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数学オタクが転生します  作者: 二毛作
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実技試験≠フェア

あけましておめでとうございます、今年もどうぞよろしくお願いしますね。



それからお年玉待ってます。



お年玉という名の書籍化待ってます()

 鬱蒼と生い茂った緑が目に飛び込んできた。周りからは野鳥と思しき鳴き声が聞こえてくる。



 解放感はない、どちらかといえば草木が生い茂りすぎてむしろ歩きにくい。



「おうぇぇぇ……おげぇぇぇ」



 そんな、南米を思わせる密林と言える場所で、俺は盛大に胃の中をぶちまけた。



 この光景前にもみたような気がするぞ……



「はぁ……き、気持ち悪りぃ……」



 なんでこうも三半規管が酔うんだ……俺乗り物酔いとかもしなかったんだがなぁ……



 とにかくここで無様によっているわけにもいかないので、俺は無理やり足を動かすことにした。



「にしても、なんだここ……」



 見覚えがない。これはなんということだ……地図が把握できないなんて、サバイバル戦ではご法度だぞ!



 さらにいえば、戦場での情報はかなり重要だ。戦況を把握してから最善の策を選ぶ。それも二手三手を先読みしてだ。



 それにもかかわらず俺は、三半規管がダメージを受ける始末。これではまずい。



「と、とにかく隠れよう」



 我ながら情けない。でも仕方ないじゃないか、他に方法は無いんだから。



 俺はジャンプで木の枝に捕まり、その生い茂る葉に隠れるようにして枝に腰掛け、幹に背を預けた。



 酔いが覚めるまではこうしてよう……



「にしても……世紀末かよ」



 木の上から見てわかったことは、あちらこちらで火や雷や津波やら竜巻が起こり、木々がどんどん薙ぎ倒されて行く。うわお、森林伐採地球温暖化が進むよ!この場合はベアトリア温暖化か?



 まぁ、なんにせよ、地球では考えられないような、もし起きたら世界の終わりだと確信するような景色が広がっていた。



 これは勝てない……



 いや、勝てないと言うか関わりたくない。口先一つで天変地異に匹敵する何かをしでかす連中と、正当な理由で罪問われることなく戦うのだ。



 言わば人間一人対超弩級戦艦とかそんな感じだ。勝てるわけがない。



「血の気の多い連中だ。話し合いで平和的解決をするべきだろう」



 話し合いで解決したらテスト意味は無いがな。



 よし、移動しようか、少し落ち着いて来たことだしな。



 俺は木から木へと飛び移り、なるべく敵に見つからないように移動を開始する。焦らずゆっくりと移動していく。



 そんな中でも、爆音やら悲鳴が止むことはない。それに俺も生徒を、否敵を見つけてしまった。



 手にはリーチの長い槍を構えた金髪の長い髪をした人影をみつけた、腰を低くしながら森の中を探索するように歩いていた。



「よく見えん……」



 おそらく髪が長いから女性というのは近いのだろうが、いかんせんここは異世界だ。髪の長いイケメンということもあり得る。そうなるとどうなるか。



 つまりイケメンは速やかに抹殺するべきなのだ。



 だがよくみえない、遠すぎてよく見えない。



 そんな時に便利なのがこの魔法。



「【ズーム】」



 なんと、視力の値を変更することで遠くのものまで鮮明に見えちゃうのです、なんてすばらしい。レーシック受ける必要ないわ。



「ふむ、やはり女だったか」



 イケメンでなかったのは良しとしよう。しかしあれは……



「緑のペンダント……上級生か」



 此度の戦、あいや、今回の試験では上級生を倒すと特典がよりはいるシステムだ、よって上級生を見分けるためにペンダントの色が違う。



 一年生は赤、二年生は青、三年生は緑、そしてなぜか、特待生は黒というわけられ方だ。大方特待生を倒しても得点が高いんだろうな。つまり俺狙い目。



 そうなると、狙い目の俺が先輩と戦うとなると相当まずい。ここはじっとまってやり過ごすに限る。



 静かにその先輩の行く末を見送るように目を見張る。



 そしていま、俺のいる木の下にその先輩がやって来た。心臓の律動がこうもはっきり聞こえるなんて始めての経験だ。



 あたりを舐めるように見渡したあと、慎重な足運びでさらに進んで行く。どうやらばれなかったようだ。



 俺は木の幹に手をついて、緊張していた空気を吐き出すように息を吐いた。



 危なかった、流石に上級生に勝てる気なんてしないからな。



 刹那、俺の手のやく5センチほど右側の幹に、何やらショートソードが突き刺さっていた。



 まずい!ばれた!



