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数学オタクが転生します  作者: 二毛作
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嵐と嵐のΔt(あいだ2

 エレナは俺の言葉にクスクスと笑い声を洩らす。ミナならばここでさらに罵倒が来ることだろう。



「まぁ、そうだな別にこのままでもいいか」



 と言ったのだがエレナは立ち上がって。



「いややっぱり着替えようかユズキくん」



 と気目顔で言いのけた。それゆえにしばらくの間、ポカーンとしてしまった。



「い、いや俺は別にどっちでもいいんだが……」



「じゃあ、着替えに行きますよ!ほらささっとする!!」



 人が変ったようにせかすエレナ一体この変りようは何なんだ。二重人格なのか?



 エレナに腕を引っ張られて、立ち上がり、引きずるようにして出口へと向かう。



「転移しないのか?」



 俺がそう聞くと、エレナは笑顔でこちらを振り向いた。



「うん、久しぶりに歩くのもいいものだよ?」



 そんなことを言っているが、つまり歩けということだ。戦闘で疲れがあるんだがなぁ、まぁいいか。



「それじゃあのんびり歩きますか」



 なんだか久しぶりに長い距離を歩く。こっちに来てからはずっと転移やら、ベクトルの翼やらで歩くことをしなかったからな。



 ギルドから出ると、日の光はほんの少し赤みがかっていた、もうそろそろ小学生は帰宅する時間だろうな。



「それにしてもユズキ君が二つ名持ちかぁ、なんか遅かったね」



「そうか?俺としては早すぎると思うそ」



 ここに来てから俺はまだ半年も経っていないのではない。何というか、数学ができてよかったと思ってる。



「私はウォルフさん倒した時点で、帝以上は確実だったよ」



 確かに、俺は帝であるウォルフさんとの闘いに勝った。傍からみればそう思うだろう。だが実際はウォルフさんの意識に数値を代入しただけなのだ。



 実力か、と聞かれてしまえば絶対にそうでは無いだろう。それにあの方法、あれ以来他人に干渉する魔法が使えなくなったのだ。ポヘや、DXスライサーは別だが。



 それに魔力量Mは2兆で固定されてしまった。



 今の俺はこの世界の理に干渉する事は無く。ただ自分の能力やこの世界での魔法の範囲でしか干渉する事が出来ない。



 何故か、前よりも劣化したのだ。雷を落とそうにも、はじめの頃みたいにはいかずに、赤く光だし式が飛び散るのだ。



 一体いつからだ……



「ユズキくん?」



「んあ?」



 どうやら考え事に夢中になっていたようで、エレナが心配そうな顔をしていた。



 えっと、何の話だったか……あ、ウォルフさん倒した辺りの話だ。



「確かにそうだが、戦闘技術はない。ただ魔法を使っただけだからな」



 剣術とか体術はこの世界では人並み以下だろう。



「不思議だよね、こんなに魔法使えるのに、太刀筋はまるで素人だもん」



「ウッ……」



 分かっていたことだが、改めて言われてしまうとグサリと、心に突き刺さるものがある。



「だろ?だから今ですらこのケルブランクは見合わないんだよ」



 それにエデンランクだなんてもっと見合わない。他のエデンランク所持者からしたら笑われものだ。



「もー、そうやって自分を卑下して……」



「卑下じゃない、事実だ」



 エルナは怒ったような、呆れたような表情で言ったが。あなたが過大評価してるだけです。



「そういやエレナは昇格試験は受けないのか?」



 というかエレナはいつからスローネランクなのだろう、俺が来たときはすでにスローネだからそこそこ時間は経っていると思うんだけど。



「うーん受けたいのは山々なんだよね、もうスローネになってから半年は経つし」



 意外と速くのうちからスローネランクをとっていたんだな。まぁ上級の詠唱破棄が出来るなら納得もいくが。



 エレナはそこで「でもね」と話を続ける。



「私なんか今スランプなのかな、最近魔力量も伸びないし、魔法の威力も増えないし」



 エレナはそう言いながら少し落ち込んだ顔をしていた。



 こっちの世界にもスランプとかあるんだん、努力すれば力がつくRPGとはやっぱり違うのな。



「そっか……」



 こういうときになんて言えばいいんだろう、生憎なことに俺には対処法がわからん。



「一緒に修行やるか?」



 そんな俺だったが、無意識のうちにそんなことを口走っていた。



 え、何いってんの俺?



