーと話し込んでいたエレナがこちらに気が付き走り寄ってきた。
「どうだった……って言われてもな……」
答える術が無く無意識に右手が後頭部を掻いていた。
「おぉアルビレオか、なんだ知り合いか」
俺の後ろからギルドマスターがひょっこり出てきた。
というか何時の間に俺の後ろに?
ギルドマスターの存在を確認したエレナは質問の標的を俺からギルドマスターへと変更した。
「ウォルフさん!あの、ユズキ君の結果は?」
ギルドマスターはウォルフさんと言うらしい。後ろに受付嬢はいないからな。
「それがだね……属性は分かったんだけど、魔力量が……」
ウォルフさんは語尾を濁らせた。だがエレナはそこを追求するより早く別の事についての質問を投げかけた。
「属性は何ですか!?」
顔を近づけてやや興奮気味に話すエレナ。さっきまで立てなかったのに一体何があったんだ。
急に顔を近づけられたウォルフさんは、エレナに落ち着けと言うジェスチャーをした。
それに気が付き、エレナも少し離れてウォルフさんの回答を待った。
「ユズキ君の属性は【数】だ」
ウォルフさんはそう言った。
「かず?……って数字の【数】ですか?」
「あぁ、測定紙に文字だけ現れた」
ウォルフさんがそう良い終わるとエレナは俺の方をジッと見てきた。
数秒見た後に、何かを悟ったように、にこやかな笑みを浮かべた。
「成る程、で魔力量はどうするんです?」
「それは今から私と戦ってから決めるさ、勿論、魔力量だけで無くランクもな」
ウォルフさんがそう言うとギルド内の空気が変わった。握かだったギルドはウォルフさんの一言でその騒ぎの熱を奪い取られてしまった。
チョット待てと俺は言いたい。
だが、俺自身も予想外の事で体が思うように動いてくれない。
「おぉアルビレオか、なんだ知り合いか」
俺の後ろからギルドマスターがひょっこり出てきた。
というか何時の間に俺の後ろに?
ギルドマスターの存在を確認したエレナは質問の標的を俺からギルドマスターへと変更した。
「ウォルフさん!あの、ユズキ君の結果は?」
ギルドマスターはウォルフさんと言うらしい。後ろに受付嬢はいないからな。
「それがだね……属性は分かったんだけど、魔力量が……」
ウォルフさんは語尾を濁らせた。だがエレナはそこを追求するより早く別の事についての質問を投げかけた。
「属性は何ですか!?」
顔を近づけてやや興奮気味に話すエレナ。さっきまで立てなかったのに一体何があったんだ。
急に顔を近づけられたウォルフさんは、エレナに落ち着けと言うジェスチャーをした。
それに気が付き、エレナも少し離れてウォルフさんの回答を待った。
「ユズキ君の属性は【数】だ」
ウォルフさんはそう言った。
「かず?……って数字の【数】ですか?」
「あぁ、測定紙に文字だけ現れた」
ウォルフさんがそう良い終わるとエレナは俺の方をジッと見てきた。
数秒見た後に、何かを悟ったように、にこやかな笑みを浮かべた。
「成る程、で魔力量はどうするんです?」
「それは今から私と戦ってから決めるさ、勿論、魔力量だけで無くランクもな」
ウォルフさんがそう言うとギルド内の空気が変わった。握かだったギルドはウォルフさんの一言でその騒ぎの熱を奪い取られてしまった。
チョット待てと俺は言いたい。
だが、俺自身も予想外の事で体が思うように動いてくれない。
「ウォルフさんが直々に殺るんですか!?」
一早く回復してリアクションを見せたエレナはそんな事はを言った。
少々字が違ってる気もするが……
「私が直々に闘った方が実力が分かりやすいだろ?」
ウォルフさんは焦るエレナと俺を嘲笑うかのような冷静さで、まるで当たり前の事を言ったような感じで言った。
「と、言うわけで行くぞユズキ君」
何がと言う訳でなのかは分からないがウォルフさんは強引に俺の腕を引っ張って何処かへ……まぁ練習場だろうがゆっくり歩き出した。
「ウォルフさんの戦いが見れるぞ!!」
「早く行こうぜ!!」
「ギルドマスターがついに……」
ギルド内は先程の静けさが嘘のように活気、賑やかさを取り戻した、いやそれ以上かもしれない。
「ちょ……ウォルフさん!?」
エレナが納得いかない感じでウォルフさんに食いついて行くがウォルフさんは無視を決め込む。
それは、俺たちが練習場に着くまで続いた。
「召喚獣及び魔武器の使用は許可。相手を気絶、降参させることで勝敗を決めます。制限時間は無し」
審判を勤めるのは受付嬢をしていた、メリル・フレイアさん。何でも受付嬢はランクが主天使あるらしい。
このギルドのランク制度、万国共通で定められている。
Fランク:天使
Eランク:大天使
Dランク:権天使
Cランク:能天使
Bランク:力天使
Aランク:主天使
Sランク:座天使
SSランク:智天使
SSSランク:熾天使
とこのようにランク分けされていく。モンスターに関してはこの天使のランクを使うこともあるが、モンスターは天使な訳が無いだろ!いい加減しろ!というわけで、Sなどのアルファベットで表される。
何とも面倒くさい。
更に、このアラドヘイムには帝と呼ばれる覇者がいる。
実力、つまり己の武力のみで国家権利に上り詰めた人物たちだ。
その人たちはランクが天使のランクではなく。この世を魔物から守る存在として。
Xランク:救世主のランクが渡される。
きいた?メシアよメシア?中2すぎて俺の心臓がキリキリ痛み出したんだけど、これどういうこと?間接的に俺への精神攻撃とみていい感じかな?