 そう思った矢先のこと。



「見つけた!」



 うしろから声が聞こえて来た。



「ッ!」



 もうホラー映画とか比較にならないくらいに心臓が跳ねた。人って驚きすぎると体固まって声すらでないんだな。



 それでも、俺の野生の本能が残っていたのか、無意識のうちに、飛び込むようにして木から飛び降りた。



 途中で体を半回転させて着地。その際にさらにローリングして衝撃を殺す。



 すぐに体を俺のいた木のほうに向けて、腰に手を回しDXスライサーを……



 無かった。そうだ。バレるから使うんじゃねぇカス、使ったら殺すってミナに言われたんだった。



 ちくしょう、武器なしは辛いだろ……



 サクッと、小気味良い音が足元で聞こえた。



 目を向けるとあのショートソードがあった。



 剣って投げるものじゃ……



「油断してると倒すよ特待生!」



「ふぁい!?」



 いきなり目の前に現れた女性は、俺の顔面めがけて蹴りを放とうとしていた。



「クソ!」



 手を滑り込ませながら、俺は右側にロール。少し手にかすったが支障はないだろう。



 空振った女性は、一回転したのちに、バックステップで俺から距離をとる。



 そこでようやく姿が確認できた。



 さっきの金髪の人ではなく、髪の色はピンク色だった。珍しいなピンクだなんて。



「武器も持たないなんてねぇ」



 その上級生が俺をみてニヤニヤとした表情をした。



 武器を持たないのではなくもてないが正しいのですよ。ええ、こちらにも事情がありましてね。



 なんてことを思ってみたものの、そんなことを伝わるはずがなかった。



「特待生は5倍だったかな、ありがたくポイントいただきます!」



 そういって、手にしていたショートソードをこちらに向かって投げてきた。



 ショートソード言えど両刃で刃渡りは20cmはあるのに、それを投げるってなんか違くないか?



