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現状のこと

三日ぶりです!

Twitterのタグで22RTも来たので、これからは更新頻度が上がりますぜ( ´•౪•`)‬

 次の日、僕とヴィクテージ、そして龍君……失礼。コルと三人でフランス軍の拠点を目指すため、エズ村から電車を乗り継いで三時間半、クレルモン=フェラン地域に足を運んでいた。

 なけなしの訪問とはいえ、相手にしてくれるかと言われればそうでもないが……まずは行ってみることにした。

 変わらないフランスの街並み。僕が現代日本で見てきたフランスよりももっとレトロな気がする。とりあえず朱色が目立つ街だ。

Cathédrale(カッテドレール) Notre(ノットレ) Dame(デイム)

 de(デイ) l'(エル) Assomption(アッソンプション)』と書かれた教会のようなものが目に見えた。

 ……日本語に訳すれば『ノートルダム・ド・ラソンプション大聖堂』。

 こんな所にあったのか……なんて思いながら、僕は気になったことを彼女に問いかけてみた。


「ねぇヴィクテージ、この街全体的に黒ずんでいるけど……どうしてなの?」

「いきなり何あんた……そうねぇ、一回訪れたことがあるから分かるわ。確か……火山から採ってきた石で教会やら家やらなんやら建てたからじゃないかしら?」

「えっ火山の石で建てたの……それって危なくない?」

「まぁ、言ってしまえば危ないわね。資源が足りなかったのかも」


 僕はヴィクテージが何故、僕の名前を呼ばないのかが分からなくて疑問に満ちていた。

 僕がなにか悪いことをしたのか、彼女の気に障ることをしたかと言われれば……どちらも当てはまることはないのだ。


『がろー、何か気になることでも?』


 不意にコルがそんなことを問いかけてきて、僕は慌ててなんでもないと口にする。

 正直、考えていること、気になることは沢山だ。それを表に出せば、ヴィクテージもコルも混乱すると考えて敢えて口にはしていないが、『異世界転移者』という立場としてこのフランスという国は充分おかしい国だということは分かっているし、それはヴィクテージやコルにも説明をしている。

 歩きながら、僕はヴィクテージを見る。やましい気持ちはないのだが、こう、なんていうんだろう……。彼女を見ていると、不思議と思い出すものがある。

『メイル』という一つの存在だ。どことなく彼女とメイルは似ている。出会った時からそんなことは感じていた。

 ただ、比較するようで申し訳ないけど、ヴィクテージはメイルと違ってごく普通の平民だ。戦う力もなければ助ける力もない。まさに『無力』に等しいと言える。

 それでも勇敢に戦う姿を見て、僕は腑に落ちなかったんだ。なんでかって言われれば、()()()()()()()()()()()()()()()()から。

 ここ数年、ずっと旅をしてきたと彼女は前に言っていた。

 じゃあなんで戦う?

 なんで勇敢に振る舞う?

