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第2話 久しぶりの再会

それから数十分後。


二人が居たのは巨大な庭園の中。


「……で、何でこんな所に?」


足首をさすりながら、彼は不満げに呟く。久しぶりの運動に足が悲鳴を上げていた。


「勿論、人に会う為だよ!……何処にいるかなぁ?」


当の本人はというと、スフレの様子を気にした風もなく、きょろきょろと辺りを見回していた。


ちなみに彼はパリッとした白のシャツに革のベスト、ベージュの麻で出来たズボンといったいでたちで、


頭にはチェック模様の入ったキャスケットを被っている。


アインに無理矢理着替えさせられたのだ。


なんだか彼女が来てから展開が目まぐるしい。巻き込まれる側からすれば、いい迷惑だった。


「……まさか、知らないで来たの?」


スフレの口調が刺々しいものに変わる。


何の考えもなしに行動してたのか、と呆れたのだ。


無色に近い彼の日常を一瞬にして変えた謎の少女。


一体何者なのか、と問いたいが、答えは多分帰ってこないだろう。


「いやー、大丈夫だよ?多分」


戸惑ったような彼女の声で彼は思考から引き戻された。


「……ほんとに?」


彼の目が訝しむように細められる。


「大丈夫大丈夫、何とかなるよ」


明らかに動揺した様子で目を逸らす彼女をスフレはじっ、と見つめる。


無言の訴えに彼女は成す術もなく、早く見つかりますようにと祈ることしか出来なかった。




「おや、アインじゃないか!それにそっちの子は?」


不意に、庭園の奥の方から男の人の声が聞こえてきた。


彼が探していた人物だろうか?


男は彼女の存在に気づくと、嬉しそうに寄ってくる。


程なくして全体像が見えた。


年は二十位だろうか、柔らかな色合いの薄手のセーターにスラックスという落ち着いた服


装がよく似合う優しそうな青年だ。


「あっ、居た!良かったー、記憶違いじゃなかったー」


彼女はホッと肩を下ろす。


「この子はスフレ。実はちょっと頼み事があってね。彼のことなんだけど……」


二人が話し合いを始めてしまったのでスフレは手持無沙汰になってしまい、時間潰しに庭


園の奥へ行ってみることにした。


視界の端に美味しそうな苺が実っているのを見つけたのである。


近寄ってみると実は赤く結構大きい。


「おーい、戻ってきてー!」


実をもいで口を開けて食べようとしたところで、アインから呼び出されてしまっ


た。


もうちょっとのところだったのに、と残念に思いながらも、すごすごと彼女たちの所へ向かう。


「初めまして、僕はユリーカ・グラスビー。この庭園の管理と運営をしているんだ、宜し


くね」


彼が手を差し出して握手を求めてきたので、スフレは戸惑いながらもおずおずとその手を


握る。


「残念だけど、僕は此処を離れるわけにはいかないんだ。この庭の面倒を見る必要があるからね」


言われて最初、何のことか分からなかったが、少ししてから、あぁ、仲間云々のことか、と思いだす。


正直スフレからしてみれば、会ったこともない人と一緒に試練を受ける、なんて展開はまっぴらごめんだ


ったから、丁度いいと言えば丁度いい。


しかし、言葉にするのは気が引ける。


結局、首を横に振って大丈夫の意を伝えるしかなかった。


「何より僕が出来るのは植物のお世話だけだしね」


「またまたー、有名な研究者の一人のくせにー」


アインがユリーカの肘をちょいちょい、と小突く。


彼女の反応にもいや、僕はまだまだだよなんて苦笑しながら言う辺り、真面目な人物の様だ。アインが彼を推したのも頷ける。


「僕よりすごい人はいっぱいいるよ。……そうだ、彼なら最適かもしれない」


ユリーカはちょっと待ってねと言うと、庭園を出て何処かへと行ってしまう。


戻ってくると手にはファイルがあった。


「エトランゼ、通称エティは研究者で、特に魔法においては彼の右に出る者は居ない、と言われている。


試練なら彼の方が適任だと思うけどね」


彼はパラパラとページを捲ると、手を止めて一枚の写真を指差す。


紫色のツーブロックに灰色の鋭い目が特徴的な人物だ。


スフレは見た瞬間、ユリーカと真逆だ、と感じた。


「……え?この人が?」


珍しくアインも戸惑っている。


声にははっきりと嫌悪の色が浮かんでいて、スフレは小さく笑ってしまった。


初めて二人の意見が一致したのが分かったのだ。


「……いや、確かに彼は少し気難しいけどね、悪い人ではないんだよ?」


すぐに事態に気づいたらしいユリーカはわたわたと説明を付け加えるが時すでに遅し。


スフレとアインの表情は苦いものになっていた。


「……えっと、ユリーカさん、でしたっけ。正直に言って、彼とは合わない気がします。本質的に違うというか」


スフレの有無を言わさぬ返答に流石のユリーカも言葉を失う。


アインもコクコクと頷いている所を見るに、割と素直なのかもしれない。


(だとしたらあのことも本当なのかな……?)


両親に会える、という台詞。


聞いた時は耳を疑ったが、あながち嘘でもないのでは。


彼の中の期待が少し膨らむ。


(……あまり期待しない方がいいか)



期待した分だけ、裏切られる時は辛いから。



「……まぁ、無理にとは言わないよ」


ユリーカは弱々しく微笑むとファイルを閉じる。


アインは折角紹介してくれたのにごめんね、と謝るとスフレと共に庭園を出た。



あれから一週間が経った。






仲間は、みつからない。


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