 体を横にひねって躱してから、俺は身体能力の値に10を代入し10xにしておく。だがーー



「剣を躱したからって油断はいけないなぁ!」



 俺の後ろにその上級生が笑みを浮かべて立っていた。手には逆手に握られたショートソードがあった。



「【シュタインズヘイト!!】」



 焦った俺は後ろに下がりながらすぐさま代入を開始、「10万KJ」「Q=10π立方センチメートル」



 いわば火球を作り出したような状態である。



「なんだいその魔法は!」



 驚いたような声をあげた。ほぼぜろ距離の攻撃を彼女は防げたのだろうか。



 そんなことを思ったのもつかの間。



 シュタインズヘイトの火球を割くようにしてあのショートソードが飛び出してくる。



「チィ……」



 これが飛んでくるということは、転送されていない。つまりまだ決定打を与えられていない事になる。



「あっぶなかったなぁ」



「また後ろ!?」



 再びこの上級生に後ろを取られてしまった。なんなんだこの先輩。動くの早すぎるでしょ、何事だよ。



「三度目はないよ?」



 手にしたショートソードを俺の右肩から侵入してくるように、上段から振り下ろしてきた。



「はや……」



 右肩を後ろに引きつつ、左足で距離を撮るように地面を蹴る。



 ジッと、何かがこすれたような音が聞こえたあと、サクッと突き刺さる音が聞こえた。



 ショートソードは、地面に突き刺さっていた。赤い液体が付着していないところから、どうやら回避に成功したらしい。



「うぅーん、早いね君」



 あなたの方が圧倒的に早いでしょうに……



 この人の早さは尋常じゃない。人間の脚力の上限をはるかに超えているんじゃないだろうか。目で残像すら捉えられないなんて。



「休んでいる暇はないよぉ!」



 先輩は、ショートソードを上段から下段、手首を返して横になぎ払い、切り上げ。それをいく度となく、軌道を変えて切りかかってくる。



 武器を持たない以上、後退しながら剣を躱すしかないだろう。



 しゃがんでからは、ロール、その後すぐに手で地面を跳ねながら後退。状態を無理やりひねったり逸らす。これ10倍でこんなに辛いなんて、早すぎる……



「君本当に早いねぇ」



 その声は何処と無く嬉しそうだった。



「先輩の方が異常なまでに早いですよ」



 こんな軽口を叩くのが精一杯だ。



 先輩の手が頭上に掲げられたところで、俺はその剣を持つ手の手首をつかんだ。



「ッ!?」



 ピンクの髪のゆらぎが止まった。



「【アトン・ブラスター】」



 掴んだ右手をよりきつく握りしめて、左手は先輩の腹部に向けた。



 陣が展開されるとようやく理解したのか、先輩の目が見開かれた。



「ランクがないってどういうこと!?」



 先輩はそういいながら手首のスナップ、否ほとんど指の力で、ショートソードを投げた。



 一体何をして……



 陣の発光がやみ、いよいよ発射というところだった。



 先輩姿が目の前から消えたのだ。



 は?いやまて、まだ打ってはいないから転送されたわけではないだろうが、一体。



 急遽アトン・ブラスターを取りやめてからあたりを見渡した。



「あっぶなかったぁ」



 その声はまたもや後ろからだった。



 なぜこんなに後ろを取られるのか、みたところ息が上がっている様子は見受けられないが……単なる移動の早さではないのか……



「それにしても、ランクがないなんてどう言うこと?なんでなんで?」



 依然として臨戦体制のままだが、先輩はそう訪ねてきた。



「わかりません」



「え?」



 すいません、俺にも分からないんです察してくださいよマジで。



「なんだ、それなら仕方がないね!」



 ちょうど、ね!の部分で手にしていた両刃のショートソードを俺に向かって投げてきた。



「危ない!?」



 くっそ、剣は投げるもんじゃないんだぞ畜生が。舐めてんのか、接近武器を舐めてんのかあんたは。



 今度は、右肩を狙っていたので、俺はしゃがみこんで回避、その間先輩から目線をそらさずじっと見つめていたのだが。



「もうそっちにはいないよ」



 ゾクリとした。肌が粟立って居るのがわかる。



 またしても後ろから。しかも、目の前からはいつの間にかいない、まばたきをしたつもりは無いが、本当にその間に移動したとしか考えられない。



「特待生もらい!」



 その掛け声と共に剣が振り下ろされる。ジャンプしたような体制のまま、ショートソードは左肩の方で掲げられていた。



 そこからの起動を予測してから、ふたたび呪文を口にする。



「シュードラNo.56【アクア・ショット】」



 シュードラとついているけど、これも数魔法だかで、擬似的に作り出したものだ。



 式が溶け込むのが早いのが特徴、つまり発動に時間を要さないのがありがたい。



 すぐさま細い水が、先輩の剣の腹にぶち当たる。



「そんな水如きが…っ!」



 先輩の顔が歪む。細いと言っても、人差し指くらいの太さはあり、圧力だって相当なものだ。何せ俺のアクア・ショットは自由に強さを変えられるんだからな。



 流石にこのまま粘るのもじり貧なのは目に見えている。



 俺はアクアショットを切ると同時に、右にローリング。振り下ろしてくる剣をスレスレで躱すと、すぐに次の術を展開する。



「【サンダー・ボルテックス】」



 久々に使ったなこの魔法。前回はイフリートとの時か。



 今回はすでにアクアショットで濡らしてあるから、ミナがいなくても十分にできそうだな。



 指を打ち鳴らしてからほとばしる閃光、目を見開いた先輩はガードの体制をとったがそれは間違いかな。



「うっぐぅぅ!」



 そんなか細い閃光だけで終わりだとでも思っていたのだろうか。後細工を済ませているに決まっているではないか。



 少し皮膚が焼かれたような。炎属性よりも火力は弱いが似通ったものがある。



 転移されていないということはまだダメージの余裕があるということだ。遠慮なく打たせてもらおうじゃないか。



「えい」



 しょっぼい掛け声とともに走り出した閃光着弾と主にいかずちを落とし、雷鳴をとどろかせる。



「ッ!あぁぁぁあ!!」



 背中をのけぞらせて、苦痛の表情を浮かべる。そして胸のペンダントが砕け散るのが見えた。



「ぺ、ペン……ダ、ント……が」



 マヒによるものか、ダメージによるものなのか分からないが、つまりながら苦しそうにそう言った。



 先輩の足元に緑色い光輝く魔法陣が展開されたこれが転送システムの元の魔法陣か。



 これを確認できたならもういいだろう、戦闘を繰り広げた場所いとどまっているのは危ないからすぐさま退散といこうか。



 ベクトルの翼を展開してと……



「クシャトリヤNo.17【レイニー・ライトニング】」



 すぐ後ろから別の声がした。



 この声の感じからして明らかに標的は俺だ!



