ロボット太郎とミチコちゃん
今作はひらがな多めとなっています。
また、若干一部、普通は読まない漢字の読みをしています。
ある村に大きなロボットのロボット太郎が すんでいました。
ロボット太郎はいつもみんなと いっしょに笑っていましたし、みんなのえがおが大好きです。
山の上にすんでいる びょうきの人が山の下の びょういんにいきたいときは、その人をむねの中に入れて足のキャタピラで さかみちをおりておくってあげました。
とおくにすんでいる かぞくがいる人は、てがみやにもつをむねの中に入れて、せなかのジェットで空をとんでとどけてあげました。
ドリルをつかって、竹うまやコマ、竹とんぼをつくるのもとくいです。
こしが いたくて畑に出られない人がいれば、4本の腕に くわをもって、足とこしに力を入れて、汗をながして畑をたがやします。
がんばっているロボット太郎を、村にすんでいたミチコちゃんは、ロボット太郎が大好きでした。
ミチコちゃんは、畑をたがやして つかれたロボット太郎にオニギリをあげましたが、ロボット太郎は少しこまってしまいました。
「ゴメンね、ミチコちゃん。ボクはオニギリは食べられないんだ」
「どうして?」
「ボクは、おなかの中にウラン235っていうお弁当が入ってて、オニギリを食べなくてもがんばれるんだ」
「それっておいしいの? オニギリととりかえっこする?」
ロボット太郎は こまってしまいました。どういえばいいのか おしえてもらっていないのです。
「うーん、おいしくはないんじゃないかなァ…。ウランをミチコちゃんが食べるとおなかがいたくなっちゃうよ」
ミチコちゃんはロボット太郎のいっていることがよくわかりませんでしたが、おいしいオニギリを食べられなくてもがんばってくれるロボット太郎が大好きでした。
でも、オニギリもみかんもウドンも食べられず、食べたらおなかがいたくなるお弁当でがんばっているロボット太郎のことがとてもかわいそうだともおもいました。
だいすきなロボット太郎がかわいそうで、ミチコちゃんは泣きだしてしまいました。
「泣かないでミチコちゃん。ボクはみんなが笑ってるのが、いちばん好きなんだ」
「いちばんって、ウランより?」
「うん。ボクのために泣いてくれるミチコちゃんが笑ってくれるのがいちばんだよ」
ミチコちゃんは、泣くのをやめて、ロボット太郎にあげようとしていたオニギリをパクっ、と食べました。
「おいしいよ、オニギリ」
そういって笑うミチコちゃんを見て、ロボット太郎はおなかがいっぱいになったミチコちゃんと同じ気持ちになって、4本の腕でぎゅうっとだきしめました。
それは さんがつのある日でした。
きょうは、がっこうも いえのおてつだいもないので、きょうのミチコちゃんはおやすみです。
ちょうど ふゆがおわって、はるがはじまるころ。さくらはさいてないけど ふくじゅそう が さきはじめるきせつ。
ミチコちゃんは、山の上で、いちばんすきな おはなばたけでクルクルとまわります。
りゆうはないけれども、クルクルとまわります。まわっているあいだにクルクルまわるのが楽しくなってきました。
めが回る。それがたのしくて、はるがきたというかんじがして、またたのしくなって、また回ります。
そのときでした。いきなりじめんが ゆれました。
ずごごごごー ごごごごごー
さいしょ、ミチコちゃんは じぶんのめがまわっているせいかともおもいましたが、すぐにちがうとわかりました。
ゆれている。かんちがいじゃない。ぜったいにゆれているわ。
さいきんはじしんもおおかったのですが、そのなかでも はじめてのゆれです。ちかくの木がしなって、むしやきのみがバラバラとおちています。
すぐにとまるはず。じめんがとまるまでは じぶんもうごかない。
ぐごごごごごごご どどどどどどどっどっどっどっ
ミチコちゃんは、おかあさんにいわれたとおり、あたまをかかえてまもっていましたが、ゆれは100かぞえてもとまりません。
それでも、100かぞえたころには、ミチコちゃんはこわくなくなっていましたし、ふってくるえだやむしも あたらなくなりました。
「…だいじょうぶ? ミチコちゃん?」
そういって、ロボット太郎がミチコちゃんをたすけにきてくれたからです。
「これからすぐに村にもどろうね。みんながこまってるからさ」
いつもとおなじようにロボット太郎は、やさしくいいましたが、そのからだは、いつもよりもあつくなっていました。
「ロボット太郎、だいじょうぶ? かぜでもひいたの? ねつがあるよ?」
「原子炉をちょうせいしていたところでさ、ちょっと…ちょうしがよくないんだよ」
そういったロボット太郎の汗は、いつもとちがって、とてもくるしそうなものでした。
ふたりは足のキャタピラで村にもどりましたが、村につくころには、もう足のキャタピラからこげるような においとけむりが出ていました。