「ユズキ君と?」



 エレナは訝しげに眉を顰めた。あれ、そんな反応されるなんて思ってもみなかった。



「い、いやだ?」



 俺がそう聞くとエレナは困ったような顔をしていった。



「別にいやってわけじゃないけど……」



 そんなことを言っていた、じゃあなぜなんだ。



「ユズキ君数魔法しか使ってないし、剣術とかも、その数魔法のお陰じゃん?」



「グハッ!!」




 ま、まさか、エレナからそんな図星を的確に突いて来るだなんて。



 た確かにその通りだ、さっきも言われたが太刀筋は素人丸出し。魔法だって数魔法に使ったことある魔法なんてないんじゃないか?



「ね、だからむしろ私が太刀筋とか教える立場になりそうな気がするというか」



 苦笑いのまま、エレナはそんなことを言った。実にその通りであります。



「……はい、その通りでございます」



「ご、ごめんね、そんな責めるつもりじゃなくて……」



「うん、わかってるよ」



 わかってるけど何だろう、すごく悲しいよ、どうしてだろう。



「そ、そうだユズキ君やろうよ修行」



 エレナが焦ったようにそんなことを言った、自分がみじめだ。



「いや、俺はクエスト受けておくよ、うん」



「ゆ、ユズキ君がダークサイドに落ちた」



 いえ、落ちてません、ただ少し心にダメージを負っただけですから。



「まぁ、俺はどこかで魔物狩って戦闘スキル鍛えるから」



 俺はどこかで意地になっているのかもしれないがそれが今は一番だろう。



「そ、そう?」



 エレナが顔色を窺うように聞いてくる。



「ああ、だから俺のことは心配しなくても大丈夫だ」



 きっちり笑えていたかはわからないが、とりあえず笑顔でエレナにそう答える。これでイケメンだったらフラグが建つんだがなぁ。



 そのままあつき続けていると、オリーブオイルを購入した市場につながる噴水のある広場に出た。



「おお、エレナがメイド服に大変身した場所じゃない、グッホ!」



「誰のせいよ、誰の!」



 エレナからの完璧なアッパーカットを腹部にもろに喰らった。こ、これが戦闘スキルの違いなのか……



「ゲホッゲホッ!!サーセン……」



「よろしい」



 エレナはそう言って拳を作っていた手で髪の毛をなでる。うむ、勝者の余裕か。



 ここから学園には行くのはさほど時間はかからない、ゆっくり歩いても10分ほどだろう。



「だけどあれはエレナが用事を忘れてるからいけないんだぞ」



「だとしても、もう少し他のやり方があるでしょ!」



 エレナはプンスカと怒り出す、いや俺は悪くないぞ!!



「他の?バニーガールとか?」



「なんでそっちなの!?頭の中にはコスプレしかないの!?」



 エレナのがツッコミ役に回るのは久しぶりではないだろうか。



「ないな」



「断言しちゃった!!」



 エレナのソプラノボイスが石畳やレンガの建物に反響して聞こえる。



「エレナ、もう一度メイド行こうか」



「どうしてそうなったの!?」



「なんだったらスク水でも」



「ユズキ君キャラが崩壊気味だよ!!」



 おと、危ない危ない。危うくただのセクハラ紛いの変態になるところだった。



 噴水を通り過ぎた所に、≪アラドラス魔法学園≫と書かれた標識が立っている方へ向かって歩く。



「そういえば、エレナってよく光属性の魔法とか使うけど、他の属性は使わないのか?」



 一般的に自分の扱いやすい属性は生まれる時から決まっている。だが他の属性が使えないということではない。



「うん、他の鍛えるくらいなら、主属性を極めたほうがいいかなって」



 なるほど、こういう考えもあるようだ。確かにわざわざ扱いにくい属性を無理に扱う必要はない。



「それを言うなら、ユズキ君も使わないよね」



 エレナがそう切り返してきた。



「いや、使えるには使えるぞ?」



「え?そうだったの?」



 驚いた!と言わんばかりに目を見開いて、さらにすごい勢いでこちらをみる。



「まぁ、一応な。、数魔法よりは魔力消費でかいから抑えているけど」



 馬鹿みたいに魔力消費が激しいのだ。ただ、それを数魔法で表わしたらそちらのほうが効率的だから使っているだけなのだ。



「うん魔力消費量も激しくて威力もないもん」



 なんだかこれなら自分の得意分野を伸ばしていった方が効率的な寄付がする。



「だから、数魔法で作り出してる」



 そういったとたんにエレナの目が絶対零度の目に変わる。あれ、なんか変なこと言った?



