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沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編【挿話】
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ハイブリッド祓師

「で、(ばん)……何の用事?」


ところかわって東雲医院(しののめいいん)……蘭子の自宅件、父親が営んでいる病院だ。


槃に促されるまま早退した(しょう)蘭子(らんこ)。とりあえず、槃の機転で今日学校に行った緋岐が将の幻獣(げんじゅう)マリスの擬態だということはバレずに済んだ。


瑞智家(みずちけ)は火災が起きたのみならず、食中毒まで起こってしまったというあらぬ誤解は生まれたが、誤差の範囲だ。

恐らく。


今は、医院長である蘭子の父 (ひいらぎ)に頼んで空いている病室に集まっている状態だ。


そんな中、初めに口を開いたのは将だった。


警戒を隠さずにそう聞いてきた先輩に、槃は肩を竦めて見せた。


「酷いよなぁ、助けてあげたのにこの態度!……まあ、でも確かに、俺も手の内見せないとフェアじゃないよな!」


言うなり、「招来焔炎(しょうらいほむら)」とまさかの呪詠唱だ。将も蘭子も目を見開いた。そんな2人を他所に槃は続ける。


「俺の名字、“四芝(ししば)”だけど……実はこっちがホント」


言いながら、人差し指に纏わせた炎で空中に漢字を描く。


挿絵(By みてみん)


神々廻(ししば)……って、京御三家の一角を担う名だろうが。お前……クオーターだろう?有り得ん」


蘭子が胡乱気に言えば、槃はウンウンと神妙な面持ちで頷く。


「まあ、そういう反応になるよなぁ」


破魔一族(はまいちぞく)は、基本的に血を重んじる一族だ。余所者の血が入ることを余り是としない。余談ではあるが、緋岐達の母親は迫害された理由もここにある。


四芝 槃……髪の色はアッシュピンク、瞳は淡い青色という、見た目からして少し日本人離れしている。だからこその、蘭子の反応なのだ。


「西欧にも、東の破魔みたいなのがいるのよ。祓魔師(エクソシスト)って言ったら判りやすいか?俺のばあちゃんは、その一統なんだよ。魔女とも呼ばれるけどな!」


言いながら、体操着入れから無造作に何かを取り出す。そして、そのままその場で着替え出した。手を止めずに槃は続ける。


「まあ、俺の話は置いといて!急がないとヤバい気がするんだよね」


将も蘭子も、認めざるを得なかった。寧ろ、逆の意味で呆れてものが言えないといったところか。


「お前、体操着入れの中に守衣(しゅい)を入れるヤツがあるか」


蘭子が溜息混じりに苦言を呈しても、反省の色は全く見られない。


「今日は、絶対に必要だって、俺の勘が言ったんだよ」


それどころか、ニカッと曇りひとつ無い笑顔を向けて来る後輩に、将は苦笑を零した。


「なら、俺と蘭子さんを連れ出したのも、槃の勘?」

「そうだ」


なんのてらいもなく頷く後輩の言う“勘”は、実は外れたことがない。それは身をもって知っている紛れもない真実だ。


「俺たちは、何をしたらいいのかな?」


将のそんな言葉に、待ってましたと言わんばかりに懐から札を三枚取り出す。


「とりあえず、まずは無洞窟(むどうくつ)にいる緋岐先パイと合流してから、神路山(かみじやま)に向かうつもりだ。多分、今結構ヤバい状態なんじゃねえかなって気がしてる」


(一体、どこまで知ってるんだか……)


「後で、洗いざらい話してもらうからな?」

「判ってるよ、全部話す……だから、急ごうぜ!この札の使い方は?」


「判るに決まっている」


そう応えたのは蘭子だ。何やら感じ取った蘭子は、いつの間にか席を外していたらしい。再び扉をガラリと開けて現れた蘭子もまた、守衣を身にまとっており、その腕には蘭子の真承武具 (しんしょうぶぐ)瀞月輪(せいげつりん)が顕現している。


「無洞窟の位置は?」


続けて蘭子が問えば、今度は槃が不敵な笑みを浮かべて応える。


「神々廻は御神体守護を命じられた一族だぞ?任せてくれ!」


よし、とお互い頷き合うと、走り出す。


目指すは屋上だ。辿り着くなり、三人はほぼ同時に札を構える。


封解(ふうかい)遮蔽(しゃへい)せよ!!」


3人の声が重なった。その声に呼応するかのように、札が浮かぶと3人それぞれを見えない防護壁が展開された。


これで、今から何が起ころうとも人の目には見えはしない。いわゆる、目眩しの術だ。


「ヴィルサルガ!マリス、レノス!」


次いで将が唱えると、赤毛の美しい猫と烏を思わせる鳥が現れた。


「ごめん。今回は背中には乗せてもらえるかな」


将のその願いに応えるように、マリスとレノスは人が一人乗れるくらいのサイズまで大きくなった。躊躇うことなく、マリスの背に将が、レノスの背に蘭子が飛び乗る。


「槃、何ボヤっとしてるんだよ。行くよ?」


言いながら自分の後ろに乗るよう指示を出すが、素直に従う素振りが全く見受けられない。


「どうやって行く気だ?」


将の疑問には応えず、槃は、優しい笑みを浮かべると虚空を見つめる。


「頼めるか?」


槃が言うなり、フワッと槃の身体が宙に浮く。その事に将も蘭子も驚きを隠せない。呪詠唱を行わずに空を飛ぶだなんて、通常有り得ないのだ。


「とにかく!あとで全部話してもらうからな!」

「仕方ないなぁ」


将のそんな言葉に槃は肩を竦めて了承の意を示す。


「行くぞ!!」


蘭子の声に、三人は空へと駆け出した。

目的地は無洞窟だ。


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