村につくと、いくつかの家がかたむいたり、かべがはがれたりしていました。
ロボット太郎はおうちから出られなくなったおばあちゃんを出すのにドリルをつかいましたが、こわすことになれていないロボット太郎はドリルをおってしまって、あとは4本の腕で、たすけつづけます。
じしんで、でんきやガス、すいどうも とまってしまったので、ロボット太郎はほかの村や町にいって、むねの中にはいるだけのたべものやガソリンを入れて はこびましたが、りょうが多くて なんかいもいったり、きたりしました。
がんばっているロボット太郎をみて、ミチコちゃんもがんばります。
ミチコちゃんの家も じしんでたながたおれたり、かべがわれたりしましたが、そのいえをがんばってかたづけます。
みんな、なんとかみんなを助けたころ、ロボット太郎は からだじゅうから、ゆげがたっていました。
もう4本の腕も、背中のジェットも、ドリルも、足のキャタピラも、うごきません。
いえをかたづけたミチコちゃんも、そんなロボット太郎をみて、とてもしんぱいそうです。
「だいじょうぶなの、ロボット太郎?」
「体をひやしきれないんだ、でも、だいじょうぶだよ。みんなが笑ってくれるなら」
そういって、ロボット太郎はだれもわらっていないことにきづきました。
しんぱいそうにしているミチコちゃんのほかにも、家をなくしていて、つらそうにしているひともいますが、おおくの大人のひとたちはロボット太郎にいつもとはちがったみかたをしていました。
「ロボット太郎くん、きみ原子炉はだいじょうぶなの? その…なにか、もれたり、していない?」
ミチコちゃんのお母さんは、ミチコちゃんをだきしめて、いいました。
ミチコちゃんはよくわかりませんでしたが、ロボット太郎が悲しそうな、どうしていいのかわからないような、今まで見たことのないかおをしています。
「いまはだいじょうぶだとおもいます」
「おもいますじゃ、こまるの。ぜったいにだいじょうぶなの?」
「ぜったいとは、いえません。ボクもじぶんのからだをぜんぶしっているわけじゃないし、しらべてくれる きかいも こわれてしまいました」
ミチコちゃんも、やっとわかりました。
お母さんは ロボット太郎のウラン235というお弁当が、外に出るのをこわがっていて、それでミチコちゃんのおなかがいたくなるのを こわがっている。
だから、つかれていて ウラン235をつかいこなせないロボット太郎を不安にみているんだ。
「だったらボクはねむります。 ボクはおきているだけで、体があつくなります。ねむっていれば、ウラン235をだしたりしません」
「じゃあ、なんじになったら、ロボット太郎はおきるの?」
お母さんがなにかをいうよりも早く ミチコちゃんがきくと、ロボット太郎は、がんばって笑いました。
「いつになるかは…ゴメンね、わからないんだ」
「どうして?」
「ボクの体をだれかがなおしてくれないといけないんだ。でも、もしかしたらウラン235があぶないってことになると、ぼくのしゅうりは、されないかもしれない」
ミチコちゃんは、いみがわかりませんでした。
みんなのためにがんばってきて、がんばってこわれたのに、そんなロボット太郎がどうして、なおしてもらえないのか。
「…もう、会えないの?」
「ボクのかわりに…こんどはきっと、みんなのおなかをいたくしない、ロボットががんばってくれるよ」
「でも、ロボット太郎は…ロボット太郎しかいないのに…」
「泣かないで。まえもいったけど、ボクのために泣いてくれるミチコちゃんが笑ってくれるのが…いちばん、ボクはうれしいな」
オニギリはない。ミチコちゃんは なみだをふきましたが、泣くのをがまんするだけで、わらえそうにありませんでした。
「…ゴメンね、きみを笑わせられなくて」
ロボット太郎は、そういって ねむりました。
「おかあさん、ロボット太郎をなおすなら、はいしゃさんかな? ほかの おいしゃさんかな?」
「かがくしゃさんだと…おもうけど、どうして?」
「わたし、大きくなったら…ロボット太郎を、なおしてあげる。それでわたしとロボット太郎、ふたりでみんなをえがおにするの。」
それをきいていたのかはわかりませんが、ロボット太郎のねがお は うっすらと笑っていました。
誰かの笑顔を護ることは自分が笑顔になるより難しい。そして自分自身の笑顔を護り続けることは、それよりも難しい。
はい、はじめましての人ははじめまして。久しぶりの人はお久しぶりです。
石ノ森章太郎と荒木飛呂彦の出身県で、東北楽天ゴールデンイーグルスの本拠地の宮城県出身を誇りに思う84gです。
今回は『冬童話2012』への参加と言うことで、かなり書き方に気を使っていますが、どうでしょう?
ひらがなの使い方は、幼少期の愛読書『エルマーのぼうけん』を読み直して研究。研究期間は2日ぐらい。
もちろん酷評から絶賛まで受付中。