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沙羅夢幻想~地上編~  作者: 梨藍
序章 -foretaste-
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あの夜から、頻繁にその夢を見る。

そこに立っているのは、あの人ではなくて白い犬を従えた不思議な少女。


同じなのは、俺の立ち居地。

手を伸ばしても届かない……


その夢を見た後、必ず涙を流していた。

何か大切な事を忘れている気がして……


不思議に思って、気味悪くて

食欲も段々なくなって来て


胸も苦しくて

肩も重くなってきたから相談したってのに……


「だからそこ!笑うなよ!」


――ズビシ!


人を指しちゃいけませんってんなら、人の悩み大笑いしてる奴はどうなんだよ!


「その前に服が現代んとちゃうとこで気付けや。しかも、何で引っ越して来た奴が夜な夜な神社なんぞ物騒なとこにおんねん。怪しいやないか。話しかけたお前がアホなだけや……」


そっ……そんな……

今まで黙って聞いてた分、ずらずらっと一気にしゃべらなくても(涙)


何かもう、どこにも味方いないよね、俺には……


まあいいや!


この、なんとも身も蓋もない

―― むしろ容赦なく言葉の手裏剣を投げつけてくれるのが


相模(さがみ) (きょう)


俺の親友その2だ。


敦とは正反対!


物静かな上、無口無愛想で


『霊はそこにおる』


と断定してくれる霊感少年だ。


ちなみに俺は心霊現象が大の苦手……


「肩が重いんは、そこんポチのせいやろ」

……

………

…………


「……え……?」


蕎サン、言った矢先からそういう冗談やめようや

ボク、怖いやんけ?


「ああ、ポチって、うちの裏の裏の裏に住んでるお菊ばあさんが可愛がっていた愛犬だろ?そういやあ、昨日老衰で死んだって、ばあさん泣いてたような……」


あっ……敦まで……


そんなっ!


世間話するみたいに一大事をさらっとするっと流すなよ。


――っていうか何でお前……

そんな裏事情に詳しいんだよ?


いやまあそれは左の隅っこに置いといてだ。


――つまり……

ポチは死んだから


幽霊?

ゴースト??


……だから……


………俺に…………


…………とり…………



………………憑い………




…………………た…………?




「いやだあぁ!霊、嫌いだあぁ!大っ嫌いだぁあぁあぁぁあぁぁああ!」


「「うるさい」」


――ゲシッ!ボカッ!!


「げふっ!?」


頭と腰に蕎の拳と敦の足が、仲良くクリティカルヒット


痛い……猛烈に……


「よし、完璧や」


「何が!?」


ああもう、ボケツッコミのタイミングまで完璧っ!


「阿呆。払ってやったてんやないか……ポチを」


………(間)………



「ありがとう!さんきゅうユワウェルコメ!!」


「ああ、何かお前が英語マイナス15点なのが今の瞬間、判ったよ」


なんか敦が失礼なこと言ってる気がするけど、まあいいや。

俺は霊から解放された!


……こほん!

取り敢えず、一つ目解決~♪


さあ!次行ってみよう!!


「じゃあ、食欲なくて、胸苦しいのは?」


なんだかんだ言って、やっぱ力になってくれるよなあ、こいつらっ!


「まあ、握り飯6個食べといて“食欲ない”はないと思うけど」


ピッと人差し指を立てて敦は咳ばらいをする。


「ずばり、その娘さんに一目惚れ!」


………………

……………………


「「「「「「なにいぃ!!?」」」」」」


いやね?

……クラスの皆さん……

びっくりなのは、俺なんだけどね?


そんな、声揃えて驚かなくても……


「どうするよ!あの由貴がっ!あのお馬鹿が!?」


「世紀末ってことか!」


「やばい!今日から嵐が来る!こりゃもう早退するしかないだろ!」


「そうかそうか、今日は赤飯だな!!」


「嘘でしょ!?ねえ!」


当人をよそに、周りは盛り上がる。

当の本人は自分のことにもかかわらず、ただただ茫然とするばかりだ。


そうかあ……

これがいわゆる初恋?


……なぁ~んか、違う気もするけど……っていうかその場合、どっちに恋してんだろうな


女性に?

少女に?


「それが人やて誰が決めたんや?さっきから言うとるが、霊ん可能性かてあるやろが」


「その前にさ、そのお嬢さんはともかく、お姉さんはお前の夢の中の住人だろ?お前、自分の妄想に恋してどうするんだよ、重症だぜ?」


俺の中でやっと解決しかかったって時、何言い出すんですか?


敦さんに蕎さんや……

――敦と蕎のその一言で訪れたのは……


言うまでもなく沈黙。

もう俺、なんなわけ?


いやまあ、確かにさ、夢なんだけどさ。


何?


そしたらあのお姉さんは俺の好み?


……へえ……


俺自分でも知らなかったや、自分の理想女性。


……って!


――ガタン!


「納得すんなあ!俺!」


――シイィィィン……


さらに静まり返る教室。


「落ち着け!うん、そうだな……お前は確かに馬鹿だ!大馬鹿だ!だから、取り敢えず落ち着いて座れ!とにかく座れ!」


何気にフォローになってねえ気がするのは俺だけか?

っていうか、何かスッゲエ酷いこと言われなかったか?


……でも、何かもういいや……


言い返す気力もねえ。


――ストン……


もう皆も他の話題に移ってる。

飽きるの早いよな。


嬉しいような、悲しいような。




「やっぱ、いねえのかな……俺の考えすぎかなあ……」




もう逢いたくないと言えば嘘になる。




むしろ、もう一度逢いたい。

惹かれているのは、自分でも判った。


格好が変わってたってのも、あるかもしれない。

でも、何かもっと他に理由がある気がした。


俺にもそれが何なのかそれは判らない。

逢ってどうするのかも、判らない。


ただ、もう一度逢いたかった。


「まあ、人には定められた道ってのがあるからな。必然なら、また逢えるさ」


敦のやつ、フォローの続きか?

わけわかんねえ……


「お前、何教だよ?」


宗教じみたことを口にする敦に、俺が聞くと、不敵な笑みを浮かべて、


「俺?俺のカミサマは俺自身……敢えて言うなら“俺サマ教”かな?」


そう、冗談のような本音を返されてしまった。



※※※※※※


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