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世界を影から動かす男  作者: じゃれにぁ


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2/2

世界を見てくる   第一歩はSOHOから

JFK空港に降り立った瞬間、甚八の頬を冷たい風が切った。1978年4月8日。巨大なターミナルのざわめきが、彼の鼓動をさらに速くする。

両替所の窓口で帯封の100万円が七千六百ドルに変わる。紙幣を受け取る手が、わずかに震えていた。


イエローキャブのドアが勢いよく閉まる。

「ここに行きたいんです」

メモを差し出すと、運転手は眉をひそめた。

「Why? …Why there?」

バックミラー越しの視線が不穏だ。


車はマンハッタンの中心を抜け、やがて荒れた倉庫街へと入っていく。鉄の鎖で閉ざされた門、落書きだらけの壁、風に舞うゴミ。


「…ここ?」

甚八は思わずつぶやいた。

木札に書かれた「→こっち」。その先に、白い外壁の建物がぽつんと明かりを灯していた。“office Chris” の文字が浮かぶ。

中をのぞき込んでいると、背後から突然声がした。


「君が甚八くんかい?」

日本語だった。

振り返ると、小柄な東洋人の男。その隣に、影のように立つ巨体。二メートルを超える毛むくじゃらの男が、無言でこちらを見下ろしていた。


「は、はい…」

東洋人の男は笑った。

「私は浜田春雄。こっちはディック。見た目は怖いが紳士だよ」


春雄は歩きながら続ける。

「君の就労ビザは、うちの会社の従業員として申請しておいた。ここが君の部屋だ。“Dawn of Art House”。新人アーティストが集まる場所さ」


シェアハウスの扉を開けると、薄暗いキッチンに “じんぱち君へ” と書かれた皿が置かれていた。

(母さんの知り合い…? どういう繋がりなんだ)

疑問が渦巻くが、疲れが勝った。シャワーを浴び、ソファに倒れ込むと、すぐに眠りに落ちた。


午前4時30分。

レストルームへ向かう途中、金髪の女性とすれ違う。目だけが異様に強い。

「ハーイ、あなた誰?」

言葉が出ない甚八を見て、彼女は “OK, OK” と笑って去った。


外に出ると、薄明の街に春雄とディックの影が伸びていた。

「おはよう、甚八くん。まずは朝食だ。ついてきなさい」

二人の背中を追いながら、甚八は胸の奥で何かが静かに動き始めるのを感じていた。


この街で、自分の人生が変わる。

そんな予感だけが、確かにあった。



画像が目に浮かぶようにに意識して書いてみました。ご意見ご感想お待ちしてます。

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