二話「受け継がれる筆術」
スマホの画面を眺める。そこには『新しいアプリがインストールされました』と『〇〇さんからいいよ、されました』という二つの通知が来ていた。ロック画面を解くと、本当に新しいアプリが来ていた。
「この本を手にした物が全てを変える……OVERAROUND.Ver?」
何だ、これ?と思いつつもアプリをタッチしてみる。画面にタイトルも無しに次の文字が現れる。
『あなたも今から世を変えるための人間である。まずは名前の登録を。なお、このアプリの消去及びこの画面からの移動は出来ないのでご了承下さい』
そしてその下には黒い字で名前を読み仮名で書かせる枠が二つと漢字で書かせる枠が二つ存在する。
「これはあれかな。今、流行りの隠れアプリとか占いで個人情報の抜き取りとかのあれかな」
独り言を呟いてスマホのホームボタンを触れるが反応無し。その隣の記号のボタンを触れるが反応無し。上から下へスライドさせるようにしても反応無しではあるが、キーボードは反応してしまう。ホーム画面を長押しするも反応無し。電源ボタンを押して見る。それさえも反応無い。
「壊れたか?再起動まではさすがに……」
電源ボタンを長押ししてみる。それもやはり反応無し。反応があるのはただ一つ。
「打ち込むしかないか」
私は自分の名前を打ち込んだ。
『海塚理沙さん、登録しました。これからあなたは生き残りをかけた戦いが始まります。そのためにあなたは能力を身に付けなくてはいけません。でも何も心配ありません。次のスロット画面が出たらただタップしてくれればよいのです。タップというのはただ画面を軽く押すです。今時の女子学生ならそんな言葉はお分かりですよね?以下、そういう言葉の説明は省略していきますね』
確かにその言葉は分かる。分かるが、なぜ私が女子学生であることがバレたのかが気になる。しかしこのアプリの説明は止まることなく続く。
『このアプリを使用した者たちにはそれぞれタイプがあります。それは後で分かるでしょう。あなたは今から”筆術”を使用します。あなた様もご存知かもしれませんが、魔法には魔術や呪術などふわっと不気味で面白みのある物があります。しかしあなた様が使用される”筆術”は日本で作られた魔法と古くから言い伝えられてるらしいです……あのお嬢様?授業中にポカーンと寝てそうなので私の説明も見て寝てませんか?確認のため、タップして下さい』
寝とらんわ、と思いつつも拳で軽くスマホをタップする。
『痛いです……でも気持ち良きかも……あっ、話が逸れましたね。これからスロットで出てくる漢字を使用する熟語などを声に出すかここに打ち込むかしながら指でその漢字を書く。すると魔法が何かしら発動する。なのでタップして下さい』
次の瞬間画面が変わり、中央に漢字一字が転々と変わっていくスロットが現れた。その漢字の種類は無数なのだろうか。タップしてみる。すると、”姫”で止まった。
『姫……あの英雄の娘だからか。ひとまずあなたの周りの様子を見て下さい。あなたのおかげで私は解放出来ましたから』
アプリに言われて不思議そうに思いながらも画面を閉じた。