⑦
「来る!!」
いち早く気付いた周が、刃を受ける。
「お初、お目に掛かります。忌部一族は1人、珂倶遮命と申します。そしてこれは私の破魔武具風霧です。以後お見知りおきを」
―― この後あなたが生きていれば、ですが……
その一言が、周の闘争本能に火をつけた。
「なめんじゃ、ないわよ!」
言うや否や、力一杯錫杖で風霧と呼ばれたブーメランのような武器を押し返した。
「ほう破魔武具覇世神杖の使い手か。今世はまた、えらくうら若き乙女の手に渡った物だ」
「は?何その言い方。あんた幾つよ!」
攻撃を仕掛けながら周が問う。
「少なくとも、あなたよりも永く生きていますよ」
「何それジョークかしら?」
珂倶遮命と名乗った青年は、どう見ても20歳にも満たないだろう容姿で……周の攻撃を珂倶遮命は軽々といなしながら、微笑を浮かべて言う。
「目に見えるものが全てだと信じているとは。まだまだ若いですねえ?」
実力差をまざまざと見せ付けられて怯みそうになる自身を叱咤する。
―― 戦うって決めた!
「絶対に、勝つ!」
そして、自身へと宣言して珂倶遮命を睨み据えた。
「ご老体ならそれらしく大人しくしてなさいよね!」
「ほう?実力の差が判らないのですか?それとも、判っていても果敢に挑んで来ているのでしょうか?」
「判っていても引けない時があるのよ!」
次の攻撃に移ろうとしたその時、珂倶遮命が先に動いた。しまったと思ったときにはもう遅い、直撃は免れないそう思い目を瞑った
―― その時……
「よう言うたわ。その根性、気に入ったで」
淡々とそう言うと誰かが周と珂倶遮命の間に割って入った。一目見て判る漆黒の守衣に身を包み経典らしきものを目の前で構えている。何と珂倶遮命の攻撃を完璧に防いでいるのだ。
「………ほう、なかなかのやり手ですね」
珂倶遮命は、少々驚いたように目を見開く。その先にいるのは、周とそう年端の違わない少年。妙に老成したその少年は、背後の周に向かって言う。
「噂に聞いとる通りやな。破魔一族西方守護総代 神羅一族庇守 神羅 周。年ん割りに力を持っとるが頭に血ぃ上るんが早いんが欠点」
淡々としたその物言いは、逆に周に冷静さを取り戻させた。
「私も、聞いた事あるわよ?京御三家は一つ。相模家の跡取り息子のこと。術師の中でも異例の速さで“僧正坊”まで上り詰めた天才呪術師、相模 蕎……アンタのことね?」
肯定の意味なのだろう、蕎は薄く笑う。
「ほう、それは破魔武具冥旺経典ではありませんか」
珂倶遮命が、どこか嬉しそうに言う。
「あんさん、俺らより永く生きとる言うとったな。せやったらハンデもらうで?」
蕎の物言いに、珂倶遮命は笑みを浮かべたまま答えた。
「ええ、良いですよ?それくらいのハンデ……あってないに等しいものだという事を身体を持って教えてあげましょう」
言葉が終わるが先か、動くのが先か。
珂倶遮命と異例のコンビ周、蕎ペアの戦いの火蓋が、改めて切って落とされたのだった。




