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翼の証明Ⅲ ~種の方舟~  作者: ニンジン
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■第9話:星の意思はここに ~ intent to murder ~

ジニー 「どうやら、あいつらからは逃げ切れたようですね。」

シュウト 「ああ。だが、殺意をもった敵は間違いなく存在する。それも複数だ。きっと戦いになるぞ。武器はあるか?」

アポロ 「銃の他には火薬玉があるが、1つだけだ。銃があいつらに効くとも思えないが・・・。」

ジル 「私の曲刀も、あれだけ固そうだとね・・・。」

リヨン 「それに、倒したところで意味が無いんでしょう?」

シュウト 「たぶんな・・・。アポロ、火薬玉を貸してくれ。ちょっと細工をする。」

アポロ 「別に構わないが、何をするんだ?」 アポロは火薬玉をシュウトに渡した。

シュウト 「科学者、あ、いや、エイプ族の勘だよ。投げつけたり、銃で狙うほかに、爆発させる方法を作っておくのさ。」

リヨン 「どうやるの?」

シュウト 「まぁ見てなって。(頭がクラクラしてきたな。薬も残り僅かか・・・。刺し違えても親玉を叩くつもりだがね。)」


数分後-。

アポロ 「さて、こうなったら敵の親玉を叩くのが戦の必勝方法だと思うんだが。」

ジル 「そうね。親玉はどっちにいるか、ジニーならわかる?」

ジニー 「わかりません・・・。魔の胞子が多すぎて、全然嗅ぎ分けられませんし。」

ブウゥゥンン・・・。突然遠くの方で何かの音がした。連続的で無機質な音である。

リヨン 「ん、何の音だろう?」

音はだんだんと大きくなり、リヨン達に近づいてくるのがわかる。5人は何があってもいいように身構えた。周囲に緊張感が漂う。

アポロ 「ジル。」

ジル 「何よ?」

アポロ 「ここまできて油断するなよ?」

ジル 「そっちこそね。」

アポロ 「ふん・・・。」

ジル 「何よ?」

アポロ 「悔しいが、死んだテオやお前がいなかったら、俺もここまで来れなかったと思う。闘いのセンスはさすがガオン族だな。」

ジル 「ふん。いまさら気づいたって遅いのよ。でも、背中は任せるわ。頼りにしてるわよ、次期団長さん!」

アポロ 「生きて帰るぞ。」

ジル 「ええ。」

アポロとジルは、これから自分達の武器が通用しないかもしれない未知の敵と、命を懸けて闘うことを覚悟していた。

リヨン 「僕らも絶対に生きて帰ろうね、ジニー?」

ジニー 「もちろんです。『世界はこんなに広いんだ』って、村の皆に伝えたいですからね。」

リヨン 「そうだよ。それに僕らは僕らの未来を守るためににここまで来たんだから、こんなところで簡単に死んでたまるもんか。」

ジニー 「シュウトさんも絶対無事でいてくださいね。約束ですよ?」

シュウト 「ああ、もちろんだ。それに安心しな、これでもお前達の何倍も死線はくぐり抜けているんだぜ。どんな化け物が出てきたって大丈夫だ。」

ジニー 「またお化けかなぁ。でも、もう少しで真実にたどり着くと思い・・・。」

ジニーが最後までしゃべり終わるか終わらないかのところで、音の正体は5人の前に姿を現した。

だが、それは5人が予想していたものとは全く違った。なにやら皿のような物体が回転しながら空中を進んできたのだ。

5人は自分達の目を疑った。

ジニー 「そ、空飛ぶお皿!?」 ジニーが仰天して声をあげた。

他の4人も目の前の空飛ぶ円盤に驚き、その場から動けずに固まっていた。

円盤は外殻が輪の形をしており、輪を高速回転させながら浮遊している。そして、輪の端が周囲の木の枝に触れると、細い枝が切り刻まれてボトリと地面に落ちた。円盤はフワフワと空中に浮かびながら5人に少しずつ近づいてきた。それはまるで未知なる生き物が獲物を探しているようであった。

円盤 「ニンゲンヲハッケンシマシタ、マザー。ドウシマスカ。」

ジル 「またしゃべったわ!?」 

リヨン 「誰と話しているんだろう?」

ジニー 「まるで遠くの人間と話しているような・・・。」

シュウト (飛行技術に通信技術だと!?俺の想像の上の上の、そのまた上をいきやがる!)

円盤は少し間をおくと再び言葉を発した。

円盤 「・・・リョウカイ。ハイジョシマス、ハイジョシマス。」

ジル 「ハイジョって言ってるわよね?」

リヨン 「うん。あいつ、きっと空を飛んでも追ってこれるよね・・・。」

アポロ 「おい皆、あの輪の端には触れるなよ?きっと、木の枝のように体を切り刻まれてしまうぞ。」

シュウト 「当然、魔の胞子もまけると思ったほうがいいな。」

ジニー 「一体どうして私達を敵だと決めつけてくるんでしょうか?」

5人は少しずつ後ずさりしていく。

ジル 「あ、あれ・・・!?」 後方を確認したジルは声を失ってしまった。

気づかない間に先ほどの植物の化け物達が後方から近づいてきていた。植物の化け物達は触手を伸ばしながら5人に迫ってくる。

アポロ 「挟まれたのか!?」

リヨン 「そんな!」

ジル 「もうっ!私達に何の恨みがあるってのよ!」

シュウト 「空飛ぶ皿も、植物の化け物もだが、ずっとマザー、マザーって言ってやがる。やはり親玉の命令を受けているな。」

リヨン 「命令なんてどうやって?」

アポロ 「たぶん、俺達にわからない方法で言葉を遠くから送っているんだ。こいつらを止めるには、やっぱり親玉をやっつけるしかない。だが、親玉がどっちにいるかもわからんし、わかったとしてもこいつらは先を通してくれそうもない。」

