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沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編 第五章【想いのカタチ】
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「邪神達は、あくまでも梵天の封を完全に解き放つ為に神剣を破壊したがっているのです」


更には自分達の脅威でもある“神剣の使い手”。それは目障り以外の何者でもない。


「ですが、忌部一族は ――」


彼らの意向は全く邪神とは異なるところにある。


「彼らは“悲願”を叶える為だけに、存在している」


―― その悲願こそが“復讐”


破魔一族には、礎を築いた“始祖”と称される人物は3人居る。


珠美姫(しゅびき)”の異称を持つ少女は、先見の力を有しており森羅万象の声を訊く事が出来た。高い統率力を以って、一族を導いていたのもまた彼女である。


その“珠美姫”の実弟とされる人物が匠葵耀尊(しきようのみこと)という稀代の鍛冶師だ。彼こそが、今に伝わる破魔武具(はまぶぐ)を造ったとされる人物であるとされていた。


そして最後の一人が ―― 緒鬼嶽尊(おきだけのみこと)


常に珠美姫の傍にあったとされる人物だ。剣の腕は右に並ぶ者はなかったと伝えられている剣豪である。一説によれば“神をも勝り、その手に掛けた”とも謂われるほどだ。


「彼らは、珠美姫の導くままに課せられた業を全うしていました。ですが ――」


人々は恐れた。人ならざるその力は、恐怖の対象でしかなかったのだ。


畏怖の念は恐怖へ変貌し

悪意は刃となって襲い掛かる


妖と戦う術を持てども人と戦う術を持たなかった破魔一族は、すぐに壊滅状態にまで追いやられた。


珠美姫と緒鬼嶽尊の命が、理不尽な暴力によって奪われた瞬間


涙は枯れ果て

変わりに暗澹たる感情に支配された


『幾星霜の時が流れようとも、この怨み忘るることなかれ』


慟哭とも取れる叫びと共に匠葵耀尊は姉を喰らった。


“力”を手に入れる為に


いずれ訪れるであろう

“報復”の為に


「それが ――」


“天つ罪”と呼ばれる大罪の裏に潜む、知られざる真相。


人でも神でもなくなった匠葵耀尊は、自らを“真達羅(しんだら)”と名乗った。


「そんな真達羅と志同じくする者たちが集まったのが、忌部の起源です」


―― だからこそ……


「忌部一族の者達にしてみれば邪神も人も大差ない筈」


―― 否……


「神剣の使い手が現れたならば決死の覚悟で護るでしょう」


―― 何故ならば……


「神剣の使い手こそが、彼らが“大兄”と畏敬の念を込めて呼ぶ人物の御魂の持ち主なのだから」


「ちょっと待ってくれ!」


俺は、思わず右手をびしっと真っ直ぐ伸ばして声を上げた。


何だか頭が混乱してきたぞ?


「忌部の奴らが、覇神を滅ぼしたんじゃないって事か?」


「その見解も、あながち間違いではないでしょう」


忌部の者達は求める魂の鼓動に共鳴するかのように、深淵の眠りより目覚めた。


それは気の遠くなるような永い間待ち続けた瞬間で……


―― 我らの悲願を成就せんが為に


「しかも、それって……」


由貴の言葉に白銀は肯定の意を込めて頷く。


「はい、恐らく由貴殿。其方だと思って間違いないでしょう」


「何で、彼らの“悲願成就”と“大兄”とやらの復活が関係あるの?」


紗貴が訝しげに訊ねる。それに白銀は少し思案してから口を開いた。


「それは……彼らは永遠の時を手に入れましたが、だからといって不死ではありません」


真達羅の洗礼を受けて、人の生より逸脱した彼らにはそれなりの制約が課せられた。


「あ、もしかして、冬眠しないといけない……とか?」


「あんた、何言ってるのよ、馬鹿じゃないの?熊じゃないのよ?」


由貴の言葉を容赦なく切り捨てたのは(あまね)だった。その視線は限りなく冷たい。しかし、白銀は由貴を肯定するかのように一つ頷いた。


「ほら、当たり!」


「……なんか、ちょっとすみません」


断りを入れて、周は右拳を振り上げる。少し優越感に浸ってにやけた由貴にカチンと来た周が右拳に渾身の力を込めて殴り飛ばしたのだ。由貴は畳にめり込んだまま痙攣しているのだが。


死して屍拾うものなし。

話は先に進んでいく。


「冬眠……言い得て妙ですね。彼らは不老の力と高い自己治癒能力を手にする代償として、百年の眠りを要するようになりました」


それだけではない。


「百年の眠りを要した後、行動を赦されるのは十月十日のみ」


「なるほど。大方、大兄とやらの覚醒と共にその制約もなくなる……そないなとこやな」


それまで黙って聴いていた蕎は静かに……だが確信を持って言う。


「大兄を迎えに行った奴さんと、自分らを倒す力を持った神剣の使い手を殺しに来た邪神とが鉢合わせたっちゅうのが、16年前の真相やな?」


それは、疑問形ではあるものの、既に確信を得ているような言い方だ。そんな蕎の言葉を肯定するように頷きながら、正宗が続ける。


由隆(ゆたか)殿はその混乱に乗じて神剣を封じたのじゃ。そして、実妹である(さくら)殿に希望を託した」


―― その“希望”は、未だ畳にめり込んだまま気を失っている


自然と視線は、周に張り倒されたままの姿勢で痙攣している由貴に集まった。


やはりというべきか……素早く動いたのは紗貴だ。


「いい加減、起きなさいよこのお馬鹿!!」


紗貴は片手で豪快に襟足を掴むと、ぐいっと引き上げる。


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