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翼の証明Ⅲ ~種の方舟~  作者: ニンジン
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■第3話:冒険者達 ~ adventurers ~

チャリオットの準備が終わると、栄養豊富といわれるノーム族の栽培した地中ドーリアをおよそ7日分積み、リヨン、アポロ、ジル、ジニー、そしてシュウトの5人は意気揚々とノームの村を出発したのだった。目指すは大樹海である。チャリオットには操縦者のシュウトとジニーが乗っており、リヨン、アポロ、ジルがその横を並んで歩いていた。荷物を沢山積んでいるチャリオットの速度はかなり遅く、リヨン達の歩く速度と同じくらいであった。

アポロ 「それにしてもソイツは、想像していた以上に遅いな・・・。」 アポロは歩きながらチャリオットを操縦するシュウトに向かって感想を述べた。

シュウト 「まぁな。重ければ重いほど遅くなる。いざっていうときには瞬間的に速度を上げることはできるんだが、それをやると長くもたないんでな。今は長距離用に速度も下げているんだ。基本的にはただの荷車だと思ってくれ。」

ジル 「荷車ね・・・。ま、食糧を積めるだけありがたいけど。」

シュウト 「ところでお前さん達、白装束、つまりアカデメシアに追われているってことはないのか?」 シュウトが気になっていることを尋ねた。

アポロ 「・・・かもしれないな。あの塔の中で、わけもわからずに学び舎を襲われて、俺達を恨んでいる者もいるだろうさ。」

シュウト 「そいつは厄介だな。ここまで追ってこなきゃいいけどよ。」

リヨン 「でも僕らは元々、灰色の体をもっていたというだけで、一方的にアカデメシアの研究派閥、ネクロマンシー達に命を狙われて、どうしようもなかったんだ。僕はミトラやルクセンさんの命、ジルやアポロは自分達の村を守りたい、ただそれだけだったんだよ。」

ジル 「そうよ。先に襲ってきたのは奴らの方よ。逆恨みなんて冗談じゃないわ。」

リヨンとジルは、いかに自分達が酷い目にあってきたかを主張した。

アポロ 「今のアカデメシアはネクロマンシーとは別の研究派閥、ドルトリアンが中心となってドーリアの栽培知識を民に提供し、支援を受けることで成り立っていたらしい。人体研究を行うネクロマンシーはアカデメシアの裏の顔で、大部分の者には、その存在すら知られていなかったようだな。」

シュウト 「ネクロマンシーだけでなくドルトリアンまでも一緒に崩壊しちまったんじゃ、アカデメシア自体も消滅したかもしれないな。それに依存していた者達はどうするんだ?」

アポロ 「もともとガイアのドーリアの枯渇は大問題だしな。ドルトリアンの活動が停止してしまったら、ブレメンを中心に混乱が起きているかもしれない。」

ジル 「最悪の場合、ドーリアをめぐって種族どうしの戦争が起きるかもね・・・。」

5人それぞれは望まぬ未来を想像し、下を向いて黙ってしまった。

ジニー 「・・・けど、大樹海に行けば食糧となるドーリアの種や、その栽培の秘密を手に入れられるかもしれない。」

ジル 「そうよ!私達が食糧となるドーリアをブレメンや自分達の村へ持ち帰ればいいじゃない。それにジニーの言うとおり、詳しい栽培方法だってわかるかもしれない。悪く考えるのはやめましょうよ。」

リヨン 「でも、大樹海には魔の胞子も飛んでいるんだよね・・・。僕達は少し耐性があるみたいだけど、高濃度の魔の胞子を吸って正気を失ってしまうかもしれない。そもそも大樹海までたどり着けたとして、どうやって魔の胞子の拡散を止められるのかな。想像もつかないや。」

ジル 「リヨンは心配性ね。元気を出して前を向いて進むのよ、失敗したっていいわ。じっとしているよりはいいでしょ。」

シュウト 「その通りだな。ガオン族の姉ちゃん、いいこと言うじゃねぇか。前向きな考えは好きだぜ。」

アポロ 「無計画なだけだろうに・・・。」

ジル 「ん、何か言った?」

リヨン 「あーっと、笛でも吹こうかな!練習しなきゃ!」

ジニー (やれやれ・・・。このメンバーで大丈夫かなぁ・・・。)


しばらくすると一行は今まで通ってきた街道のように舗装されていない、道なき荒野にさしかかった。

シュウト 「道はここで終わりのようだが、幸運にもこの先は比較的平らな荒野になっているな。これならこのままチャリオットでいけるぜ。」

ジニー 「チャリオットに乗っていると楽ちんなんですよね。」

そこへ-。ヒュッ!

