雪月花
どうも皆さん今晩は。釣りに行きたい。
賑やかな太鼓や笛の音。御輿を担ぎ上げる男達の逞しい声。人々の笑顔
ああ、最後に美しい物が見れた。
半年前。月の横に突如として巨大な惑星が現れた。世界中の科学者達は
その頭脳を駆使し、とある結論を導き出した。
この世界は8月15日に崩壊すると。
民衆はたちまちパニックに陥り、世界中で暴動が起こった。政治は崩壊し、宗教家達は神へと祈りを捧げる。
私の住んでいるこの片田舎でも大の大人が暴れ回り、泣き叫んでいた。
そして今日は世界崩壊の前日。8月14日の夜。夏なのに雪が降るという、世界が終わる前日らしい天気をしていた。
前日になってこの村の人たちは諦めたらしく、どうせ終わるのならばと、最期の夜に盛大に祭りを開くことになったのだ。
そんな人々が人生最後だと思っている日に思い思いに過ごす風景を私は離れた竹林の中から眺めていた。祭りを遠目から見る私に気を遣ったのか、先程小さな子供が私に狐のお面をくれた。
さて、23時55分。もう少しだ。もう少しであの惑星はこの地球にやってくる。宙を覆うほどの竹林がザワザワと揺れる。ああ。近づいてきている。
・・・
この星で初めて出会ったおじいさんとおばあさん。あのとき子供だった私はあの二人と生きたい。そう我儘を言って帰らなかった。使者からは次にいつ迎えにこれるか分からないと言われたが、幼い私は話半分に許諾した。
その後私は楽しく暮らしたが、それは永くは続かなかった。
あれから10年後。おじいさんとおばあさんは天寿を全うした。
その後、死ぬことの無い私は10年。100年と人間の世界で生きてきた。
あの二人がいないこの世界は空虚だった。いつ帰れるかも分からない故郷への思いを募らせ続けた。そして1000年ほど経った頃、故郷から報せが
半年後ニ迎エニ行ク 半年ノ間経ツ準備ヲセヨ 父
私は許諾した。
・・・
そして半年後の今。世界はパニックに陥っている。
23時59分
ああ。約束通り。私が誕生日を迎える前にやってきた。世界が光で包まれ、人々は呆ける。あの時と同じだ。さぁ、今度こそ帰ろう。
巨大惑星・・・故郷の船が私を光で包み込む。
「ただいま」
―――おかえりなさい
懐かしい声が私にそう言ってくれた気がした。