皆が青ざめた顔をしている中、ジニーが口を開いた。

ジニー 「皆さん、聞いてください。さっき、植物の化け物達が土や砂をかぶったときに、微かですが、あいつらの体から変な音が聴こえました。」

アポロ 「ああ、『ザザザ』ってやつだろ?それなら俺も聴こえたぜ。」

ジニー 「その直後に動きが止まったようなんです。ひょっとしてあいつらの動く原理には音が関係あるんじゃないでしょうか。」

リヨン 「音だって?」

シュウト 「そ、そうか!でかしたぜジニー、お前は天才だ!」 シュウトは思わず叫んでしまった。

アポロ 「何かわかったのか?」

シュウト 「あいつらを操っているのは『超音波』だ。」

ジル 「チョウオンパ?」

シュウト 「普通の人間の耳では聞きとれない特殊な階層の音だ。デンキが無いはずの大樹海で、奴らがどうやってマザーの指示を受けとっているのか不思議だったんだ。」

ジニー 「チョウオンパ・・・、人間でも遥か西に住む希少種族は使っているという逸話を聞いたことがあります。」

アポロ 「で、どうしたらいいんだ?奴らは今にも襲ってきそうだぞ。」

シュウト 「超音波の正体は空気の振動、似たような空気の振動をつくる高音でマザーの指示を邪魔してやればいい。」

リヨン 「邪魔って、どうやって?あ、ひょっとして・・・。」

シュウト 「そうだリヨン、笛を吹け。思いっきり高い音でだ。これだけ静かで木や崖に囲まれた空間なら、共鳴して超音波を妨害することができるはずだ。」

リヨン 「う、うん、わかったよ!」 リヨンは半信半疑で懐に隠し持っていた笛を思いっきり何度も吹いた。

ピィィィ!!ピィィィ!!ピィィィ!!

ザ、ザザザ・・・。リヨンが笛の音を響かせると、シュウトの思惑どおり植物の化け物達は触手の先を一定の方向に向けて動きを止めてしまった。飛んでいた円盤もその場に着陸して静止したかと思うと、何者かに呼び寄せられるように引き返していく。

リヨンはしばらくの間、笛を吹き続けた。

シュウト 「思ったとおりだ。空飛ぶ皿がもう一度超音波を受信しようと、マザーの元へ引き返していくぞ。」

アポロ 「植物の化け物も、親玉の命令とやらを触手の先から受け取ろうとしているってわけか。」

ジニー 「つまり、親玉はあっちですね。行きましょう!」

ジル 「先頭は私に任せて。途中に化け物が現れても全部なぎ倒していくよ!」 5人はジルを先頭に走りだした。

ピィィィ!!ピィィィ!!ピィィィ!!

途中、空飛ぶ円盤や触手をもった植物のお化けが数体現れたが、リヨンが笛を吹き続け、動きの鈍くなった円盤や触手をジルが曲刀でなぎ払いながら進んでいった。そのまま木々の中を突っ切ると、少しずつ開けた場所へと景色が変わっていった。

ジルは空飛ぶ円盤や伸びてくる触手を必死にさばきながら、シュウトに声をかけた。

ジル 「親玉はまだなの!?」

シュウト 「わからん!もう少しだと思うが・・・。」

ジニー 「笛が無かったら、命が無かったかもしれません。やっぱり来なきゃよかったかなぁ。」

アポロ 「弱音を吐くな、ジニー!走れ!」

ピィィィ!!ピィィィ!!ピィィィ!!

植物の化け物の数も増えてきており、触手は鈍い動きではあったが、笛を吹いているリヨンを狙うように執拗に伸びてきていた。しばらくの間、リヨンは辛うじて触手を避けることができていたが、笛を吹きながらでは足元までは意識がいかず、小石につまづき大きく転んでしまった。

リヨンが転んだことで笛の音が一瞬止むと、すかさずそこに空飛ぶ円盤が襲ってきた。

リヨン 「あっ!!」

アポロ・ジル・ジニー 「リヨンっ!」「危ない!」「ひゃあっ!」

ガッ!シュウトが持っていたナイフの柄で思いっきり円盤を叩き落とすと、リヨンに手を差し伸べた。

シュウト 「ここまで来て戦線離脱するのは勿体ないぜ。あれを見ろ。」

リヨンはシュウトの手を掴んで立ち上がるとシュウトの指さす方を見た。

シュウトが指し示すその先を見た5人は、驚きのあまり言葉を失ってしまう。

しかし、彼らの驚きの理由こそ、紛れもなくここが彼らの目的地、すなわち大樹海の中心地であることを示していたのだった。

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