「何それずるい」



 と、エレナは唇を尖らせて不満を口にする。それは俺も思うことだから。



「ずるくない、俺の魔法だから」



 胸を張って言うと、エレナはより一層口を窄めたような感じになった。



「いいなぁ、私も数魔法使いたいなぁ」



 思うんだが、数魔法使えても、数学の発展していないこの世界じゃほとんど役に立たないと思うぞ。



 なんてことは心の中だけにしておいて。


「エレナはいつごろから、上級魔法の詠唱破棄がつけるようになったんだ?」



 俺がそう訊くとエレナはあごに手をやって考え始めた。



「ちょうど、私がスローネの昇格試験を受ける直前くらいかな。それが出来るようになったから、昇格試験を受けたの」



「へぇ、前々から優秀だったんだな」



「ユズキ君に言われても嫌味としか取れないよ」



「ええ……」



 なんだかそれは地味に傷つくぞ、俺がほめても嫌味と以下受け取ってもらえないのかよ。



 だが、エレナは「フフッ」と短く笑った。それから言葉を紡ぐ。



「冗談冗談、ありがと」



 またしてもエレナの特徴である笑顔と共に言った。初めからそう言えよ。



 アラドラス魔法学校という看板が建てられた通路に入り、そこの道なり沿って数分。巨大な校舎が、その突き当たりあたりに見えてくる。



 かなりの大きさを誇る学校の大きさを改めて思い知らされる。周りの建物と比べては申し訳なくなるほどだ。



「見えてきたな」



 やがて、校庭の全貌が見えてきた。校舎に繋がる一本道、そこから別れて寮へと向かう。



「それじゃあ、帰りは転移魔法陣を使うから、魔法陣前に集合」



 エレナは寮の前にたどり着くと、振り返ってそう言った。



「はいよ、了解」



「じゃ、後でね!」



 エレナは手を降りながら寮の中へ走って行く。相変わらず元気で笑顔は健在だな。



「おんや!ユズキじゃねぇか!おーい!!」



 この元気な声、そしてこのお調子者のような話し方は、あの炎の使いてであり、赤いツンツンとした髪が特徴の人物だろう。



「おう、ナブラ」



 やはりナブラ・アトレッドだ。



「いま帰りか!?」



 やはり彼の話し方には、文字で表すには必ず語尾に「!」がつきそうな話し方だ。



「まぁな、これからまた出かけるんだが」



「そうか!忙しいんだな!」



 ニカッと、好青年がするような、好感の得られる笑顔でそう言った。



「ナブラはなにしてるんだ?」



「おう、今からエイトとちょっと作戦会議だ!」



 エイト……っていうと、あれかあの、怪しげな会話。



 ま、まさかこいつらそういう関係じゃないよな?違うよな?



