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翼の証明Ⅲ ~種の方舟~  作者: ニンジン
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■第11話:まだ見ぬ世界 ~ Green Land ~

周囲が焼け野原と化した大樹海の泉で-。

そこにはリヨン、アポロ、ジル、ジニーの姿があった。そして傍らにはシュウトが横たわっていた。

シュウトはかろうじて息をしているものの、その体はピクリとも動かなかった。

リヨン 「シュウト・・・。」

アポロ 「あれからずっと意識が無いな。今まで気がつかなかったが、シュウトの体は最初からボロボロだったようだ。この様子だと、さすがにもう・・・。」

ジニー 「いいえ、きっとシュウトさんなら大丈夫ですよ。灰色の体の一部をもたないでも私達と一緒に大樹海まで来ることができたんですから・・・。」

ジル 「そうね・・・。魔の胞子をこれだけ吸っても、シュウトは倒れないで最後まで闘い続けていたわ。」

ジニー 「とにかく、大樹海はこんな状態です。もう魔の胞子が新たに生まれることは無くなったと思います。」 ジニーが冷静に今の状況を言った。

リヨン 「それと引き換えに失ってしまったものもあるね・・・。」

アポロ 「そうだな。きっと、ここにあった食糧となるドーリアの種までも無くなってしまった。」

ジル 「はぁ、私達は何のためにここまで来たのかしら。魔の胞子は無くなったかもしれないけど、ガイアのドーリアは枯渇したままよ。これでは、ドーリアの奪い合い、種族間の争いを止めることも難しいかもしれないわ。」 

リヨン・アポロ、ジル、ジニー 「・・・。」

うなだれる4人に、ひどくガッカリしたような声がかけられた。

声 「はぁ~あ・・・。まったくよぉ、そろいもそろって情けねえな。」 シュウトが横たわりながら目を開けずに言葉を発したのだ。

リヨン 「シュウトさん、意識が!?」 皆がシュウトの傍に駆け寄る。

シュウト  「もっと胸を張れよ。魔の胞子を無くしたってだけで、大成功だろうが。」

ジル 「そ、そうよね。」

シュウト 「ドーリアは根気よく栽培していけばいいし、そんなに欲しけりゃまた別の場所から探せばいいじゃねぇか。」

アポロ 「だ、だが、このガイア中、どこにあるっていうんだ。ノーム族ですら知らないぞ。」

シュウト 「お前達は何にも知らねえのか?そもそもガイアがこの世にたった1つだなんて誰が決めたんだよ。」 

アポロ 「な、何を言っているんだ?ガイアは1つだろう!?」

ジニー 「・・・シュウトさん、やっぱりあなたは私達の知らない何かを知っているようですね。ずっとそう思っていましたよ。」

シュウト 「まぁ想像できないのも無理もねえか。そう、お察しのとおり、俺は何千年も前に生まれた前世人類だ。」

ジル 「何ですって!?」

リヨン 「ぜ、前世人類?」

ジニー 「やっぱりそうなんですね・・・。」

シュウト 「ああ。ここまで体がボロボロになった俺に残された時間はもう僅かだ。手短に言うぞ。このガイアは遥か昔、ずっと南まで続いていてな。その大地の先には、永久凍土に覆われた別のガイアがあったんだ。」 

ジル 「永久凍土ですって?」

シュウト 「そうだ。そこは科学の負の遺産のせいで、今となっては信じらないくらい暖かくなっているはずだ。てことは、永久凍土は融けて肥沃な大地となってドーリアが原生しているかもしれない。そこに移住するか、ドーリアの種を沢山持ち帰って増やすことができれば、ドーリアの奪い合いの呪いからきっと解放されるさ。」

アポロ 「そんな場所が?」

シュウト 「俺の計算だと歩いて3か月以上先だがね。時間はかかるだろうけどよ、行ってみて損はねぇぜ?」

リヨン 「そんな、歩いて3か月以上先の大地なんてどうやっていくの?」

シュウト 「もう忘れたのか?今は、ろくに歩けない少女だって街を飛び出す希望の時代なんだぞ。ひときわ健康なお前達ができないでどうするよ。もらった命、もうけもんだと思ってもう少し前向きに考えたらどうだ。」

ジニー 「そ、そうですね!なら、シュウトさんも一緒に行きましょう!」

シュウト 「ああ、行きたいのはやまやまだが、俺の旅はここで終りのようだ。いい加減、もう休ませてくれよ。迎えが来たみたいなんだ・・・。」

リヨン 「え、シュウト?待ってよ!」

シュウト 「いいか、皆覚えておけ・・・。その土地の名は『グリーンランド』だ。」 シュウトはそう言い残し、目を閉じたのだった。

4人 「シュウト!!」

シュウト (おお、ノヴァじゃないか。俺も一緒に連れてってくれよ・・・。)

シュウトは空中に大きな翼をもつ生き物がいるように感じた。

まだ見ぬ肥沃な大地グリーンランド-。それはシュウトの『嘘』だったのかもしれない。だが、人間は他に何も残されていない状況でも、希望さえ残っていれば未来に生きていける。それが科学者シュウトの人生において、この時代で手に入れた1つの真実であった。


ノームの村で-。

ケルン 「おお・・・。南の方角で火の匂いがするが、魔の胞子の匂いも薄くなっていくようだ・・・。彼らがやってくれたのか?」

レイア 「ええ、きっとそうよ!長い時間をかけて、いつかガイアは緑でいっぱいになるんだわ・・・。あの時の夢のように。」

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