 名前を呼んでくれないことと並行して、そこも気になって仕方なかった。


「ねぇ」

「うん?」

「さっきから考え事してどうしたのよ、何か気になることでもあるの?」

「え、ううん何もないけど……」


 咄嗟に嘘をついた。あまり心配はかけられない、と心の中で思っていたから。


「ふぅん……というか、軍の拠点ってどこなのかしら、この辺には見当たらないけど……」

『ゆっくり探せばいいと思いますよ。私は少しお腹が空きました』


 ヴィクテージに抱かれているコルにそう言われ納得した。

 確かに、お腹が空いたしどこかで食べてから行きたいものだ。飲まず食わずは緊急時にいけないし。


「……じゃあ、どこかで食べようか?」

『私はそれに賛成です、がろー』

「私もお腹空いた……あっそうだ、この先にサン・ピエール市場って所があってね、そこの食べ物がすごい美味しいのよ」

「へぇ……そうなんだ……」

「丁度私案内できるし、行きましょ!」


 手を引っ張られ、僕は慌てて体制を立て直してヴィクテージについて行く。

 僕は今十七歳、彼女は十六歳。僕からしたら妹のような存在にも思える。

 彼女の無邪気な笑顔が太陽に照らされ、とても眩しかった。


 ***


「そう言えばあんた、フランスに来るのは初めて?」


 不意にそう問いかけられ、僕はうーんと考える。


「実質言ってお母さんがイギリス人なこともあって、旅行って言ってもフランスにはあまり足を運んでいなかったかなぁ。というか、僕の出身は……」


 そこまで口にしたところでハッと我に返り、口を噤む。


「? 何よ、どうしたの?」

「……いや、これ以上言ってはいけない気がする……うん、ヴィクテージのためにも……」


 僕の出身地だけは絶対に知られたくない。それだけは絶対に。

 訝しげに僕を見ていたヴィクテージは「まぁ……いいわ」とこぼし、再びパスタを頬張った。

 一方コルはというと、店員さんが特別に用意してくれた生肉をもしゃもしゃと猛獣のごとく食しており、僕はフランスパンとシチューを食べていた。

 フランスのシチューは日本と違って少しまろやかな舌触りがする。味は濃い目で、僕にとっては丁度いいくらいの濃さだった。


『そういえば、私の故郷で少し聞いたことがあるのですがね』


 生肉を食べ終わったコルが骨を置いて呟く。


「なになに? 私気になる」

『ならばお聞かせしましょう。私が食べていたこのお肉……なんの肉だかわかりませんよね?』

「そりゃね? 僕だってわからないさ」

『ですよね……。父上が言っていたのですが、私の同族の肉が、このフランスにばらまかれているとかなんとか』

「何それ、私怖い」

「同族ねぇ……」

『まぁあくまで風の噂ですがね……』


 店員さんがお水を入れてくれて、「あ、どうも……」と日本語で感謝を述べてしまう。

 数秒後、そのことに気づいて慌てて手を口にやると、ヴィクテージはクスクスと笑っていた。

 僕がなんで笑うのかを聞くと「いやっあのね、んふふ……そうよね、母国語だものね……ふふ……」と笑い混じりに返してきた。

 そうだぞ、母国語だぞ……。

 そう返したかったが、笑っている彼女を見るのが面白くて、返そうにも返せなかった。


 ***


「美味しかった……まさかフランス料理がこんなに美味しいとは……」


 会計を済ませて店を出た僕は思わず呟いてしまう。

 それくらい美味しかったのだ。現代日本に持ち帰りたいくらい。

 日本と違って色んな街並みがあるし、フランスといえば貴族やブルジョアなイメージを持つ。

 だがそれもあまりイメージ通りとはいかない様子。よく見ればホームレスの子供だっているし、ボロボロの衣服を着た大人だっている。

 ホームレス……。

 ……まぁ、動物に育てられるよりかはマシかな。


「だから言ったじゃない? サン・ピエールは美味しい所がいっぱいあるのよ」

「そうだねぇ、今度またここに来たら案内しておくれよ」

「えぇ、あんたならいいわ」

『私は!?』

「コルもよ」

『えへへやったぁぁ……』

「コル、君キャラ変わってない?」


 ヴィクテージの答えにほわほわと表情を緩ませて嬉しそうに答えるコルに、僕はそうツッコんだ。

 街の人に軍の駐屯地はどこかと聞きながら、僕達はフランスの街並みを観光しながら歩いていく。


「おい、何をしている」


 声をかけられ、振り返る。

 軍服の男性が僕に向かって話しかけてきていたようだ。反応が遅れて「……なんですか?」と少し間が空いて答えた僕に、その男性はさも当たり前かのように呟く。


「なんだとはなんだ? そんな見慣れない服を着て……いや、それ服なのか?」

「服ですけど、これは『着物』っていうものなのですが……?」


 僕のフランス語の発音に違和感を持ったのか、男性は「……お前、どこ出身だ?」と言ってくる。


「はえ? え、日本ですけど」

「日本? そっちの小龍を持ったお嬢さんは?」

「私はフランス」


 ヴィクテージが言い終わるや否や、咄嗟に銃を向けられて僕は困惑する。

 それも僕だけなのだ。ヴィクテージはなぜ向けられないのかと疑問を持ったが、女の子が銃を向けられるなんて僕にとってはあまり好ましくない出来事でもあるので、僕でよかったと思う。


「ちょ、ちょっと!! なんでコイツに銃を向けるわけ!? 何かやましいことでもある訳じゃあるまいし!!」

「日本は敵だろう? 逆に聞くが何故お嬢さんは日本人と一緒に歩いている?」


 あー、なるほど。

 特にフランスが悪い訳では無い。かと言って、僕もこの人も悪い訳では無い。

 ()()()()()

 第二次世界大戦において、日本は枢軸国側の立場だったから、連合国であったフランスは敵だったのだ。

 じゃあこの時代は絶賛『日本人ノーウェルカム』の国に出来上がっているという訳か。


「戦争をしに来たのか?」

「うーん……僕、戦争は一回経験したから分かるけど、しても面白くないし、逆に辛いだけだから……それに僕はこの時代の人じゃないんだよ」


 僕の言葉に「何?」と銃を下ろして呟く。


「……なるほど、最近妙な日本人がいるとの噂を聞いていたのだが……お前だったのか」

「僕そんな噂出回ってんの?」

「妙な日本人……」

『確かにあっていますね……』


 僕の言葉に続いて二人は呟く。最高に人聞きの悪い。


「……あ、あの! 私たち、今フランスで起こってる怪奇事件について調べていて!」

「怪奇事件……というのはあれか、ダンジョンというものが現れたり村が焼き払われたり……それなら(こちら)でも調査はしている。警察も珍しく動いてくれているんだ」


 警察が動いている事態にまで発展しているのか。

 オルビアナのやつ……。まぁ僕が殺したけど。


「……僕達だったら戦力になれるかもしれない。だから、話を聞きたいんです」

「なるほど」


 うーんと考えた男性は、やがて銃を肩に持ち直し「一度話し合ってみようか」と答えてくれた。


「銃を向けて悪かった。名前は?」

「歌仙埜牙狼です」

「ノガロ……また発音しにくい日本語だな」


 歩きながら、その男性は「Emmanuel(エマニュエル)」と名前を教えてくれた。

 どうやらエマニュエルさんは陸軍の大尉であり、敵である日本に少し興味があるらしく、今は敵陣扱いしているがいつかは行きたいと話していた。

 日本には色んな所がある。景色が綺麗なところもあれば、心霊スポットだってある。

「そりゃあますます行きてぇなぁ」と、けらけら笑いながらエマニュエルさんは言った。

 数十分歩いて僕達は『第九十二歩兵連隊だいきゅうじゅうにほへいれんたい』と呼ばれているらしき軍の駐屯地に着く。

 でかい。異様にでかい。駐屯地ってこんなものだったっけ。下手したら魔法学校よりもでかいのでは……。


「さ、ついてこい。ここからは俺のそばを離れるなよ」


 そう言ったエマニュエルさんの声は、さっきよりも少し下がったようなトーンであったような気がした。

御一読お疲れ様でした!!

よろしければ評価、感想、レビューよろしくお願いします!!執筆の励みになります⊂( ˆoˆ )⊃

また、同時進行で更新している『ノアの方舟─熾天使だと思われたくないので、最弱天使として生きようと思います─』もよろしくお願いします!!!

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あの日、私はあなたの栞だった。も是非、御一読お願いします。
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