 俺はそう思いながらも、ナブラの両肩に手をおいて、吐き捨てるようにして言った。



「お前達がどんな性癖を持っていようが、俺は軽蔑なんかしないからなぁぁぁぁぁ!!」



 俺はその言葉と共に走って寮の中へ入った。



「な、なにいってんだ、あいつ……」



 残されたナブラの貴重な、語尾に「!」がつかない話し方を聞き逃した。



 本日二度目の自室に入るときは、激しく息が上がっていた。まぁ身体強化もなしに全力で走ったから無理もない。



「はぁ、はぁなんであんなこと言ったんだろ俺」



 自分でも理解不能な行動に、俺は疑問を投げかけるが、とうぜんながら答えるやつはいない。



「さっさと、準備でもしよう」



 俺はクローゼットの中にDXスライサーをしまい、つ受けていた防具も外す。



「ふくなんてそんなに無いんだけどなぁ」



 と思いながらも、適当に服を引っ張り出してから、俺はシャワーを浴びようと備え付けの風呂場に向かう。



 その時だった。



「我が主様、すまぬがちょいときてくれ」



 いきなり現れた、イケメン状態のポヘが俺の腕を掴んでいた。



「は?いきなり何言って」



「【微分】」



 俺の言葉に被せて、ポヘが唱えた瞬間、俺の体を取り囲むように黄色く光り輝く「F→F'」の文字たち。



「おい、お前何して!」



「すまぬだが許してくれ」



 初めて見るポヘの真剣な表情に、俺の言うはずだった言葉たちが寸前で帰省し始める。



 やがて首元までその大量の文字たちが埋め尽くしていき、やがて意識は暗転していく。



――――――

――――

――



――――――

――――

――


「……の…ど……ある……じさま…」



 覚醒しかけてる意識に誰かの声が聞こえてくる、だが瞼が鉛のように重くて開いてくれない。



「主様よ!」



 そのッ声とともに体が大きく湯らせれる。それがスイッチだったかの様に俺の意識は覚醒する。



「ぽ、ポヘか」



 目の前には、イケメンモードのポヘが俺を見下ろしていた。



「すまぬ我が主様。少し焦っておったのだ」



「あ、あぁそうなのか」



 実際、そんなことは何も気にしていなかったがな。それよりもだ。



「ここはどこなんだ?」



 俺の周りには何一つ色がなく。転生前に神に呼び出された場所のような感じだ。



「ここには主様は一度きていると、聞いているぞ」



「ここに?いやそんな事は」



「あるだろう?」



 俺の言葉につなげるように、俺でも、ポヘでもない誰かが声を発した。



 振り返ると。、そこに立っていたのは全身黒のまるで、バーローの犯人のような見た目の人物がそこにいた。



「犯人はお前だ!!」



「俺は殺人はしていない」



 ふむ、どうやらこのネタは通じるようだな。



「時にお前は誰だ」



 というかこんなやつに名前はあるのだろうか、見た目だけじゃ何なのかわからないぞ?



「俺の名前は真黒黒介まっくろくろすけだ」



「ジブリイィィィィ!!」



 明らかにパクリじゃねぇか、偽名じゃねぇか!



「じゃあ他に何と名乗れば?」



 その真黒黒介はあごに手をやり首をかしげた。何気に腹筋が六つに割れてる。



秋人シュージンとかはどうかの?」



「はいアウトォォォ!」



 お前ら危ないよ!!著作権ていうものが世の中にはあるんだよ!



「もういいよ名前は」



 こいつらに任せておくといつしか本当にまずいことになりそうだ。



 今でも名前で案を出し合っているポヘと犯人。勝手にもうやめろ、名前は犯人で通すから。



「じゃあ好きに呼んでくれ」



 犯人が少し落ち込んだ感じでそういった。もうお前は犯人と名付けられた、この俺に。ネーミングセンスが無いのは放っておけ。



「じゃあ、話を進めようか」



 ポヘが忙しなく羽をはばたかせて、空中でほ場リングしている。犯人とポヘはそろって俺のほうを見つめてきた。



「マアトが動いた」



 マアト?なんだか訊き覚えがあるような無いような。



 首をかしげて、難しそうな顔をした俺の心象を悟ってか、犯人が続けて説明してくれた。



「おまえ、一回この写像世界に来たことがあるだろ?」



 たしか、カリスの幻術を破るために、y座標にiをかけて写像世界に飛ばされたんだった。



 ということはここは写像世界なのか?



 俺は新たに微かな疑問が生まれたが、縦に二回首を振った。



「その時の神殿、祀っていたのはマアトだと言ったのは覚えているか?」



 あぁ、その時に聞いたのか。



「で?マアトが動いたから何なんだ?」



 俺がそうい質問すると、、またも犯人が説明してくれる。優しい奴だ。



「マアトは真理と調和の神だ、それが動き出したってことは、恐らく神の断りから外れたやつを見つけたか」



 そこで犯人は「あるいは」といい、そこで口を閉ざした。続きは何なんだ。WEBでとかは無しな。

リアル事情により


今後もしかすると週一更新にして

ジャンプ的感覚で呼んでもらうことになるかもしれません

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