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沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編 第十章【激戦Ⅲ】~ 逆鱗と哀惜 ~
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将と蘭子が辿り着いた瞬間、洞に響いたのは翠琉の悲痛な叫び声だった。


「しろ、がね!!!!しろがね!!嫌だッ……しろがねーーーー!!!」


パリパリと硝子の破片のように崩れていく白銀(しろがね)の身体を、繋ぎ止めるように、翠琉はきつく抱きしめるが、それは何も意味をなさず、その黒曜を思わせる瞳から涙がとめどなく零れ落ちる。


何が起こったのか、否が応でも理解せざるを得ない。


「酷いな……」


いつも余裕綽々な槃も、この状況は耐え難い様で顔を顰めている。


次の瞬間、殺気がすぐ隣で膨れ上がった。同時に、この惨状を作り出した諸悪の根源……梵天の名を叫びながら、緋岐が一気に仕掛けたのだった。


「あーもー!!キレてやがる!!!」


頭を抱えたのは槃だ。


「ちょっと璃庵、お前の主人止め……って、フリーダムだなッ!!!」


隣に目線を移せば、既に璃庵は白虎のいで立ちのまま、翠琉の元へと駆けて行っていた。


(まあ、予定通りだからいいんだけどさッ)


そんな言葉は飲み込んで、将と蘭子に振り返ると矢継ぎ早に言う。


「将先パイ!らん姉!!とりあえず、さき姉の保護頼む!!!」


「判った。槃、お前も気をつけろよ!!」


言うなり、槃は蕎と周の倒れている方へ、将と蘭子は紗貴の元へと駆け出した。


「蕎、おい!!蕎……しっかりしろ!!!」


多少強めに揺さぶれば、顔を顰めつつ蕎が目を覚ました。


「アカン、やられたわ……」


痛みに耐えながら身体を起こす蕎の目の前で膝をつき、槃は珍しく真面目な面持ちで蕎に問う。


坐神(さがみ)の選定者……答えは出たか?」


それだけで、状況把握するには充分だった。


「これ、託すわ……あれは破壊者やない。救済者や……土御門(つちみかど)の選定者は?」

砂霧(さぎり)からはもう預かってる……なら、行くぞ?」

「ああ」


言いながら、槃は蕎から確かに何かの欠片を預かる。そのタイミングで紗貴を保護した将と蘭子が戻ってきた。

槃は慌てるでもなくそっと懐にその欠片をしまって、思わず顔を顰めた。

将と蘭子の2人の表情が、紗貴の状態を雄弁に語っていた。



※※※※※



怒りに身を任せて攻撃を仕掛けながらも、無事に将と蘭子が紗貴を保護する姿を横目に確認して、緋岐は安堵のため息を吐いた。


だからといって、怒りが収まるわけがない。


梵天は梵天で、有り得ない事態に目を見開いている。


「何故、お前がその武器をッ!!???」


だが、それには応えることなく低く唸るように言い放つ。


「良くも、紗貴を傷付けたな!!!……翠琉を泣かせたこと、万死に値する!!!」


挿絵(By みてみん)


言うなり、怒りに身を任せて再度攻撃を仕掛ける。


土気色の紗貴は、もはや生きているのかも不安な状態で、翠琉に至っては泣き叫んでいる。


(どんな罵詈雑言も、どんなに痛くても、黙って耐え忍ぶ様な子なのにッ!!!)


「お前、邪魔なんだよ!!!鎌ヤロー!!!!」


そんな声と共に羅刹天が梵天の後方に吹き飛ばされる。


そして、緋岐と同じく怒髪天を衝いた勢いの由貴が、隣りに並び立った。


「行くぞ!!」


緋岐が言うなり由貴も同時に駆け出した。


「トドメだ!!!クソ野郎!!!!!」


まさに、渾身の一撃を梵天に叩き込もうとしたその時……目に見えない何かに、緋岐と由貴は弾き飛ばされた。


咄嗟の機転で受身を取るが、踏ん張りも虚しく土埃をあげながら数メートル後退する。


「ゃっと来たか……真達羅(しんだら)……」


羅刹天の淡々とした声に応えるように、黒い麗人は淡く笑む。その額には第三の瞳があり、漆黒の翼を広げて佇んでいた。


「……まさか、梵天様までやられるとは……地上人にしては、上出来……だけど、ここまでだよ」


言うなり妖しく光る金の瞳で緋岐と由貴を交互に見やる。その瞬間、緋岐と由貴は、完全に身体の自由を奪われた。


口を開くことすら赦されない。


真達羅と呼ばれた男が手をかざすと、梵天と、羅刹天も共に宙へと浮く。


「これから、世界は絶望に染まる、断末魔が響き渡る日は近いだろう。お前たちはおのれの非力を嘆きながら、そこから観ているがいい」


それが、最後の言葉だった。梵天、羅刹天、そして真達羅は一瞬にして、その場から掻き消えたのだった。



※※※※※


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