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沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編 第七章【神剣の守り人】
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「門をくぐると、そこは森の中でした。うん、雪国じゃないのが惜しいね!」


ふっ……本当に絶景だよなあ。何で俺なんだろうなあ、いっつも。


「で、ここが神路山か」


「姉様、足元に気を付けて下さいね!」


お~い。お願いだから無視しないで。翠琉と周が仲良さ気に何だかお話してるよ。因みに今の俺は、白銀よりも高い!あ、人型だよ?念のために。白銀よりも高いって事は、蕎よりも高いって事で。いつも見下ろされている立場としては、何となく優越感だ。……こんな状況じゃなければ、だけど。


「だから!誰か気付いてっ!お願いだから無視は止めてくれ!」


何で俺だけ地に足が付いてないんだっ!軽く3mくらい上の枝に、丁度襟首が引っ掛かってしまったみたいで宙ぶらりんになってる。何となく、首筋掴んで持ち上げられた猫の心境が判った気がする。いや別に何もしてないわけじゃないよ?ジタバタもがいて見てるんだけど、全く効果なし。


「……ねえ、何か楽しんでない?」


そんな一生懸命もがく俺を見た周サンの第一声。


「どこをどう見たら楽しそうに見えるんだよ!」


だから酷いって。


「お前ん事や。どうせ“猫の気持ち判った”とか思てはるんやろ」


「ぐっ……」


蕎め……何で判ったんだ?しかも疑問系じゃなくて言い切りってところが何か悔しい。


「まさか図星か?」


白銀から、改めてマジマジと言われたら何だかとっても恥ずかしくなった。っていうか、もう泣きたい。

「……!?来るっ……伏せろっ!」


翠琉が鋭く言い放つ。……うん、伏せたいけど今の俺には無、理……え?


「ちょっと待ったあぁ!!」


ふざけんなよ!?何だアレはっ!何で矢の大群がこっち目掛けて飛んでくるんだよ。まさかのエンド?ここでおしまい?いや、待てって言って待ってくれるものじゃないって判ってるよ?いくらなんでも、俺だって判るよ!?それでも叫ばずにはいられない。


―― 俺の人生16年っ!


そう思って息を呑んだ瞬間。


()()むべき芳命(ほうめい)にして偽印(ぎいん)使途(しと)神苑(しんえん)(ふち)へと今、招かん。護法芒陣(ごほうぼうじん)!」


翠琉が俺に向かって印を切る。同時に俺の目の前に現れた不可視の盾が、全ての矢を弾き飛ばした。……と思っていたら、最後の一本が見事に俺の襟首を掴んで放してくれなかった枝に命中して、ボキッと不吉な音と共に折れた。


地面に打ち付けた腰が痛いっ!腰は男の命なのにっ!余りの痛さに声が出ない俺を無視して、他のメンバーは既に戦闘モードだ。俺も思わず息を呑んだ。


静電気が走るっていうか……空気がピリピリしてる。それが、俺達に向かって矢を放った敵が放つ威圧感だっていうことは、誰が口を開くまでもなく感じ取ることが出来た。


―― あれ?でも、この感じは……


俺自身、判らない。威圧感が半端ない、これも本当の事だ。でも、確かに感じたんだ。敵意を向けられている筈なのに、怖くない。


―― むしろ……


懐かしいとさえ感じる自分に、俺自身驚いた。


「全く、度胸が座ってるのか……それとも、身の程知らずの単なる阿呆なのか……」


言葉と共に、茂みの中から一人の男が姿を現した。なんか、神社の神官様みたいな格好には似つかない大きな傷が、顔を横切る様に大きく走っている。その手に持っているのは、槍みたいな刃が切っ先にくっ付いてる、弓みたいな不思議な武器だ。


「あれは、破魔武具?」


周がポツリと漏らす。


「忌部の者という訳では、なさそうだな」


白銀も、警戒を解かずに伺うように言う。


「仲間だって考えたんなら、それは違う。俺は敵だぜ?ここに足を踏み入れた時点で、お前らは、俺の排除対象となった。警告1だ。怪我しないうちに、とっとと出て行きな。」


多分……敵のお兄さんにも、俺たちが破魔の血を引くものだって事は、判ってると思う。だって、俺達も守衣着てるし、何より手には破魔武具を構えてるんだから。


でも、お兄さんは“敵”なんだと言う。同じ一族だからって、味方だとは限らない。そんな事、俺だって判ってる。忌部だって俺達と元は同じ破魔一族なんだから。でも、それでもやっぱり何だか悲しい。そんな俺の感傷を無視したまま、場の緊張は高まっていく。


「悪いが、引く気は毛頭ない。この道の奥に、所用があるのでな」


翠琉が剣を手に腰を落とす。そんな翠琉に応えるように、白銀と周も構える。いつ、どちらが攻撃を仕掛けてもおかしくない……そんな感じだ。


「警告2……だ。仏の顔も三度ってことわざ、知らないわけじゃないだろう?」


それは、つまり“警告3”が出た時点で力尽くでお引き取り願うって意味で。


「警告3など必要ない。悪いが是が非でも、道を開けてもらうぞ」


いやあ、翠琉さん……その言い方はもう、“オネガイ”なんて可愛らしいものじゃなくて、脅迫にしか聞こえませんが。……なんて、軽口を叩ける空気じゃない。


「これぞ、一触出発な雰囲気……」


ゴクリと、唾を飲み込んでしまった俺に、蕎が隣からいつもの調子でツッコミ入れてきた。


「阿呆か。どこに出発する気やねん。それ言うんやったら“一触即発”やろ」

いやいやいや、蕎!?今は、ツッコミを呑気に入れてる場合じゃないって!」


「せやったら、こんな真面目な場面で、しょうもないボケかますなや」


そういえば、なんで蕎はこんなに冷静なんだ?いや、いつも冷静な奴だから、慌てたところを見た事なんてないんだけどさッ!それでも、この緊迫感溢れる空気には似つかわしくない余裕じゃねえ?……なんて思っていたら……


「お前にだけは、言われとうないわ」


心の中を読まれた上に、更なるツッコミを入れられた。戦闘開始のカウントダウン始まった両者の間に、蕎が飄々と割って入る。


「ドンパチ始める前に、自己紹介するんが先やで?」


―― なあ?神剣の守り人はん?


蕎の言葉に、男の人が目を僅かに見開いたのが、俺にも判った。



※※※※※


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