第1話 これが本当のプロローグ?
第一話・これが本当のプロローグ?
川のせせらぎの音と新緑の匂い。
川の水は暖かい太陽の光に照らされて、生き物のようにうねっている。
俺は体中に滴る汗を流しに、川まで来ていた。
衣服を手早く脱ぎ、そばの大きめの岩の上にかける。
その衣服には血は一滴たりとも付いていない。
川の少し奥まで行き、自分の腰あたりまで水に浸からせる。
すると水がひとりでに空中に昇っていき、俺の頭上でシャワーのように降り注いだ。
これはもちろん自然現象ではない。
俺の能力で意図的に起こしたものである。
この世界には誰もが能力と呼ばれるそれぞれ特有の力を持っている。
そして俺の能力は〔自身が触れたものを10秒間動かせる〕である。ちなみにこの能力の対象は固体・液体・気体全てである。
俺はその能力で作ったシャワーであらかた汗を流し終え、シャワーを止める。
ふと左手の人差し指を見ると、まだ血が固まりきっていない指輪があった。
「この血は・・・落としといたほうがいいか」
そしてその指輪についた血を丁寧に洗い落とす。
それが終わると俺は川から出る。能力で作りだした風で体の水滴を飛ばし、服を着た。
「ついに始まるぞ」
俺はそうつぶやき、森の出口へと歩みだしていくのであった。
森の出口。そこは広い草原になっていた。
【破壊の魔人】ことこの俺、槐 勝覇が今からすることはこの国の征服である。
そして俺はそれを断行できる確信がある。
まず俺の能力は控えめに言って最強である。
そしてこの準備に5年を費やしている。
これにより今の俺は常人をはるかに超える筋力、体力、知力それに能力を兼ね備えた。
四人ほど注意しなければならない奴がいるがその四人全員と同時に戦うことさえ避ければ、俺の勝利は揺るぎないだろう。
これは決して慢心などではない。
風が吹き、草原の香りが鼻を突き抜ける。
草原の少し奥の方に人影が見えた。
髪は闇よりも深くしかし不思議な光を放つ黒に、見たこともないような質の良い服を着ている少女だ。腰に剣を差しているところを見ると彼女も冒険者なのだろう。
しかしこの森は怪魔のレベルも高いためぢくら冒険者であろうとも少女が一人で来るような場所ではない。
(まあそんなことはどうでもいい。せっかくだ。この【破壊の魔人】の誕生を近隣の村や国に伝える役をやってもらおう。そのためにも彼女にはとびっきりの恐怖を感じてもらわなくては)
そう考え、勝覇は草原を駆けた。
もう、少女はすぐそこまで迫る。
(まずは軽く、小手調べで)
拳に操った風を纏わせる。
〔風装:拳〕
ゆっくりと螺旋状に渦を巻いた空気の塊がガントレットのような形をかたどった。
少女もこちらの攻撃に気づく。
勝負は一瞬であった。――
—ふわふわとしていて温かいものが後頭部に感じる。
膝枕である。
俺はなぜか先ほど襲い掛かった少女の膝の上で寝ているみたいだ・・・
「?????」
しばしの沈黙
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁈」
第1話も読んでいただきありがとうございます。こちらが本当の物語の始まりとなります。もし第0話を読み飛ばした方がいるならぜひそちらも読んでいただきたいと思います。




