やんちゃんの朝~始業前。
ゆう君の支度が終わると、腕を組んで登校。
今日のゆう君はまだ寝癖が残っていて、靴下はオレンジ、ハンカチはお気に入りのあの水色。いつも通りでちょっと安心。
そんなことを考えながら、歩幅を合わせてゆっくり歩く。
今はまだ8時より前なので、ゆっくり歩いても遅刻にならないのです。
「今日は、昨日のゆう君より好きだよ」
私がどんなに重い愛を送ったとしても、ちゃんと応えてくれる、ゆう君。
「ありがとう、雛。
俺も、雛のこと、昨日より愛してる」
でも、些細な会話が、私の耳に留まる。
「…じゃあ、昨日の私は、今日より愛されてないの?」
「それは違うよ。昨日の最高より、今日の最高が上回っただけだよ」
ぴしゃりと言ったゆう君が、真剣で凄く格好いい…
「…ゆう君、大好き」
「俺もs」
「おはよーバカップル」
…ちっ、ゆう君の言葉が最後まで聞こえなかった。
「おはよう、高田」
不機嫌に挨拶。
「おはよう、村山さん。今日も言葉が尖っているよ」
分かって貰えたようで良かったかしら。
「当たり前でしょう、高田がゆう君の私への愛の告白を遮ったのだから」
こういうことを言うから重い愛だと言われることは自覚済み。だけど、本心なんだもの、仕方ない。
「いいじゃん、お前らのそのやりとり、終わりが見えねーんだもん。
それよりハルカ、昨日のドラマ見た?」
私の話をさらりと受け流す辺り、ちょっとだけ感謝していることは内緒。
「あぁ、見たよー
主演の人、、、アイカワさんだっけ?結構美人だったね」
え、ゆう君?
「だろ?」
なんでそんなこといっちゃうの?
「物語はまぁまぁ良かったと思うし、それに…」
ゆう君がドラマの感想を言ってる、聞かなきゃ、でも、なんでそんなこと言って、なんで、なんで、なんで、
「で、今回のドラマは最後まで飽きずに見れそうか?」
高田が、飽きっぽいゆう君に聞く。
そこは、私としても気になる。
昨日もテレビの前から動かなかったし、さっきの言葉もそうだし、ゆう君、どうなの、と目で訴えてみる。
ゆう君は視線に気づかず答える。
「うーん…来週には忘れてそう」
「えー?そうかぁ、これもだめかぁ…」
高田、ご愁傷様w
「…あ!僕、今日中村先生に用事あったんだ!
先に行ってるな、バカップル!」
邪魔者が捌けたところで、ゆう君に、さっきのことを聞かないと!
「あの、ゆう君?」
「なぁに?雛」
「さっきの、アイカワさんが美人って…どういうこと?」
「思った通りだよ?まぁ、雛の可愛さには遠く及ばないんだけどね!」
ふんわりした笑顔のゆう君。
…良かったぁ。
「…それなら良いの」
「…もしかして、嫉妬してくれた?
もう、雛は可愛いなぁ」
私が嫉妬する度に、ゆう君は嫌がらずに言ってくれる。
えへ、幸せ。
「ゆう君は、勿論誰より格好いいよ?」
「ありがとう」
あぁ、学校に着いちゃった。
残念なことにクラスの違う私達は、下駄箱の前でお別れ。
「じゃぁ、また、昼休みね」
「うん、雛も勉強頑張って、ね」
真反対の教室に向かう時に振り返っても、ゆう君と目線が合うことは無い。
こういう時、ちょっとだけ悲しい、朝。