やんちゃんの授業中。
ぼーんやり、窓の外を眺める。
すっかり緑色になった桜の木を見ては、溜め息。
ゆう君、今はきっと英語の時間。昨日教えたところ、ちゃんと解けただろうか。
「…ぉい、おい、村山!」
誰かの声に、不機嫌に耳を傾けると、数学の田中先生が私に問題を掛けていたようである。
波風を立てないよう、下手から出て話をする。
前、無視を続けていたら、先生に泣かれて面倒だったからだ。
「すみません先生、ぼんやりしていて、聞いてませんでした」
素直に謝った。
ゆう君、褒めてくれるかな。
「まぁいいから、とりあえず、これ解きなさい。
君なら直ぐ分かるような問題だから」
黒板を見た。確かに、これなら黒板に文章を書きながら解ける。
黒板まで歩き、既に黒板の前に居る他の生徒の隣に立って、問題を解く。
後ろで囁かれることは、どうせ嫌味だろう。ここは無視が一番である。
解き終わり、ふと右隣を見ると、佐々木さんの手が止まっていた。しかも、結構序盤。
ゆう君はきっと人を助ける人の方が好きだよね?
佐々木さんの解く問題の下に、使う公式と何を代入したら良いかを書くと、佐々木さんがびっくりした顔をしたのがちょっと可笑しくて、思わず笑った。
余計なお世話かな、と思ったけど、手が動き出したので良かったと思った。
席に戻ると田中先生が問題の解説を始めたけど、私の頭の中はもう、ゆう君が褒めてくれる図しか浮かばなかった。
学校に居る時は、朝と昼休みと放課後しか会わない約束。
寂しい…けど、私なりの束縛緩和策。
まあ、「早く放課後にならないかな」とか考えている時点で、意味が無い気もするけど。