会議→緊急会議
「ーーお前、教室を飛び出したあとに何があったか、覚えてるか?」
月也くんの、静かな、それでいて張り詰めたところのある声が、生徒会室に響いた。
蓮くんは、渋くて苦々しい顔をしながら言った。
「…覚えてる」
月也くんが、目を見開く。
「本当か?」
何を、そこまで反応する必要があるのだろう。
そう思って、花恋は首を傾げる。
「…ああ。だが、俺が暴れていたときの記憶が全く無いんだ」
「「え…!?」」
わたしを含めみんなの声が、生徒会室に重なって響いた。
あんなに暴れていたのに、記憶がないの…!?
一体、どういうこと…!?
「月也からことの顛末は聞いた。けど、どういう風になってたかがよく分からんのだ…」
蓮くん自身も、戸惑いの表情をしていた。
「うぅ〜ん、動画なんて、撮ってないしねぇ〜」
「そうだよな、見せようがない。オレだって、さすがに撮ってねーし…」
「だな」
頭を抱えるみんな。
うーん、どうすれば…ーーあっ!
花恋の頭の中に、稲妻のように落ちて来たアイデア。
「あ、そっか。その手があったか」
ぽんと手を打つ仕草をする花恋を、みんなはぽかんとした表情で見つめる。
そして、花恋は突如として自身の腕時計に呼びかけた。
「ごめんルナ、モモイロ呼んでくれない?」
と。
その数秒後。
『承知しました』
という機械音声が流れた。
そしてその数分後ーー
『やっほ〜、花恋〜。ボクに何か用事〜?』
ーー明るい声と共に現れたのは薄桃色のフクロウだった。
「…フクロウ?」
「わぁあ〜、可愛いフクロウだねぇ〜」
「なんじゃ、こいつ!」
「このフクロウは…あの時の…」
クルクルと花恋の周りを飛ぶフクロウもといモモイロに、花恋は聞いた。
「ねえ、モモイロ。母に見せた動画、まだデータ残ってる?」
母に見せた動画。
つまり、蓮くんが暴れているときに、モモイロに撮ってもらった動画だ。
すると。
『もっちろーん!ボクの容量はすーーっごくおっきいから、まだとってあるよ〜!』
モモイロは誇らしげな表情をしながらさりげ自慢を披露した。
「それ、映し出してくれる?」
『お安い御用だよ〜』
花恋のお願いにお安い御用、と言い切ると、モモイロは目に内蔵されたカメラ・アイを使用して壁にプロジェクションマッピングを映し出した。
そこに映し出されていたものは、言ってしまえば『悲惨』の一言だった。
背中から腕やら触手やらを生やしながらあたりを破壊、爆破する蓮が、完璧に撮られていた。
そして、花恋が蓮くんを止めるところもしっかり写っていた。
「…最悪だな」
映像が終わったときにぽつりと言葉をこぼした蓮くん。
その顔には、いつもの自信や余裕はなく、暗い影があった。
「ーー悪い、みんな。今日は、帰るのが遅くなるぞ、全員」
突如として口を開いた月也くん。
その言葉に、わたしと月也くん以外が目を丸くする。
「それって、まさかーー」
いつになく真剣な口調の澪くんを遮って、月也くんがこう続けた。
「ああ。緊急会議だ」
ーー緊急会議という聞き慣れない単語が耳に入って来て、花恋は混乱して固まるのだったーー。