アポロ 「危ない!皆、伏せろ!」 アポロが微かな音に反応して叫んだ。

カァン!チャリオットの後部に何かが当たった。

リヨン 「こ、これは矢だ!みんな気をつけて、白装束だ!」

5人が矢の飛んできた方を向くと複数の白装束達が弓矢を構えていた。

ジル 「ノーム族の村を出てこんなにすぐ見つかるなんて、村の周りか私達のすぐ近くにいたんだわ。」

シュウト 「な、バカ野郎ジニー!追手ぐらいお前の鼻でわかんないのかよ!?」

ジニー 「すみません、鼻がつまってて・・・。胞子のせいかな??」

シュウト 「・・・ったく、銃を準備しろ!皆、チャリオットの影に身を隠すんだ。 」

ジル 「私の出番ね。」 ジルは愛用の曲刀を握ってチャリオットの前へと踊り出た。

アポロ 「引っ込んでいな、お転婆。そんなオモチャで何ができる。」 アポロは銃を取り出し、矢が飛んできた方に向けて構えた。

ジル 「何ですって!?あんたこそ引っ込んでなさいよ!どうせ当たりゃしないでしょ!」

アポロ 「ふ、ふざけるな!誰に言ってやがる!」

そうこうしているうちにチャリオットに向かって白装束達が走ってくる。どうやらネクロマンシーの残党のリザート族(有鱗人種)のようだ。

シュウト 「白昼堂々と襲ってきやがるなんてネクロマンシーってのは噂どおりの奴らだな。本当に俺達を殺す気なのか?」

リヨン 「ええ、もしかすると魔の胞子を吸って痛みを感じないかもしれない、油断したら僕達が殺されるかも。」

ジル 「そんなことはさせないわ。あいつらの親玉にやられたテオの仇を少しでもとってやるんだから。」 

アポロ 「この距離なら銃で撃って足を止めたほうがいい。俺に任せておけ!」

シュウト 「お、頼んだぜ、アポロ!」

アポロ 「・・・。」

しかし、アポロはなかなか銃を撃たなかった。

シュウト 「なるほど、引きつけて撃つのか?」

アポロ (くっ、きっと奴らは威嚇しても引き下がらないはずだ・・・。ブレメンではゾンビどもを沢山撃ってやったが、近づいてくるリザート族の顔が、あの時のアイツに・・・。くそっ!)

