バイオ
金遣いと言えば、友人Iもすごかった。
Iはシスプリにハマった時期があり、原画展にも行ったそうだ。
作品単体なのか複数なのか、詳細はわからないけれど、その場で原画を2枚購入した。
しかし、その為の貯金もなく、手持ちもなかったIは、お地蔵さんから借りて払ったらしい。
即金で30万。
ゲームで身を滅ぼしかけた。
そのうち、父親にバレてボコボコにされ、実家への入金と借金返済にひぃひぃ言っていた。
利子は取られなかったそうなので、父親への返済は結果的には良かったんじゃないかと思う。
でも、やっぱり金に困って転売してた。
購入額の一割にも満たず、それでも現金が必要だったのか承諾していた。
そんなIが最もつぎ込んだのが、バイオハザードだ。
発売された頃、Iは定時制高校に進み、全日制の高校生が稼ぐより多いバイト代を手にしていた。
そのほとんどがバイオ関連に消えた。
ソフトそのものは一万円しないで買えるのだが、ゲーム内で使用された銃火器のモデルガンは違う。
エアガンが多かったが、ガスガンも数丁あり、一丁5万くらいしたらしい。
部屋の中でコルクボードを撃ち抜いたり、人のいない公園で空き缶を撃ったり等、人の迷惑は考えていたみたいだ。
何かイベントがあると言えば出かけて、安くはないジッポ等のグッズを買ってきた。
それらを含め、一番呆れたのがSSの購入だ。
PS版が発売されてからSS版が発売された。
後出しの分、ミニゲームが存在した。PS版にはなかった。
そう、そのミニゲームがやりたいが為に、IはSSから揃えたのだ。
「お前バカだろ、知ってたけど、バカだろ」
流石に、それはないわぁ、と思ったよ。
側にバイオ狂いがいた為、僕自身はあまりバイオをやっていない。
1はIのプレイを見せられたので、2をやり込んだ。ハンクのクリアは出来なかったけど、本編は回復なしでクリアはした。
そんなバイオに救われた高校3年生。
あまり社交的ではなく、ゲーム以外に趣味のなかった僕は、ぼっち寸前だった。
阪神がー、キンキがー、彼女がー……話についていくどころか内容もわからない。
2年生の時に体育の授業で一緒だった、クラスメートS。話掛けるならヤツしかいない。
友達の友達くらいだった、共通の知人Fを話題にコンタクト。
なんとか成功するものの、話題のストックなんぞ無い。
ダメ元で振る話題の中にバイオがあった。
Sも自分の立場《ぼっち予備軍》を危ぶんでいたのだろう。
話に乗ってきた。
しかし、ゲームの趣味が合わない。
この際、色々目を瞑ろう。
同じ話題が上がることは、むしろ当然。2をひたすら掘り下げる。限界なんて無い。設定だの、銃の実際のスペックだの、外の情報は一切なく、ゲーム内の情報だけで一学期を乗り切った。
まあ、嫌いな教師や各イベントの話題もあるにはあったけど…
そして、2学期。
楽しいバイオ談義が続く。ひたすらバイオ。
そんな中、救世主が現れた。
バイオ3。
Sはプレイしたらしいが、僕は購入さえしていない。
救世主は救世主になり損ねた。
いや、まだだ。まだ終われん!
Sを拝み倒して、3を借りてプレイ。
翌日から、3の話題が増えた。マルチエンディングだったので、攻略を教えてもらいつつ、話は弾む。
そのうち、受験が迫り、ゲームに費やす時間が減って行く。
完全攻略する前にソフトを返却し、追加情報はなくなった。
それでも続くよ、バイオハザード。
卒業式の最後の下校時さえ、バイオの話をして帰宅した。
バイオはぼっちを救う。