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先生。

作者: もちごめ

手を伸ばして、目を合わせる

あの人は私の名前を呼ぶ


視線が集まる。

「答えを」


私は答える。

「あなたが好きです」



…………なんてね



-------


いつもと変わらない日常

高校生活


勉強、恋バナ、部活

友達


女の子 男の子


何かで読んだ漫画、聴いた曲、体験談


大人。

子供。


わたしは子ども

あなたは大人。


なにで始めたのか

なにで憧れたんだろう。



「ねえ、先生」


「なに?」


タバコの匂いの奥に甘い香水の匂いを隠し持って

あなたは先生らしくない。


どうして憧れてしまったんだろう。


「この曲しってます?先生、このアーティスト好きでしょ」


「ああ、この間教えたアーティストの新曲?

そんなにいいの?」


「ぜひ聞いてみてくださいよ」



---------


先生は

先生らしくない


タバコの匂いに、まだ私たちに近い。

へらへらしながら、ちょっとだけモテるような

そんな先生


国語の先生。


言い回し、言葉の選び方。

あなたはずるい人。


私はあなたの授業でわざと悪い点数をとる。

苦笑い、

バレているのは分かってる。



「俺の授業はそんなにつまらない?

一生懸命聞いてくれてるとおもってたんだけどな」


わざとらしく笑う。

あなたは先生、

あなたは先生。


----------



先生?

見てる?


わたしはあなたに全く興味がないふりをして。

わたしはずっとあなたをみているから。


左薬指の輝きにも気づいているよ。


私にも大事な人からもらったネックレスを着けているよ。

知ってる?

私は子供じゃないよ。



ホッとした顔と、少し陰を落とした顔を

しっかり見せて。

私を

しっかり


見て。


----------



初めてのキスは


先生が良かったな



---------



「なぁ」


「大丈夫か?」


「熱、あるのか?」


赤く染まる保健室、

ベットに横たわる私はカーテン越しの影を見る。


熱はないけど

熱いよ。


ねてるか…

呟いて、足音が遠ざかる。


「ねえ、先生」


「あぁ、起こしたか?悪い」


戻ってくる影。


「あのアーティストの曲は、聞いててつらくなりません?」


「……どうだろうな」


「どうして、先生はあのアーティストを教えてくれたんですか」

「他の子にも教えてないでしょう?」


「………お前が、書いた読書紹介文が、俺の好みだったから、好みが合うかとおもったんだよ」




特別扱い。

そう、思わせてほしい。

ねえ


手を伸ばして

いまは手が届く。


カーテンの開く音。


握る手。





拒否、できるはずの私の強さで、

引き寄せる。


---------



「なあ、あの紹介文書いたのお前だよな?」


「はい、そうですけど。」


「この本、読んでみてよ。」




渡された1冊の本。

読み終わると、なんとも言えない気持ちになる。

そして、感想と引き換えに、あなたの好きな音を手に入れた。


何気ない、1冊の本。

何気ない、音。

何気ない、授業。


合う、目線。



--------



手を握って、離すように


会話を


手を握って、強く繋ぐように


目線を



気づいている

気づいていた。


結んで開いて


結んで繋いで



-----


「嘘が上手だね」



「嘘じゃないよ」



「気づかない振りできたはずなのに」



「そうだね」



僕は大人だ、

そう言わんばかりに、

また、そうはぐらかして笑う



タバコの味。

コーヒーの匂い。


甘い香水が移る。



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