アポロは引き金に指をかけ、確実に当たる距離まで白装束達が近づくの待った。

そして-。ガアン!!アポロは白装束をめがけて銃を撃った。

しかし、弾は白装束達の少し手前の地面に当たったのだ。

ジル 「何よ?外したじゃない!下手っぴね!」

アポロ 「ぐ・・・。」

白装束達は弓矢を捨て、手に剣を持って走り出した。チャリオットとの間をどんどん詰めてくる。

アポロ (もう一度だ!やるしかないんだ・・・。) アポロは迷いながら再び引き金に指をかけた。

その時-。ゴゴゴゴ・・・。大きな地鳴りがしたのだった。

白装束達 「?」

白装束達は異変に気がつき、足を止めた。

リヨン 「この音は何?」

ジニー 「こ、この揺れは、またアイツです!」

地鳴りとともに砂煙をあげて巨大なサンドワーム(砂の悪魔)が姿を現した。シュウト達が退治したサンドワームとは比べものにならない大きさだ。

サンドワームの移動速度は速く、チャリオットと白装束達のちょうど間に立ちはだかった。

白装束達 「・・・な!?」「ひいっ、化け物だ!?」 

サンドワームは驚きすくみあがっている白装束の1人に向かって大きな口を開けると、ベロリとひと飲みにしてしまった。

白装束達 「あ、あ、あ・・・。」「やばい・・・・。」「逃げろっ!」

白装束達は見たこともない化け物に仲間を襲われて、ちりぢりになって逃げ惑った。

しかし、サンドワームはお腹を減らしているのか執拗に追い続け、1人、また1人と白装束達を喰らっていった。

シュウト 「おいおい、あの大きさはヤバイ!こんなチャリオットじゃ簡単に跳ね飛ばされて1人ずつ丸飲みにされちまうぜ。俺達も全速力で逃げねぇと!」

リヨン 「ん?でも、こっちには来ないようだよ!?」

幸いにもサンドワームは彼らとは反対の方へ移動していくようだった。

ジル 「今のうちに逃げるわよ!アポロも早く!」

アポロ 「お、おい、逃げるのはいいがジニー、あっちの方角はノーム族の村だぞ。放っておいていいのか?」

ジニー 「あ・・・!」

シュウト 「おいおい馬鹿いうなアポロ、俺達の手に負える大きさじゃない。幸い村からは少し距離がある。勝手に逸れてくれるかもしれないじゃないか。」

ジニー 「・・・。」

アポロ 「放っておいていいのかって言ってるんだ。運が悪ければ村を襲う可能性もあるぞ。」

シュウト 「アポロ、やめろって!あの大きさじゃ・・・。」

アポロ 「ジニー、お前に聞いているんだ!」

ジニー 「・・・シュウトさん、私はここで降ります。私が囮になって、少しでも村から遠ざけてみます。みなさんは先に行ってください。」

シュウト 「やれやれ・・・。お前がいなくなったら誰が大樹海の入り口を案内できるってんだ。アポロ、なんか作戦があるんだろうな?」

アポロ 「ああ、化け物の注意を俺達に引き付けて、村と正反対の方角へ、できるだけ遠くへ移動させるだけでいいだろう。リヨン、こいつを持って飛んで、空から落とすんだ。」 アポロは背負っていた荷物から、丸い玉を取り出した。

リヨン 「これは?」

アポロ 「忘れたのかリヨン?ブレメンで渡した火薬玉さ。前に渡したものより凝縮しているものだ。あの体の大きさじゃ火薬玉でも倒せないだろうが、コイツで注意を引き付けてから、一気にまけばいい。だが、火薬玉は空から落としただけでは爆発しないだろうから、俺が落とした火薬玉を狙って撃つ。」

ジル 「そんなの遠くから当たるわけないじゃない!さっきだって・・・。」

アポロ 「俺を信じろ!さっきのようなヘマはしない!」

ジル 「・・・わかったわ。」 アポロの覚悟のこもった言葉に、ジルは言葉を飲み込んでうなずいた。

アポロ 「リヨンが火薬玉を落とすのを先に気づかれると、大きく避けられちまうかもしれん。ジルはリヨンが奴の真上に行くまで気づかれないように遠くから陽動を頼んだ。2人とも、間違っても近づきすぎるんじゃないぞ。」

リヨン・ジル 「わかった。」「体がなまってたのよ!」

シュウト (ほう・・・。こいつら、ブレメンで死線をくぐり抜けてきたってのは嘘じゃないようだな。)

アポロ 「シュウト、最後はあんたに任せる。チャリオットの全速力とやらでうまくまいてくれ。」

シュウト 「しょうがねぇな。科学の力を少しだけ見せてやるさ。」

ジニー 「みんな・・・。ありがとうございます。」

アポロ 「礼を言うのは早いぞ。さぁ行くぞっ!」 そう言葉を残し、アポロはサンドワームが狙いやすい小高い丘に走っていった。

ジル 「私もいくわ!」 ジルはサンドワームに向かって近づいていく。

リヨン 「よし、任せて!」 リヨンは火薬玉を持って空高く舞った。

サンドワームは白装束達を全て飲み込み、ゆっくりと次の獲物を探すようにノームの村の方向へ進んでいくところであった。

ジル 「さぁ、鬼さんこっちよ~!」

ヒュッツ!ガッ!ジルの投げた曲刀がサンドワームの頭に当たると、怒り狂ってジルに向かって突進してきた。

ジル 「ひぃ~、や、やばいわ!早く早く!」 ジルは襲い掛かるサンドワームから必死に逃げた。

ガアン!ガアン!シュウトもチャリオットから長距離用の銃弾を浴びせるが、まったく効かないようだった。

シュウト 「全然効かねぇや、こいつはやばい大きさだな。確かにこんな化け物が村で暴れたらひとたまりもねぇや。ジルはうまく隠れたか?それじゃ、リヨン、アポロ、頼んだぜ。こっちは『ブースター』の準備だ、ジニーいいな!」

ジニー 「この赤いボタンですね?」

リヨンはサンドワームのちょうど真上まできていた。

リヨン 「今だっ!」 リヨンは火薬玉をサンドワームの頭上めがけて放った。

アポロ 「よしきたっ!」

ガウンッ!アポロは火薬玉をめがけて銃を撃った。

ズドオオオン!!アポロの放った弾は見事に火薬玉に命中し、轟音が響く。

サンドワームは火薬玉の爆発音と衝撃を頭の近くで受けて暴れ出した。サンドワームは生き物として退化してしまっているのか、目や鼻といったものが無いため、表情はわからないが苦しそうに大きく首を振り、怒り狂ったように近くの獲物を探す。サンドワームは頭上高くのリヨンに気がついたが、さすがに空飛ぶリヨンは追えないと考えたのか、少し遠くのチャリオットを見つけると、そちらに向かって突進してきた。

