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沙羅夢幻想~ さらむげんそう ~  作者: 梨藍
地上編 第四章【過去の呪縛】
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迂津至命(うつしのみこと)伊須厨(いすず)の容赦ない攻撃を、由貴(ゆき)緋岐(ひき)をを襲う。だが緋岐と由貴も中々のコンビプレーを見せ、窮地を脱しつつあった。迂津至命と伊須厨も、表情には出さないまでも内心舌を巻く急成長に驚いていた。


この短時間でそれほどまで、緋岐と由貴の連携は完成しつつある。緋岐と由貴も確実な手ごたえを感じていた。だが、それでも現状が改善されたとはとてもじゃないが言い難い。


相手は不老不死。こちらは生身の人間だ。体力には限界がある。それでも、引くわけにはいかない。翠琉と紗貴の安否が気になって仕方がない。


募るばかりの焦燥感。


そんな焦れる緋岐の心の内を読んだのか、由貴が言う。


「大丈夫。姉ちゃん、強いし……女の子としては規格外だから」

「最後の一言、しっかりと紗貴に伝えといてやるよ」

「やめて!それだけはやめて!怒られるッ!!」


泣いて懇願する由貴を見て思わず苦笑する。


「とにかく、この空間から出れたら良いんだけどな。っていうか、何だか俺さっきからあの二人以外にもう一人相手に戦っている気がする」


顔をしかめて由貴が言う。確かに、何も唱えていないはずの二人から攻撃を弾かれたり、混乱に乗じて在り得ないはずの方向から攻撃が飛んできたりしている、気がしなくもない。


「まさか……」


緋岐は、由貴の言葉と今までの戦闘から自分が導き出した答えに愕然としてしまった。


・使用した鏡は、瑞智道場の近所にある神社境内に奉納されている神鏡。


―― ならば、移動先にあるはずの鏡はどこに?

その鏡は、まだ見ていない


でも鏡がなければ


水比奈は道を作る事は出来ないはず


―― では、この場に辿り着いて最初に対峙した人数は?

三人だった。そして、うち一人は今現在翠琉と紗貴が応戦している筈だ。


―― でも、そう思い込まされているとしたら?


ここに足止めをする理由


その、真の目的は……


『なるほど、私達が来る事が判っていながら招き入れたか』


翠琉の言葉が脳裏を過ぎる。自分達の意思で来たと思い込まされていたのだとしたら?


“梵天”というエサに釣られ、まんまとおびき出されていたのだとしたら?


ならば、この戦闘も仕組まれた事……


―― そして……


「初歩的な事を忘れてた。俺達は二人じゃない、三人の相手をしていたのか……」


緋岐は悔しくて、自分の浅はかさが恨めしくて唸るように言う。


―― そして、本当の目的は……


「由貴、急ぐぞ。お前の家が危ない」


何より、翠琉が心配だ。信用していたはずの者から受ける裏切り……その真実をしてしまったら、翠琉は……


「何でこんな簡単なからくりに気付かなかったんだ、俺は!」



※※※※※※



いきなり何を言い出すかと思ったら、もう訳わかんねえよ!


一人で納得しちゃってさあ!


もう、戦闘中に暢気だよなぁ!


俺なんか、応戦するだけで精一杯だっての!


―― っていうか、俺んちが危ないって……


でも、先輩が言うんだから間違いはないんだろう。こういう時、刷り込みっていうのは絶大な威力を発揮する。


緋岐先輩との付き合いはそれなりに長い。で、幼い頃からの癖で先輩の言った事は頭ごなしに信じる癖が付いてしまってたりする。


言い換えれば、まあ……それだけ信用してるって事なんだろうけど。昔は良くそれで騙されたもんだった。


『月では本当にウサギが餅付きしてるんだぞ』


とか


『清水寺は、シミズさんが作ったんだぞ』


とか……いや!今は信じてないよ!!?流石に月にウサギがいないのも知ってるし、清水寺だってシミズさんが作ったなんて嘘だって判ってるよ!


……つい最近まで信じていたけども!


キヨミズって読む事にも、最近知ったけれども!!


ちょっと話がそれちゃったな。


―― とりあえず……


そんな訳で先輩の事を信用してしまっている俺としては、疑う余地がないわけで。まあ長年の付き合いだからな。嘘を付く時はニタァって効果音が付きそうな(美形な顔が台無しな)笑顔を浮かべるってのも学習済みだぜ!その前に、こんな状況であんな笑えない冗談言うとも思えないし。


「由貴!30秒で良い、時間を稼げ」


一旦間合いを取った瞬間、先輩がボソッと言って来る。


「了解」



※※※※※※



言うなり由貴と緋岐は二手に分かれると同時に緋岐は目を閉じると気を辿る。味方だと信じていたからこそ、気にも留めていなかった存在を探る。見つけるのに、そう時間は掛からなかった。


この空間を作り出している張本人……迂津至命と伊須厨に次ぐ三人目の敵。


呪を詠唱すると楼華来数珠(ろうからいじゅず)を構えて印を切ると数珠を象っていた珠がバラバラに緋岐を囲う。


緋岐が、右手を大きく振り上げた。


「そこだ!」


その言葉と同時に振り下ろした瞬間……一箇所に目掛けて弾丸の如く珠が飛んでいった。何も存在しなかった筈のその場所で、何かが砕け散る音が響き渡る。それに伴い周りを構成していた景色が、鏡が割れるように崩れていった。



※※※※※※



たかが30秒、されど30秒……


案外しんどい30秒。


俺的にはそんな感じ……


今まで守りに徹していた俺がいきなり攻め一点の姿勢に変わったもんだから、相手もちょっとは動揺してくれたんだけど。流石、年の功!俺一人が暴走し出したように見えたらしく、直ぐに態勢を立て直して来た。


それでも30秒!


稼がないといけない。でも、流石に武器が剣の俺が30秒も二人相手に気を引くのは難があった。


「小僧!何を企んでいる!」


迂津至命がそう言うや否や、目を瞑って無防備な姿を晒している緋岐先輩目掛けて攻撃を仕掛けやがった。慌てて防御に回りこんだけど、そう甘い敵じゃなかった。すかさず伊須厨が緋岐先輩の背後を取ると、鋭砕飛刀と氷槍のダブルアタックが襲おうとしていた。


「討ち取ったり!」


伊須厨が歓喜の声を上げながら襲い掛かる。そう簡単に攻撃をさせるか!その意気込みだけで駆け出す。


「緋岐先輩!!」


思わず叫ぶが、先輩は何の反応も示さない。


間に合わない!そう感じた。


―― でもそれを認めてしまった……


諦めたらその時点で、終わってしまう。


動け動け動け動け動け動け動け


……っ………………


「動けぇ!!!」


―― その時……


まただ……また、変な映像が俺の脳裏を走り抜けた。




ウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイ失いたくないウシナイタクナイ




……っ………………




失いたくない!!!




『俺の力が及ぶ限り、もう誰も死なせはしない!!』


焼け野原

浴びるは鮮血


むせ返る様な

血の臭い


夢の中の青年と、目が合った。


『自分を信じろ、守り抜け!』



「何!?」


俺を現実に引き戻したのは、そんな伊須厨の驚いた声だった。


「俺、今……」


自分でも訳が判らない。いつの間にか宇津至命を後方に吹き飛ばして、今は伊須厨と対峙していた。伊須厨に逆らう筈のない鋭砕飛刀が、主である筈の伊須厨を射止めていたのだ。俺の手の中にある十掬剣(とつかのけん)は、しっかりと氷槍の攻撃を防いでいる。


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