先生。
手を伸ばして、目を合わせる
あの人は私の名前を呼ぶ
視線が集まる。
「答えを」
私は答える。
「あなたが好きです」
…………なんてね
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いつもと変わらない日常
高校生活
勉強、恋バナ、部活
友達
女の子 男の子
何かで読んだ漫画、聴いた曲、体験談
大人。
子供。
わたしは子ども
あなたは大人。
なにで始めたのか
なにで憧れたんだろう。
「ねえ、先生」
「なに?」
タバコの匂いの奥に甘い香水の匂いを隠し持って
あなたは先生らしくない。
どうして憧れてしまったんだろう。
「この曲しってます?先生、このアーティスト好きでしょ」
「ああ、この間教えたアーティストの新曲?
そんなにいいの?」
「ぜひ聞いてみてくださいよ」
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先生は
先生らしくない
タバコの匂いに、まだ私たちに近い。
へらへらしながら、ちょっとだけモテるような
そんな先生
国語の先生。
言い回し、言葉の選び方。
あなたはずるい人。
私はあなたの授業でわざと悪い点数をとる。
苦笑い、
バレているのは分かってる。
「俺の授業はそんなにつまらない?
一生懸命聞いてくれてるとおもってたんだけどな」
わざとらしく笑う。
あなたは先生、
あなたは先生。
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先生?
見てる?
わたしはあなたに全く興味がないふりをして。
わたしはずっとあなたをみているから。
左薬指の輝きにも気づいているよ。
私にも大事な人からもらったネックレスを着けているよ。
知ってる?
私は子供じゃないよ。
ホッとした顔と、少し陰を落とした顔を
しっかり見せて。
私を
しっかり
見て。
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初めてのキスは
先生が良かったな
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「なぁ」
「大丈夫か?」
「熱、あるのか?」
赤く染まる保健室、
ベットに横たわる私はカーテン越しの影を見る。
熱はないけど
熱いよ。
ねてるか…
呟いて、足音が遠ざかる。
「ねえ、先生」
「あぁ、起こしたか?悪い」
戻ってくる影。
「あのアーティストの曲は、聞いててつらくなりません?」
「……どうだろうな」
「どうして、先生はあのアーティストを教えてくれたんですか」
「他の子にも教えてないでしょう?」
「………お前が、書いた読書紹介文が、俺の好みだったから、好みが合うかとおもったんだよ」
特別扱い。
そう、思わせてほしい。
ねえ
手を伸ばして
いまは手が届く。
カーテンの開く音。
握る手。
拒否、できるはずの私の強さで、
引き寄せる。
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「なあ、あの紹介文書いたのお前だよな?」
「はい、そうですけど。」
「この本、読んでみてよ。」
渡された1冊の本。
読み終わると、なんとも言えない気持ちになる。
そして、感想と引き換えに、あなたの好きな音を手に入れた。
何気ない、1冊の本。
何気ない、音。
何気ない、授業。
合う、目線。
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手を握って、離すように
会話を
手を握って、強く繋ぐように
目線を
気づいている
気づいていた。
結んで開いて
結んで繋いで
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「嘘が上手だね」
「嘘じゃないよ」
「気づかない振りできたはずなのに」
「そうだね」
僕は大人だ、
そう言わんばかりに、
また、そうはぐらかして笑う
タバコの味。
コーヒーの匂い。
甘い香水が移る。