シュウト 「計算どおり、一番目立つこっちにきたぞ。いくぞジニー、ボタンを押せ!全速前進だ!」

ジニー 「了解です!」

ジニーが操縦席の横にあるボタンを押すと、チャリオットは勢いよく急発進した。

全速力のチャリオットは皆が思っていたよりずっと速かったが、怒り狂うサンドワームの速度も信じられないほど速く、なかなか突き放すことができなかった。

シュウト 「・・・くそっ、まずいな。思ったより奴のスピードが速い。ジルとアポロはうまく隠れたようだが、このままじゃいずれチャリオットの動力源が無くなっちまって俺達がお陀仏だ。おい、ジニー、なんか作戦はねぇのか?」

ジニー 「作戦ですね?」 ジニーは双眼鏡でチャリオットの進行方向を見ていた。

ジニー 「シュウトさん、作戦というか、その前にお知らせです。」

シュウト 「なんだ?」

ジニー 「この先は崖のようです。地面が途中で切れている。」

シュウト 「・・・なるほどね。例えば、直前でチャリオットを乗り捨てて丁度身を隠せるところがあるなんて、都合のいいことがあるって言うんだな?」

ジニー 「・・・。」

シュウト 「ねぇのかよっ!他には!?」

ジニー 「ノームの神に祈りましょう。ノームの神はきっとお調子者にも平等です。さぁ、目をつむって。」

シュウト 「まじか・・・。」

アポロ、リヨン、ジル 「あ、あいつら大丈夫か?」「さっき、空から見えたけど、あの先は崖だよ!」「身を隠すところも無さそうだし、どうする気かしら!?」

遠く離れていくチャリオットとサンドワームを見て3人は心配に思った。

崖はクレバスのようになっており、後でわかったことだが、崖下を覗き込んでも底が見えないほどの高さがあった。

シュウト 「チャリオットを止めたり、飛び降りたりしたら、おそらくサンドワームの餌食。かといって、このまま走っても崖下に真っ逆さま。ノームの神なんて、今出てこなきゃ意味がねぇじゃねぇか!」

ジニー 「村のみんな、元気で・・・。私は村のみんなが守れて良かったです。」

シュウト 「ジニー、俺はまだ覚悟できていないっての!ふざけてないでなんとかしろ!」 シュウトはジニーの首を絞める。

ジニー 「く、苦しい・・。」 ジニーは必至にもがき崖の方を指さした。

ジニー 「ごほっ!あ、あの一番幅の狭いところからチャリオットごと跳びましょう!あ、むしろこの速度なら飛べるボタンがあるのでは?」

シュウト 「阿呆、そんな機能は無いっての!もう、やけくそで突っ込んだらぁ!」

ジニー 「あ、あ、あ崖が!もう駄目だ!」 

ガクン!

勢いよく崖に飛び込んだチャリオット。しかし、そのチャリオットに2人は乗っていなかった。

2人の体はチャリオットから投げ出されて宙を舞っていた。たまたま直前で少し大きめの石に、高速で走るチャリオットの車輪がぶつかったのだった。

サンドワームは崖の直前で投げ出された2人を追おうとしたが、全速力で突進してきていた勢いに急停止することができず、チャリオットを追って自らも崖下に落ちていった。

ザバーン!!

崖下は深く、川が流れていた。大きな水しぶきをあげると、サンドワームはチャリオットとともに下流へと流されていった。

崖のギリギリ近くで仰向けになって倒れているシュウトとジニーのもとにリヨン達が駆けつけてきた。

リヨン 「2人とも無事!?」

ジニー 「ふぅ・・・。よかった。作戦が成功しました。みなさんご協力ありがとう。」

シュウト 「よかねぇよ!俺の超大作のチャリオットが・・・。」 シュウトはがっくりと肩を落として嘆いていた。

ジル 「歩けばいいじゃないの。ここから先は荒野が続いていて歩きやすいし、もうアカデメシアだって来ないと思うわ。」

リヨン 「チャリオットに積んでいた食糧も、そこいら中に散らばっているね。全部崖下に落ちなくてよかったよ。」

アポロ 「それにしてもレイアは一緒にこなくて正解だったな。この無茶で無謀な2人に殺されているところだった。」

ジニー・シュウト 「無茶なのはシュウトさんです!」「無謀なのはジニーだっての!」 2人は声をそろえて叫んだのだった。

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