④
ってちょっと色んな意味で視線のやり場に困るんですけど!?
木綿の単衣の夜着を着てるもんだから、そんな片膝付いたりするとちょっとまずいって。ほら、パッ……パ○ツが見えそう……はっ!!!
隣から殺気が……と思った瞬間・
「何頬染めてんのよ、このスケベ馬鹿!」
―― 姉ちゃんの破魔武具“絶風爪”で容赦なく頭を叩かれて、俺はお花畑へ
「さっ、紗貴……流石に由貴が死ぬって」
「大丈夫、馬鹿は死なない」
緋岐の遠慮がちな意見を軽く一蹴。
「お花畑へ旅立たないからな!」
緋岐の心配は杞憂に終わった。紗貴の宣言通り(?)由貴はものの30秒で脅威の復活を遂げたのだった。
ふふふっ……危うく、知らないお婆さんと川の上を小舟でランデブーするところだったぜ!
「酷いよ姉ちゃん!」
「お帰り、奇跡の生還者」
「うん、ただいま!」
……何だろう……
『お帰り』って言われたから
『ただいま』って返したのに
視線が痛いよ、みんな。
「とりあえず、これからの事を話しましょう」
それまで黙っていた白銀だった。
流石だね!
話がどんどん明後日の方向に向かってたのに、“鶴の一声”ならぬ“犬の一声”で戻してくれた。
「私の考えを聞いてもらえますか?」
そうじいちゃんに伺いを立て、頷くのを確認してから白銀は話し出した。
「ここは、二手に分かれるべきだと思います。」
先ほど庭先に現れた輩……名すら名乗らず突如現れ、圧倒的な強さを見せ付けた少女と妙齢の女性。
「あれは邪神と呼ばれる者共で、忌部とは異なる存在です」
否、もともとこの地上には居る筈のない ――
―― 存在する筈のない輩だ。
そして――……
「奴等の信仰対象は、あくまでも“梵天”」
対する忌部一族は3人の始祖にのみ付き従っている。
「そもそも従属する相手が異なっているのです」
ウーン……いまいち、良く判らない。こんな空気の中で俺が質問しても良いものかどうか悩んでいる間に、緋岐先輩が口を開いた。
「良く、状況が掴めないんだけど……“梵天”と“3人の始祖”っていうのは、どういう事なんだ?」
なんとっ!訊いて良かったのかよ
訊けばよかった!
「そうだな……これから先、対峙する相手の事だ。知っておいた方が良いだろう」
そう言って、白銀は遠くへ思い馳せる様に目を細めてその重い口を開いたのだった。
―― 梵天……
これは、破魔の者ならば誰でも一度は耳にした事があるだろう邪神の王だ。しかしてその存在は、実しやかに囁かれる風説に過ぎない。梵天の下には、四人の側近が居ると伝えられている。そのうちの一人が、先日梵天と共に姿を現した“羅刹天”と呼ばれていた青年だ。
だが邪神はもともと地上に存在するものではない。
地上 ―― “葦原の地”の異名を持つ、この世界と対なる高位次元“天上界”に在るとされていた。
では何故、今この場所に現れたのか?
「当時の神羅、覇神両家の宗主は梵天の力を封じる為に神剣を用いました」
幾度も梵天はその力を以って災禍をこの世にもたらした。その災禍は地上にも及んだ。
それが丁度16年前 ――
神羅は強い霊力を有する“龍穴”と呼ばれる霊場を用いて、梵天の力の一部をその地に鎮めた。
「覇神の御当主は、その御身と神剣の力を用いて“梵天の半身”を何処かへ封じたと聞き及んでおります」
「ちょっと待ってくれ!」
―― この話の流れでいくと、その封じた奴って
「もしかしなくても。……俺の、本当の父親?」
由貴の言葉にはっと紗貴が振り返る。正宗も顔を伏せた。それが、全てを肯定していた。
「そうです。覇神一族が宗主 覇神 由隆です」
各地に散らばる破魔の血を継ぐ者達も、それぞれの法を以って邪神を方々へ封じる事に成功した。
―― だが……
どういうわけか、何故なのかは今となっては判らない。知る術もない。
神羅 真耶と梵天は同調した。
「“崇月”が奴らの手に渡らなかったのは幸いでした。ですが……」
真耶の呪力を吸収して、梵天は復活を遂げたのだった。目覚めた梵天に呼応する様に、邪神達の封もまた欠壊し始めている。現に、羅刹天を始めとする邪神は急襲を仕掛けてきた。




