表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編【挿話】
88/108

後輩までこちら側だった件

三連休明けの火曜日……


天海(あまみ)(しょう)楼条院(ろうじょういん) 蘭子(らんこ)は、普通に学校に登校した。


無論、由貴(ゆき)達が神路山(かみじやま)に向かったことは伏せられている。

だからこそ、日常生活を守る為に、何事もない体で2人は登校したのだ。


……が。


(これは、予想外だよね!?)


将は、自分の顔が引き攣るのを何とか笑顔で誤魔化した。


眼前に陣取っているのは、鴻儒(こうじゅ) 緋岐(ひき)のクラスメイト達だ。その面持ちは全員真剣そのもので。


「で!!結局のところ、どうなの!?瑞智(みずち)さん、生きてる!?」


「っていうか、まさか昨日の爆発も喧嘩が原因だったりするのか!!?」


閑話休題。


都立 南条高等学校は曲がりなりにも進学校だ。2学年からは理系と文系でそれぞれ3クラスの合計6クラスで編成される。


将、蘭子、紗貴、そして緋岐は全員揃って理系である。


……そう、理系のハズなのだ。つまり、今将に詰め寄っている2-Cの生徒達も理系を選択しているというのに。


(なんで喧嘩で爆発とか非科学的な事言うかな!?)


思わず心の中でツッコミを入れた将を、誰が責められるだろうか。


事の発端は、登校したその直後まで遡る。


瑞智姉弟は、昨夜起きた火災の影響で怪我を負い、用心の為休む連絡が学校に入っていた。その事を知った由貴のクラスメイトと紗貴のクラスメイトにまず、緋岐、将、蘭子に加えて由貴と比較的仲のいい高条(たかじょう)(あつし)四芝(ししば) (ばん)が質問攻めに合った。


実は、瑞智姉弟に加えて相模(さがみ) (きょう)も欠席しているのだが、蕎はちょくちょく休むため、あまり皆も気に留めなかった。否、火災と聞いているクラスメイト達は、瑞智姉弟の安否に気を取られ、他に目を向ける余裕がなかったと言えるだろう。


その質問攻めの中で、際立って様子がおかしい人物がいた。


それが、何を隠そう鴻儒緋岐その人だ。

クラスメイトは……否、緋岐と同じクラスになった同級生は漏れなく知っている。緋岐がポンコツ……おかしくなる理由はひとつしかないと。


種明かしをしてしまうと、緋岐本人は“力”を手に入れる為に無洞窟(むどうくつ)に向かっていた。

何の力なのか、どんな力なのかは聞かされていない。

だけど、きっと紗貴と行動を別にしてまで望んでいる力だ。必要不可欠なのだろうということは容易に想像することが出来た。


学校に通っているのは将と契約を結んでいる幻獣(げんじゅう)が緋岐に擬態しているモノで。外見は真似できても、中身を真似る事は出来る訳がなく……怪しむ中、決定打は将の一言……否、行動だった。


「緋岐、もう無理はしないで保健室で休んでなよ」


まさかの!!将が1限の授業終わりを告げるチャイムが鳴った直後、隣のクラスまで足を運び、心配そうにそう言うや否や、そっと緋岐の肩を抱いて立ち上がらせたではないか!


「ああ、ありがとう……」


そんな2人の様子に、いつもなら皮肉や嫌味の1つを飛ばす緋岐と同じクラスになった蘭子は、ため息混じりに見送るだけと来た。


(これは……)

(絶対におかしい!!)


その時、2-Cの気持ちはひとつになった。緋岐がおかしくなる理由……それは、瑞智紗貴以外有り得ない。


という事情で、2限の終わりを告げるチャイムが鳴るや否や、2-Bに突撃したのである。


「ええっと……喧嘩もしてないし、さっちゃんも無事だよ」


(……多分……)


という言葉はすんでのところで呑み込んだ。幼なじみの女の子は、とにかく無茶をする。守る為なら無理無茶無謀も平気でやってのける。だから、どうか無傷でいて欲しいと願う反面、怪我を負っているのではないかと不安に駆られるのだ。


「じゃあ、鴻儒くんの不調はどういうこと!?」

「あんなにフラフラとか、原因は瑞智しか有り得ないだろ!!」


詰め寄られても、本当の事を言う訳にもいかず。


(どうしたら!!!)


頭を抱えているところに、救世主が現れた。


「将せんぱーい!!」


短く切り揃えられたアッシュピンクの髪と青空を思わせる水色の瞳が印象的な少年が、将を呼んだのだ。


「槃!!」


渡りに船と言わんばかりに立ち上がって教室の出入口に近づく。そこで、眉を思わず潜めた。

何故か蘭子も一緒にいるではないか。


「蘭子さんまで?」

「腹が痛くて!!」


将の声に被せる様に口を開いたのは、槃だ。学年は将達の1つ下で、よく由貴、敦、蕎と行動を共にしている。


将からすると、由貴と同じく剣道部の後輩にあたる。


どう見ても、腹痛には見えないのだが、どうやらその言い訳を貫くらしい。


「私も腹痛だ。もしかしたら、昨夜、瑞智家で食べたものにあたったのかもしれない……お前も腹痛に見舞われるかもしれない、早退するぞ」


何とも威風堂々たる言い放ちっぷりだ。どこからどう見ても腹痛には見えないのに、有無を言わさぬ蘭子の物言いに多少気圧されつつ、槃と蘭子の手元に視線を移すと、既に帰宅準備も整えられている。

どうやら、蘭子が緋岐の荷物もまとめたらしく、槃が2人分の荷物を持っていた。


(ここは乗っかるしかないか)


「そういえば、なんかちょっと気持ち悪いかも……ごめん、そういう訳で、俺たち早退するから……」


席に一旦戻り、荷物をまとめながら力無くそう言えば、何故かみんな合点がいった様に頷いた。


「だから、鴻儒は元気がなかったのか!!」

「蘭子さんのツッコミにもキレがなかったのね!」

「そういえば、なんか天海……お前も顔色が悪い気がする……早く帰ってしっかり休めよ!!」


そんな声に、思わず顔が引き攣る。


「あ、ありがとう」


そうして、将、蘭子、そして槃(プラス緋岐に擬態したマリス)は学校を後にしたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