そのi(ウソ)を見抜け2
「学園か……」
ありがちだが、全寮制と言うのは嬉しい、別に特待生で無くてもいいから寮に入りたい。
授業を受けるか受けないかは別としてだ。
「ならば、私が手配しよう。アラドラス魔法学園の理事長は私の旧友でな」
やっぱり凄い人の友達は凄い人なんだな。これ法則化出来そうな気がする。
「じゃあ……よろしくお願いします」
「あぁ、任せてくれ。フレイヤ、ピタゴラスにギルガリオンの報酬渡してあげて」
あ!すっかり忘れていた!俺、ギルガリオン倒したから金もらえるんだ!
まぁ、これで今日は宿を探すとしよう。
「うーんと、ギルガリオンだから……アルビレオさんと半分ってことになるのかな?」
「あれ?元パーティーの人達には?」
確かエレナは他のパーティーメンバーが居てはぐれてしまったはず。
「あの人達は依頼失敗ってなるわ、だから二人にだから、一人12万3000Jね」
フレイヤさんは、カードに振り込んでおくから、と行って測定した部屋、つまりカウンターの奥の部屋から出て行った。
因みにJとはこの世界の共通通貨のことで1J=1円だ。
間違ってもジュールとは読まないでくれ、熱量でも電力量でもないからな。
カードに振り込んでもらい、そのギルドカードを受け取ってから俺はギルドを後にした。
エレナと一緒にギルドに帰還したのが6時頃、今出たのが8時頃早く飯を食いたいのだが宿に行けば食えるだろう。
「さてさて……」
夜空に浮かんでいる光達。このベアトリアから見える星は地球とはまったく違っているようだ。
赤、青、黄色、緑と様々な色をして居て地球よりも遥かに美しく見えた。
そして、月の代わりに見える超巨大な惑星。肉眼で見る限り色は幻想的な瑠璃色をしていて、クレーターまで肉眼ではっきり捉えることができる。
これだけの距離が近くて互いに重力で引きつけられていないのは何とも不思議である。
もしかしたらあの星は物凄く距離があるけど物凄く巨大なのかもしれない。
そういえば、ベアトリアには星座と言う概念は有るんだろうか……
まぁ、そんなことはさて置き。
目の前に現れたのは煉瓦造りの民宿。
ちょうどいいや、ここにしよう。
俺はそう思い、煉瓦造りの建物にしてはすこしミスマッチのような、木製のドアを引いた。
鈴のなる音と、共にアルトボイスの声がやってきた。
「ご宿泊ですか?」
「はい」
お店のおくから長い赤髪をお団子ヘアにして、メイド服の様なものをきた人がやってきた。
「一泊2000Jになります」
これってギルドカードで払えるのかな?
「あの、これで」
「はい、承りました」
彼女はカードを受け取ってから、お財布ケータイの受ける機械の様なものにあてがった。
「はい、確かに。お部屋は208号室です」
そういって、俺に魔方陣の書かれたトランプサイズのカードを渡してきた。
これが部屋の鍵なのか?
俺はそばにあった階段を登る。
「208、208と……ここか」
金の文字で208と書かれたプレート。その下には入り口と同じ様な作りの扉。
ドアノブのしたにはカードを入れる様な穴があった。
「ここにカードか?」
俺は渡されたカードを差し込む。
すると扉の奥のほうでロックの外れた音が聞こえてきた。
俺はドアノブを下げて扉を引く……。
どうやら押すタイプの様だ。
少し残念な気持ちを味わいつつ今度はドアを押す。
「ふぅ、やっと休める」
部屋の中は入り口の近くに扉があり、シャワールームへとつながっている。
そのまま奥に進むと右側にトルコ絨毯のような模様の絨毯、その上にはクリーム色のソファと、アジアンテイストなテーブル。
そして、左側にはダブルベッドが置かれていた。
「なんか……今日は密度が濃すぎる……」
転生させられて、ヘンテコなドラゴンと戦って、ギルドマスターと戦って。
一日がこれほど長く感じたのは初めてだ。
「あれ……何か……眠い……」
俺はベッドに倒れこむとフカフカのマットに意識を吸い取られていくように眠りについた。
『お主の命は尽きた、死にたくなければ儂の実験、仕事に付き合え』
『それはだめじゃ、生物の基本で有る死の法則に反する』
『つまり魂は同じ命と結合することはできないのだ』
そう言えば……神は実験と仕事に付き合えと言っていた。でも俺が聞いたのは仕事内容だけ。
実験の内容はなんにも聞いちゃいない。
それに、なぜここまで俺に似た体を作れた。
ーー神だから。
その一言につきそうだが、全く同じ、寧ろ違いが見当たらない。
それに、神の理から外れたと言う者。
なぜ外れることが出来た。
数学的矛盾だってある。
もしかして、神は俺になんらかの嘘をついているんじゃないか?
