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プロローグ くろあしねこ

 親離れのときは、誰しも必ず訪れる。それぞれタイミングは違い、その形もさまざまだ。ときに早すぎることもあり、遅すぎることもある。気付くことも気付かないままに過ごしてゆくこともある。家族が二度と会えぬ彼方に離れ、孤独となることがそれに直結することもあれば、自力で食べていける成長がきっかけということもある。そうして新しい家族を自分で作ったとき、誰しも必ず、その家族とのわかれが約束される。

 我々は親離れの連鎖の中に生まれ、親離れの新たな鎖をつないでいくのだ。

 …彼が、強制的な、あまりに早すぎる親離れに遭った、小さな小さな命と出会ったとき、彼もまた孤独であった。


「いっしょに住むか? 」

「ワォ」

 南方アフリカの平原地帯に、クロアシネコという種類のヤマネコがいる。

 成猫しても小さい。

 これは、世界で最も小さい猫の一種である。

 成猫時で体重は2キロ前後、その細く長い尻尾まで入れても60センチ以下であるというから、日本猫でいう一歳齢の仔猫よりやや小さいくらいだ。


 このクロアシネコたちは、日本で馴染みのあるイエネコと違い、原種であるヤマネコの方に近縁である。

 そのため、白や黒や茶トラや三毛といった多彩な毛色を持たない。

 明るい褐色に黒い斑点柄のキジトラ猫を想像してもらえればいい。

 では、なぜそのキジトラ模様のネコの和名がクロアシネコというのだろうか。

 この種族のネコたちは、足の裏にもうひとつの特徴を持っている。

 ネコの肉球があるそれぞれの前後足のつま先から、「香箱」の形にすわったとき地面に接する足の裏…かかとから二の腕の毛皮が、すべて真っ黒であり、その特徴から和名をクロアシネコと云う…と言われる種族的特徴が、クロアシネコの名前のひとつ。


 もうひとつ剣呑ならぬ理由のひとつは、その獰猛さから黒足と言われるとされる。

 中国語では殺し屋のことを黒手組という。


 クロアシネコは、すなわち殺し屋の足を持つ猫である――と。

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