大体は初めは天使か大天使のランクから始まり、後々に昇格試験などを受けていくらしい。
「ユズキ君……」
制服の袖が軽く引っ張られる感覚と共に後ろからエレナの小さな声がした。
「どした?」
そう返事を返してみたものの、エレナの表情は暗いものであった。
「ウォルフさんが身体強化を使ったら棄権してね……」
耳元まで顔を近づけてきたエレナはそう言った。
「どうして?」
まぁ、そんな理由も無しに結果だけ言われても納得出来ない。それなら数学のテストに出てきた証明問題に友達が書いた回答ーー
『学校のテストに証明出来ない問題は出題されない、よってこの△ABC∽△DEFは成り立つ』
ーーこの天才的な回答の方がまだ納得がいく。
このような阿保な考えを持っていたのだが、次の瞬間、エレナから放たれた言葉に絶望の沼へ叩き落とされた。
「ウォルフさんは救世主のランクなの」
俺の転生人生終了のお知らせがきました。
魔法の無い地球、戦争放棄を掲げて一切の戦闘訓練を受けない日本の高校生が、魔法アリの戦闘訓練は幼少より受けている国ではその経験の差があり過ぎる。
それにこの世界でも高い戦闘能力をもつ人物とこれから組手をやる。死亡フラグが立ってもおかしくない。
クソ……いやな予感しかしない。
エレナはウォルフさんが身体強化を使ったら棄権しろと言った。裏を返せばそれまでは本気を出さないから安心しろということだ。
つまり、それまでなら死亡フラグは建たない訳だ。
もし死んだら、神様に『ミッション失敗しやした、もう一回生き返らせて下さいな☆』くらい言えば十分んだろう。
『何を言うか次は無い。それに柚木君が死ぬ?ありえんな』
突然、頭の中に神様の言葉が響いた。
いやいやいや、よく考えてくれよ。もやしっ子にガトリングとレールガンを装備したボブサップに勝てって言ってるようなものですよ。
『柚木君がボブサップの位置って意味?よく分かってるじゃん』
神様の頭はハッピーな件。
どうやったらそこまで楽観的かつ俺得な方へと思考のベクトルを変換できるのでしょうか。
そのポジティブシンキング能力を私にも一つ下さい。
「あ、もうすぐで勤務時間終了するので、はい始め!」
えぇ……少しくらい待ってくれよ……
これから、そんな化け物と戦わなくちゃいけない少年差し置いて自分の利益かよ……
受付嬢のフレイヤさんが開始の合図を告げる。
それと同時にウォルフさんの右手に淡い光が灯る。
突然の事に俺はすぐさま腰を落として臨戦体制をとる。
手からビームを出すかもしれない、手から火球を出すかもしれない、地球では考えられないような攻撃を繰り出すかもしれない。
そんなありとあらゆる可能性がほぼ同じタイミングで頭を駆け抜ける。
しかし、その光は攻撃を繰り出すものでは無かった。
「!?」
ウォルフさんの手に現れたのは超巨大なバスターソード。
黒の柄を覆うようにつけられた鍔はサーベルの様な形をしていて、それには銀色に鈍く輝く鎖が巻きついていた。
少し太めの柄ではあるものの、片刃の刀身に目を向けると圧巻の一言に尽きる。
少し反った刃は不気味な紫色、峰の方にはこれで峰打ちにされても重症を受けるであろう尖端が怪しげに光る突起物がいくつもあった。
刀身には魚の鱗のような物がついていた。それがより一層不気味に思える。
重さに耐えきれなくなったのか、ウォルフさんはそのバスターソードを地面に突き立てた。
その瞬間、バスターソードの刃先は数十cm地面に埋まり、ウォルフさんの足元の周りに大量の砂ぼこりが巻き上がった。
「ユズキ君、君は武器を用意しないのかい?」
ウォルフさんはバスターソードの柄に両手をおいて、威厳たっぷりにそう言った。
出さないのでは無く、出せないのが正解なんですが……
そう言ってやりたい、でも男としてなんだか負けた気がする。
「僕は魔法専攻なもんで」
俺は不適に口元を上げながらそう言った。
勿論、お分かりの人も多いだろう、ハッタリである。
「フッ、そうか、それは楽しめそうだ」
ウォルフさんは目を伏せてそう言った。
しかし、どうしたものか……すでに開始の合図はなっているのだから、攻撃をしかけてもいいはず。
しかし、ウォルフさんが動く気配はない。
突っ込んで見るのもありだろうが、隙がない。剣を地面に突き刺しているにも関わらず攻撃を当てられる気がしない。
迂闊に突っ込んではいけない、本能がそう言っている様に思た。
「こないのならこちらから行くが?」
痺れを切らした様にウォルフさんが片目を開けながらそう言った。
カエルに睨まれたヘビ、いやドラゴンに睨まれた蟻。そう形容出来そうなほどの恐怖が俺に襲いかかった。
「…………どうぞ?」
出来る限りの平然を装って返事する。その際に攻撃に備えて、「αX」のαに8を代入しておく。
もしかしたら、8でも足りないかもしれない……。
うえwwっうえwww
中々読まれないwwwwうえwwwwwwwっうえwwwww