 代入を開始して直ぐにその場から退散する。その直ぐ後に、名前の通り雨のように幾つもの雷が降り注いで、そこにあった草はなくなり、土はえぐられていた。



 威力高すぎるだろ……土を抉るほどの電圧計ってやばくないか?



 木の影に隠れて、そこからそっと雷が落ちた場所をにらむ。えぐられたことにより巻き上がった土煙で術者を確認できない。



 まずったな……



 どうにかして千里眼みたいな、詮索術が欲しい……でもそんなものは……



「クシャトリヤの18【クラッシュ・スパーク】」



 再び近い距離で声が聞こえ、目の前には球体があらわれた。



「ま、まずい!」



 目の前に現れた球体は、バチバチと音を立てていて、帯電してるのを示すように蒼白い閃光が走っていた。



 次の瞬間。代入をする間も無くその球体は爆散して、辺りに雷が撒き散らされた。



「うぐ……」



 爆発の威力により吹き飛び、腕には雷の特性である麻痺が若干感じられた。



 幸いにもペンダントは割れていない。直ぐに翼を展開してから、上空に逃げる。しかしーー



「クシャトリヤNo.25【ファンネル・ライトニング】」



 なんだか、すごいいやなたんごがきこえたのはきのせいだろうか。某機動戦士に出てくるような名前だったような気がしなくもないが。



 と、思っていたのもつかの間、俺の目の前に突如展開された黄色く光る魔方陣。慌ててブレーキをかけて、そこから離れるようにして飛び去る。



「あれぇ?」



 しかし、再び目の前に同じような魔法陣が展開されていた。



 それに、よく周りを見渡してみると同じような魔法陣が7個展開されているではないか。なんだよこれ……



 つまり、上級の魔法を無詠唱で同時に7個も展開したってことか?んなバカな……これ確実に向こうも特待生のレベルだろ。



「散れ」



 と、何処からか冷酷な声が聞こえてきた。それが攻撃の合図だと受け取り、俺も魔法をつかう。



「【視界】回避確立表示!」



 こっからは確立に挑んで行こうか。



 魔法陣から次々と吐き出されて来る雷の魔法は、確実に俺を狙ってきていた。



 その雷を見つめると、空いたスペースに回避可能な確率が表示される。1と表示されているところが見られる限り、ウォルフさんよりは楽に躱せそうだが、何分速さが圧倒的に早い。反射神経も重要だ。



 身体能力を引き上げたおかげで、動体視力もあがり、それに体もついてきてくれているおかげで、回避確率1の場所にたどり着き、次の会費場所を探す。



 どうやら7個の魔法陣で囲まれているらしい。それに使い方がうまいのか、なかなか魔法陣の包囲網から抜け出せない。



 魔法陣を直接壊そうか……しかしそんな技術は無いし……あ、いいこと思いついた。



「【ドレイン・シールド】」



 周りから大量に迫ってきた雷をドレインシールドに当てる。その際に引き起こる爆発は目くらましには使えるだろう。



 うわ、一発に魔力1万も込めてるとか馬鹿かこんなんすぐに無くなるぞ……



 着弾してから、敵の攻撃はやんだようで、追撃は無かった。



 倒したとは思っていないだろうから、おそらく様子見というところか、まぁそれは好都合だ。



「【ボルケーノ・パレード】」



 ドレインシールドを解除して、吸収した魔力に俺の魔力を上乗せさせる。



 現れている式は「V=π2^2・5[m]」「K=5000」「t=x」このtは時間ではなく回数の意味のtである。



 式は溶け込んで行くといよいよ魔法が発動する。初めて森の中で使うが、まぁ大丈夫だろ……たぶん



 地面には幾つもの赤い魔法陣が展開された。xに代入する数をどんどん増やしているからだ。



 そして、その魔法陣の中心から勢い良く吹き出したのはマグマ。



 吹き上がったマグマは雨のように降り注いで地面を焼いて行く。これ地上にいたら使えないな……出番少ないわきっと。

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