★☆★☆★
ビジネスホテルのような民宿に宿泊して早くも三日が経った。
それまでの間、俺は良く頑張ってきたと思う。
ウォルフさんからはしつこくランク上げのテストを受けないかと誘いを受けて、金を稼ぎにギルドに行けばウォルフさんが決闘を申し込む。
回避するのは容易ではなかったぞ。
だが、それだけじゃない。きちんと魔法について学んだし。火の属性や水の属性といった、自然属性の魔法をおれの魔法で発動できるようにもなった。
自然属性とは、火、水、土、雷、闇、光の基本属性と、炎、氷、木、紫電、暗黒、耀の派生属性を含めたものである。
地球での書物が無いために苦労したが、なんとかやっていけた。
だが、その反面、分からないことも増えていった。
俺の魔力の表示、あれは良く考えれば矛盾している。
数が有るはずなのに、器の中は常に空の状態なのは、数学的にも物理的にもあり得ない状態だ。
もしかしたら、φが表しているのは違うものなのかもしれない。
だからといって確かめる術はない。念話をしてみても神は答えないし、最終的には居留守を使う始末。
あんなのが神でいいのだろうか、否、良いはずがない。つまりここは神の座を俺に渡すべきなのだ。
そして、この女みたいな顔をバリバリなイケメンフェイスに変えてリア充になって、可愛い子とにゃんにゃ……おっと邪な考えが。
そんなある日の事、図書館にでも足を運ぼうかと思って荷物をまとめていた時の事で有る。
硬質な物体が叩かれる音、いや木のドアがノックされるあの心地良い音が響いた。
「どうぞ?」
誰だかわからないが一応そう返事しておくのがベスト。
あ、どなたか聞くのが先だったか。
「ユズキくーん」
その軽快な声と共にエレナがスキップしながら入ってきた。
今日の彼女の髪型はサイドテールだった。うーん、どちらかと言えばサイドアップの方がいいな。
「なんでここに居るって分かったんだよ」
「だって、ギルドから一番近くて比較的安い宿舎ならここかなって」
あらそうですか……
「で?用件は?」
「むっ、用件なしに来ちゃだめなの?」
何故か頬を膨らませたエレナ、何か気に障る事言ったか俺?
「いや……別にそうではないけど」
「まぁ、用件有るんだけどさ」
ずっこけない、ずっこけたらなんだか負けた気がするではないか。
「学園の編入試験、今日だってさ」
「へぇーそうなんだ、頑張れよ」
「何言ってるの?ユズキ君の試験だよ」
「あ、俺のか、いやぁうっかりしていたよ」
「うん、早く行こ!」
そう言ってエレナは俺の手を掴んだ。
まさにそれは音響のスイッチのように俺の喉を鳴らさせた。
「はぁぁぁぁ!?」
「ユズキ……君……うるさいよ」
エレナが片目を辛そうに閉じてそういった。
いや、今のは叫ばずにいられないだろ。
「いや、まてまて……俺はそんな事聞いてないぞ」
「そりゃそうだよ、今言ったんだもん」
エレナは何言ってんの?みたいな顔でこちらを見つめて来た。なんだよ、俺が悪いのか。
「その試験は今日じゃないとだめなの?」
「そりゃそうだよ、だってそうしないと早く学園に来れないでしょ?それにいつまでここにお世話になるの?」
確かに、いくらここの宿泊料が安いからと行っていつまでもいられるほど金が有るわけではない。
しかし、心準備や、俺の場合は数式の準備がまだ整っていないんだがな。
「まぁ……いいか、そしたら行こうか。ちょうど外に出るために用意はしてあったんだ」
「うんうん、そしたらレッツゴー!」
いやにテンションの高いエレナを先頭にして、俺は街へと向かって歩き出す。
もう三日間おなじカーディガンの服なんだが、どこかで服を買う事はできないだろうか。
「な、なぁ、エレナ……」
「うん?」
「あのさ……服買いに行きたいんだけど……」
俺がそう言うとエレナは顎に手を当てて考え込む。
しかし、一秒もしない間を挟んだあと。
「だめ」
二文字で却下された。
何でだよ、今にもこの服から異臭が放たれて居るというのに、お前はそれを気にせずに人の目に晒せというのか。
どこの悪魔だ貴方は。
「試験が終わったらわたしも買い物あるからその時ついでにね」
何故か子供をあやすような雰囲気だった。
「あれがアラドラス魔法学園だよ」
歩くこと十数分、俺の視界に飛び込んで来たのは、大学のような広大な土地の中にそびえ立つ、赤茶色の建物
その建物を指差してエレナはそう言った。つまりあの赤茶色の建物が校舎というわけか。
