③
「どうにか、ならないものかしらね。兄妹なのに。緋岐くんの思いを翠琉ちゃんが受け止めてくれたら良いのだけれど」
言いながらも容赦なく醜を薙ぎ倒す。
—— と、そのとき……
―― キイィイィィン……
突如、紗貴の脳裏を劈くような衝撃が走る。
「これは、誰かが、破魔武具と同調した?まさか、由貴が?」
その場から動かない紗貴に気が付いた緋岐が、紗貴に忍び寄る黒い影に気が付き走り寄る。
「紗貴っ!」
—— 間に合わない!?
呼ぶ声にも全く反応を示さない紗貴に、その届きそうで届かないもどかしい距離に緋岐は思わず舌打ちする。
「退け、我が同胞達よ」
決して大きくはないその声に、醜達の動きが止まる。
そして、その場から一気に姿を掻き消したのだった。
紗貴、緋岐ともにその声に導かれるように振り返る。
―― 堕天使……
その言葉を具象化した姿が、そこにはあった。
漆黒の翼を広げ、長衣を風にはためかせているその姿はまさに堕天使。
その者は紗貴と目が合った瞬間、空気の中へ溶けるように消えていった。
「今のは、一体……」
その問いの答を持つものは、もうその場にはいなくなっていた。
「紗貴、とにかくここから離れて一旦戻ろう」
紗貴は緋岐のその言葉に頷くと足早にその場から離れた。
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