学園と言えばかの有名な魔法使いが通うお城だと思っていたが、やはりあれは物語の中だけか。
「広すぎないか?」
敷地内と外界を隔てる外壁があり、入り口には巨大な門。その門をくぐると一つのテーマパークが立つほどの敷地面積。
門から伸びた一直線の舗装された道、その距離は50mはありそうだ。
「校舎に旧校舎、寮が三つ。グラウンドは大小あわせて四つに体育館、講堂がそれぞれ二つ、それから植物園、これくらいの建物があるから、まぁ広いね」
なんだその無駄な施設の多さは、体育館と講堂が二つずつ?要らんだろそんなに。
というか、大小あわせてグラウンドが四つ?化け物かここの広さは。
なんとも固定資産税の額が聞きたくなる様な広さだが、この世界にそう言った税金は有るのだろうか。
なんか、昔の日本の様に年貢を収めていそうな雰囲気だが……
無駄な心配をしたりしていると、何時の間にか生徒用玄関に到着していた。
上靴と外履を履き替える、なんて文化はないらしい。土足のまま校舎内に入るとその中の豪華絢爛な装飾に驚かされる。
そとは日本の大学と変わりないのに、内側の装飾はまるで一流ホテルのようだった。
ギルドの中もそこそこ豪華な装飾だったが、こことは比べ物にならない。一体いくらかけてこんな建物を建てたんだ。
玄関から入ると目の前に飛びってくるのは巨大な階段。途中までは一本なのだが、踊り場に出ると左右に別れている。
その階段の前までは赤い絨毯が敷かれていて、その赤い絨毯が有る場所は吹き抜けとなっていた。
最上階である5階まで綺麗に吹き抜けている。
その吹き抜けの最終点には、巨大な魔法陣が描かれており、そして発動を表すように常に赤く光っていた。
「あれはね、結界魔法の魔法陣の一部なんだよ」
俺が上をみあげていると、エレナは隣に並んでその魔法陣を指差した。
「結界魔法?」
「うん、なんの結界かは分からないんだけどね」
本当に結界魔法なのだろうか……
エレナ階段を登って踊り場につくと左側の階段を登り始めた。
俺もエレナの後を追って左側に折れる。
その時である、俺たちの向かった方向と逆側に緑の双眸の男がいた。
その双眸は濁りに濁り、光という光を見受けられないようにみえた。
「どうしたの?」
エレナに呼ばれて、一度そいつから視線をそらす。
すぐさま元に視線を戻すがーー既にいなくなっていた。
「…………いや、なんでもないよ」
俺はエレナの後を追った。
二階に上がりきると、エレナは右に折れた。そのすぐ右手に職員室と書かれたプレートを発見した。
そして、その隣。職員室のプレートとおなじだ筆記体で書かれた理事長室の文字。
その、理事長室は他の教室とは全く異なり、高級感あふれる木目調のドアに、金のドアノブ。
なぜここまでするんだ……。
「失礼します」
エレナはドアを二回ノックして、そのベタな言葉を投げかける。
中からの返事は無くただただ無言であった。だがエレナはそれを了承と受け取り、ドアを押す。
「あら、アルビレオさん。ご機嫌いかが?」
中にいた人物、理事長と呼ばれるであろう人は紫色の長髪を素直に下ろし、それは腰あたりまで届いていた。
柔らかい笑みを浮かべて、エレナを見つめるその瞳は深いコバルトブルーであった。
「こんにちは理事長さん、例の編入生です」
エレナはそういいながら俺を見つめて来た。挨拶せよという事か。
「始めまして理事長さん、えのも……ユズキ・ピタゴラスです」
「あらあら、礼儀正しい子。始めまして、私はアラドラス魔法学園の理事長している、ヘレニア・ラボラスです」
ラボラスさん言葉ともに腰を曲げて深々と俺に頭を下げて来た。
つられて俺も「よろしくお願いします」といいながら頭を下げてしまう。
俺より早く頭をあげていたラボラスさんは、俺が顔をあげるのを待っていたかのように、俺が顔をあげた瞬間に、その顔を近づけて来た。
「ふぅ~ん、なかなか可愛い顔しちゃって、顔レベルはA+といったところかしら」
その顔レベルはどこまで有るのか分からないがなんだかいい評価をもらった気がする。
はっ!もしかして転生でお馴染みのイケメンフェイスがついに俺にも!?
この無駄な思い込みは、後々俺を落胆させる要因の一つだ。
おっふ、間に合うのか10万文字
そういえば、ピタゴラスも頑張って更新するんでみてください
あと、こっちとは別にもう一個メインでこ連載する予定の作品があるんで
そちら公開したらどうか読んでやってください




